
2020年末から好調だった暗号資産市場が、2021年末から一転して現在まで下落が続いています。
この低迷が続く時期は「冬の時代」と呼ばれ、事業規模を縮小する企業も出てきています。
例えば、大手NFTマーケットプレイスのOpenSeaが全従業員の2割を解雇するというニュースも報じられました。
このような状況から、「Web3は危ないのではないか」「今は静観した方がいいのではないか」といった懸念の声が散見されます。
しかし、冬の時代だからこそ、Web3市場に参入するべきです。
この冬の時代は「Web3の大波」つまり、インターネットバブル以来の大きなビジネスチャンスが来る兆候ともいえるからです。
その理由を、急速な開発が進んでいるGameFi市場を読み解きながら、解説していきます。
本記事では、Web3事業に参入を模索している企業様に向けて、
- Web3の現状
- 冬の時代にWeb3に参入すべき理由
- GameFiから読み解くWeb3の動向
- 冬の時代にやっておくべき対策
をお伝えしていきます。
ゲーム業界だけでなく、Web3事業に参入を考えているすべての企業様に通じる内容となっています。
この記事の目次
Web3の現状は冬の時代

2023年5月現在のWeb3は「冬の時代」と言われています。
冬の時代とは?
暗号資産市場が低調な時を表す言葉で「クリプトウィンター」や「暗号資産冬の時代」と呼ばれます。
明確な定義はありませんが、主にビットコインの価格が大きく下落し、低迷が長引き回復しない時期のことを指します。
2021年末から多くの暗号資産銘柄の価格が下落し、現在も回復はしていません。

Web3市場はこれまでにもバブルの生成と崩壊(冬の時代)を迎えていて、前回の冬の時代は2018年頃でした。
「冬の時代」が起きる要因
冬の時代が起こるのは、いくつかの複合的な要因が引き金になっています。
例えば、アメリカや中国政府の政策による影響や大規模なハッキング、暗号資産プロジェクトの崩壊などです。
2018年から続いた冬の時代は、大手暗号資産交換業者のハッキングや中国政府の暗号資産関連に対する厳しい態度が市場に影響を与えました。
2022年の冬の時代は、アメリカ政府の金融引き締めによって株価を押し下げ、暗号資産価格が下がることにより引き起こされました。
また、時価総額4兆円にもなったアルゴリズム型ステーブルコインのテラUSD(現テラクラシックUSD)が、ドルとの価値連動が崩壊したことにより、市場全体に売りが広がり相場低迷が起きたことも要因にあげられます。
これらの要因は、暗号資産市場における価格変動に大きな影響を与えることがあります。
冬の時代にWeb3業界に参入すべきか?
Web3業界に参入しようか迷っているなら、今すぐにでも参入するべきです。
スモールステップでも参入すべき理由
2023年から2025年に間に、インターネットが登場して以来40年ぶりの「Web3の大波」が訪れると予測されています。
つまりWeb3を活用したビジネスによって、事業展開を拡大させる大きなチャンスがあるんです。
Web3市場は2000年代から水面下で開発が進められ、急激な発展を遂げています。
2020年後半に誕生したNFT(アート)、DeFi、GameFiの3つの分野では、多くのユーザーを獲得し一瞬で巨大な市場が形成されました。

この巨大市場を受けて、多方面で積極的な開発が進んでいます。
3つの分野でこれだけの巨大市場が生まれたということは、今後さまざまな分野が参入していくと、Web3の市場規模は莫大なものになっていくことは想像に難くありません。
この冬の時代はWeb3の大波がくるまでの準備期間といえます。
今のうちに、スモールステップでも良いので、Web3事業へ踏み出しておくことが、後々の事業展開に有利となってくるでしょう。
アプリケーションレイヤーの躍進
Web3という新しいインターネットが登場して以来、ブロックチェーン技術を支えるプロトコルレイヤーの開発が進んでいました。
プロトコルレイヤーは、インターネット上の情報伝達におけるデータ転送の基盤となります。
これに対して、NFT、DeFi、GameFiなどの新しい分野が登場した2020年頃からは、プロトコルレイヤー上に構築されるアプリケーションレイヤーの開発が急速に進んでいます。

アプリケーションレイヤーは、ユーザーが直接触れることができる領域であり、Web3を利用したさまざまなサービスが提供されています。
特に注目されているのが、ブロックチェーン上で動作する「スマートコントラクト」を活用した「DApps(Decentralized Application)」と呼ばれるアプリケーションです。
スマートコントラクトはブロックチェーン上でプログラムを動かす仕組みであり、DAppsはスマートコントラクトを用いて、分散型のアプリケーションを実現しています。
現在、DAppsの開発は、金融、ゲーム、アート、エネルギーなど、多岐にわたって行われています。
こうしたDAppsの発展により、従来のインターネットとは異なるWeb3が一般のユーザーにも身近な存在になっていくことが期待されています。
インターネットの黎明期と同様の動き
現在のWeb3を取り巻く環境は、インターネットの初期段階にあたる1999年頃と似ているとも言われています。
1999年はインターネットの利用者が増え始めた時期であり、新しい技術やビジネスモデルが次々と登場しました。
同様に現在は、Web3の新しい技術やビジネスモデルが次々と生まれており、今後ますます多様化していくことが予想されます。
下記の表を見ると、インターネットを使っているユーザー数と、クリプト(暗号資産)を持っているユーザー数が同じような推移で増加していることが分かります。

Web3第3世代に入っている2023年は、ITバブルをもたらした1999~2000年と同じような状況になるのではないかと予想されています。
GAFAMはなぜWeb2で成功したのか?
Web2の巨大企業であるGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)がなぜ成功したのでしょうか。
GAFAMはインターネットの初期から参入し、着実に開発を進めながら、最新の技術領域に大きな投資を行ってきました。
たとえば、Googleはインターネットの黎明期に検索エンジンを抑え、ユーザーの検索ワードを活用して広告最適化を実現することで成功を収めました。

彼らは黎明期からの積極的な参入によって、インターネットの普及初期において市場の主導権を握ることができたのです。
Web3は中央集権的な社会構造を解消することを目指していますが、こうしたGAFAMの動きは学ぶべき点があります。
Web3の黎明期である今、積極的に参入できるかによって今後のビジネス展開に大きな差が出てきます。
Web3業界に参入するかどうか悩んでいるなら、迷わずに行動することが重要です。
たとえスモールステップでも、Web3の知見を積極的に高めていくことが、将来の自社ビジネスに大きな影響を与えるでしょう。
Web3市場を読み解くにはGameFi分野の動向が鍵
Web3市場全体を理解するには、GameFi分野の動向に注目することが不可欠です。
GameFi市場の成長や新技術の開発は、将来的に他のさまざまな分野にも展開され、Web3市場の発展に重要な役割を果たすからです。
私たちLGG Researchも、GameFi市場を注視し動向を追っています。
GameFiとは
GameFi(ゲームファイ)は、ブロックチェーン技術を活用して、ゲームと金融を組み合わせた新しい分野です。主に、暗号通貨を使用して、ゲーム内でのアイテムの所有権や交換、ゲーム内での報酬の獲得、デジタルアセットのトークン化などを実現します。
(GameFiの歴史や変遷は『【歴史に学べ!】Web3ゲームの発展と失敗の変遷総まとめ』をご覧ください)
GameFiは2020年に急激に盛り上がった3つの分野(NFTアート、DeFi、GameFi)の中で、最も多くのユーザーを抱える市場です。
NFTアートやDeFiに比べて、一般消費者が手軽に利用できるという点で、多くの注目を集めています。
消費者が手に取りやすい分野
GameFiの要素であるゲームは、誰でも手軽に楽しめるエンターテインメントの1つです。
ゲームをしながら暗号資産を稼げることで話題となったGameFi(Play to Earn)「Axie Infinity」は、スマートフォンでプレイできることから、フィリピンを中心とした東南アジアの人々の熱狂的な支持を集めました。
一時期はゲームによってフィリピンの平均月収以上を稼ぐ人も続出し、ゲームで生計を立てる人もいたほどです。
ゲームという楽しい要素とスマートフォンさえあれば稼ぐことができる手軽さは、高齢者などの非ゲーム層も取り込んで急速に広がりました。
「ゲームをプレイするだけで収入が得られる」という明確なインセンティブは、消費者がWeb3に興味を持つ大きなきっかけとなることが期待されています。
(Play to Earnの詳細は『X2Eはなぜ注目を集めるのか?P2Eから広がる新たな経済圏の課題と対策』をご覧ください)
大手ゲーム会社が続々とWeb3事業へ参入
コナミやセガ、スクエア・エニックスといった日本の大手ゲーム会社がGameFi事業に参入をしています。
それにより既存のゲーム愛好者がWeb3ゲームへと流れ、GameFi人口は今後増えていくと予想されています。
既存のゲーム人口は年々増え続けていて、2020年から2021年にかけて6.1%増加しています。

世界のゲーム人口は27億人にも上り、そのユーザーがGameFi市場へなだれ込むとなると、相当の規模になると見込まれます。
2022年まではコアなファン向けだったGameFiが、ゲーム業界に精通した企業の参入が加速することで、より広く一般に遊ばれるゲームが誕生し、GameFi市場が盛り上がると予想されています。
GameFiマーケットは冬の時代の中で、大きな成長と可能性を秘めているといえます
資金・人・開発技術が集まっている
現在GameFi市場には、資金・人・開発技術が集まっています。
GameFiのアクティブユーザー数は年々増加しており、それに伴い、冬の時代にも関わらずベンチャーキャピタルからの投資額も増加しています。

COINTELEGRAPHより引用
Footprint AnalyticsとDeGameによる2022年第1四半期GameFi業界レポートによると、GameFiの資金調達額は前年比194.19%増加し、全体として11億2,600万ドル(1,500億円以上)が調達されました。

この数字は、不透明な市場環境にもかかわらず、投資家がGameFiに強気姿勢であることを示唆しています。
資金調達の増加によってGameFi業界には多くの人材が集まっており、急速に技術革新が進んでいます。
