Web3ゲームで形成される経済圏では、NFTやFTの価格を運営だけではコントロールできません。
特にユーザー心理や外部経済によって大きく変動する点が、これまでのゲーム経済圏と大きく異なる点です。
その影響力は、順調に拡大していたプロジェクトすらも短期間のうちに崩壊させてしまうほどです。
Web3ゲームでは、「ユーザー心理を安定させるマーケティング戦略設計」がプロジェクトの成否を決めると言っても過言ではありません。
Web3マーケティングは、持続可能なトークノミクス設計とセットで並行して考えるべき重要な課題です。
さらに、Web3ゲームのユーザーペルソナは、既存のゲームユーザーペルソナと全く性質が異なります。
そのため、Web2マーケティングとも考え方を変える必要があります。
本記事では、それぞれのペルソナを獲得するマーケティング施策と、経済圏を安定させるための売り圧対策を解説していきます。
この記事の目次
Web3マーケティングは「ユーザー心理を消費に向かわせる」のが鍵

Web3のゲーム開発が、これまでのゲーム開発と明らかに異なるのは、ユーザー心理がゲームの長期的な成功に大きく影響する、という点です。
Web3の経済圏においては良くも悪くも、ユーザーが所有しているNFTやトークンを「使いたい」と思っているか「売りたい(利確したい)」と思っているかで、大きく経済圏が変動します。
使いたいと強く思っていれば、需要よりも供給の方が少ない状態であり、NFTやトークンの価値は上がっていきます。
逆に、売りたいと強く思っていれば、需要が少なく供給過多になるため、NFTやトークンの価値が下がっていきます。
そのため、ユーザー心理の経済圏に与える影響力は、ゲームの面白さやトークノミクス設計よりもはるかに大きくなります。
Web3におけるマーケティングは、このユーザー心理をいかにして「使いたい」に向かわせていくのかが最重要課題になります。
この後説明していくノウハウは全て、ユーザーの買い圧を高めていくために、運営が何をすべきか?という部分に焦点を当てて説明していきます。
Web3ゲームユーザーと既存ゲームユーザーの決定的な違い

1.ユーザー側のゲームに対する認識の変化
既存のゲームユーザーにとって、ゲームはお金をかけて遊ぶものでしたが、ブロックチェーンの技術の登場によって、ゲームは「遊びながらお金を稼げるもの」に代わってきています。
そのため、Web3ゲームに参加するユーザーは、「どのくらい稼げるのか?」「安定して稼げるのか?」という収益性と経済圏の持続可能性を重視する傾向があります。
★Web3ゲームについて企業が強く意識すべきこと
・ユーザーのゲームに参加する動機のうち「収益性」の占める割合が大きい
・特に最近では「多く稼げるか」より「安定して稼げるか」が重要視されている
・既存ゲームには買い圧しか存在しないが、Web3ゲームには売り圧が存在する
・デジタルデータの所有権が、企業からユーザーに移行し、売買が可能である
・ソシャゲのように一部のユーザーの重課金だけでは、経済圏は成り立たない
Web3ゲームを企画する企業はこの観点の変化をしっかりと認識する必要があります。
2. 運営によるマーケットのコントロール難易度
これまでのゲームにおいては、ユーザーがどれだけ頑張ってゲーム内で特別なアイテムを獲得したとしても、そのアイテムを自身の資産にすることはできませんでした。
対してWeb3ゲームは、ゲームアイテムがNFTとなり、ユーザーの資産としてカウントされ、ユーザー側でデジタルアイテムの複製や売買が可能になりました。(一部、ユーザーがNFTをMintできないゲームもある)
加えて、世界の株式市場や仮想通貨市場などの外部経済などの影響も受けます。
STEPNにおいても、優秀な運営により非常に緻密なトークノミクスが設計されていましたが、bGST価格の乱高下から連鎖的にユーザーの売り圧が加速し、バブル経済の崩壊まで至ってしまいました。
つまりWeb3ゲームは、Web2ゲームに比べて、運営によるマーケットコントロールの難易度が遥かに高いのです。
3. ゲームの開発段階からマーケティングを始める必要がある

そのためWeb3ゲームでは、ユーザーからの信用を獲得していくために、開発の初期からのマーケティング戦略を緻密に設計していく必要があります。
ここが既存のゲーム開発と大きく異なるところです。
既存のゲームであれば、最終的に出来上がったゲームでクオリティを判断されます。
一方、Web3ゲームは、ユーザーが株主のような意識を持つ(自分の持っているトークンやNFTの価格が上がっていくのか)ため、プロジェクト開発のプロセスのクオリティも審査されます。
★Web3ゲームでユーザーから評価を受けるポイント
・ロードマップ通りに、着実に開発が進んでいるか?
・ホワイトペーパーは、持続可能性を意識して作られているか?
・運営の発信内容が一貫しているか?有言実行しているか?
・運営スタッフのバックグラウンドは、Web3ゲーム開発に適しているか?
・コミュニティに対して誠実に対応しているか?
・ユーザーと運営の距離が近く、積極的に交流が生まれているか?など
特に、コミュニティが適切に盛り上がっているかどうか、はとても重要です。
一般の投資家がGameFiプロジェクトに投資する際に、最も重視している点が「コミュニティの盛り上がり」である、とする調査結果もあるほどです。

Web3ゲームにおける9つのユーザーペルソナ

とはいえ、GameFi・Web3の分野は、確立されたマーケティング手法があるわけではありません。
どこにいくらの広告費を使えば、どのくらいのリターンがある、といったことが明確に予想できないため、既存ゲームでのマーケティングがそのまま上手くいくとも限りません。
では、具体的にどのような仮説をもとにマーケティング戦略を立てれば良いのでしょうか?
LGGでは、ブロックチェーンゲームに存在するユーザーのペルソナを、ゲームに参加する目的や資金力、嗜好性に応じて9分類しています。
ただし、必ずしも9つのカテゴリーに綺麗に分かれるわけではありません。
例えばアーリーアダプター属性を持ったトップゲーマーや、ギャンブラー属性が強い賃金労働者などがいます。
インベスターやマーケットメイカー属性のユーザーは「課金している以上の収益を出したい」と考えるため、そういう人ばかりを集めてしまうと、ゲーム経済圏が続かなくなります。
そのため、「大きく稼げなくても面白いゲーム体験をしたい」ゲームプレイヤー属性を増やしていくことが、ゲーム開発においても、マーケティングにおいても重要なポイントになります。
そして、どのユーザーをどの程度入れていくのか、というユーザーポートフォリオを組むことが、Web3ゲームマーケティングにおいて重要な指標となります。(詳しくは後述)