「DeFi Kingdoms」DEX×GameFiの理想と現実

「DeFi Kingdoms」DEX×GameFiの理想と現実

DeFi Kingdoms は、2021年8月にリリースされた「Play to Earn」モデルのRPGで、Harmony チェーン1位の GameFi 銘柄として知られています。

GameFi銘柄のなかでは、DeFiにゲーム性を持たせることを目指した点が特徴的なタイトルで、しばしば退屈な DEXにおける暗号資産取引をゲーミフィケーションで包み込むことにより、DeFi体験を楽しいものへと変えることを掲げています。

プロジェクトコンセプトと将来的な期待、Web3ゲーム全体の追い風もあり、2021年12月からトークン価格は上昇。

1月5日に最高価格の$22.57に到達しましたが、それ以降はトークン価格が下落し続け、2022年8月23日には$0.15 と最高時の150分の1となりました。

DeFi Kingdoms のトークンが、下落し続けた背景には次の要因があります。

▼DeFi Kingdoms が抱える課題点

  • DEXとして利用できるチェーンがマイナーで、新規ユーザーを十分に流入させられていない
  • GameFi を導入する必然性が少なく、トークンの売り圧を起こしている
  • 運営力に課題があり、ユーザーの期待に応えきれていない

本レポートでは、DeFi Kingdomsが抱える課題点を中心に、DEX×GameFiのコンセプトについて考察していきます。

開発者視点での学びPOINT

  • 初期の訴求POINTが市場の期待値を下回ると、ユーザーを呼び戻すのに苦労がかかるため、ゲーム報酬を訴求する際にはメッセージの出し方に注意が必要になる。
  • ・プロジェクトのコンセプトや差別化を明確にし、ユーザーにとってわかりやすく選びやすいプロダクトにする必要がある

ユーザー視点での学びPOINT

  • ・DeFi Kingdomsは「DEX×GameFi」という新しいコンセプトで注目を集めたが、実需に紐づいたサービスを設計できていない。
  • ・今後も分野をクロスしたプロジェクトは増えてくると予想されるが、真新しいからといって成長できるわけでもない
  • ・そのプロダクトが誰を喜ばせることができるのか、その本質的な部分を評価してトークンに投資したり、プロダクトに参加するようにしたい。

プロジェクト概要

ゲーム全体像



DeFi Kingdoms は DeFiにPlay To Earn体験を追加した 「DeFiゲーム」です。

DeFi領域における暗号資産の売買やスワップ、ブリッジ、ステーキング等は、投資家に多くの利益を生み出しました。しかしながら、その単純な数字を使ったインターフェースはしばしば無機質さを感じさせます。

▲他のDEXの例。数字と銘柄のみが掲示されます(UniSwapより)

そこでDeFi Kingdoms は、従来のDeFi体験にNFTとゲーム性を加えて、ピクセルアートとケルト風のBGMによって彩られる世界観を構築して、DeFi体験の楽しみ方を増やしました。

▲DeFi Kingdoms における DeFi 体験

ユーザーは単にDEXでファーミングをするのではなく、トークンやヒーローNFTを保有することで

  • 庭園で暗号資産の収入を得たり
  • 酒場で戦士や魔法使いのNFTを売買したり
  • 錬金術師のもとでポーションを作ったり買ったり

ゲーム世界での体験を通してDeFiを体験することができます。

一般的なDeFiの経験があれば数分で受動的所得を作ることができるほか、コアなゲーマー向けに様々なステータスや戦略が用意されており、各々で最適な戦略を立てることができます。

チェーンと世界観

DeFi Kingdomsは複数のブロックチェーン上に構築されており、それぞれ別のワールドとして描かれています。

DeFiの文脈では「レルム」Gameの文脈では「ワールド」と呼び分けられています。執筆時点では次の2つのワールドが存在しています。

  • 第1ワールド:SerendaleHarmony チェーン
  • 第2ワールド:CrystalvaleDFK チェーン:Avalancheのサブネット)

ワールドごとに基軸通貨となるトークンが設定されており、Serendaleでは「$JEWEL」Crystalvaleでは 「$CRYSTAL」 を使用します。

$JEWEL に関しては、HarmonyチェーンとDFKチェーンの間でブリッジすることができます。DFKチェーンのCrystalvaleでは $JEWELは$CRYSTAL獲得の元手にしたり、ガス代に利用できます。

第1ワールドのSerendaleは一部ゲーム機能が先行していますが、第2ワールドのCrystalvaleでも同等のDeFi機能が提供されています。

マーケットプレイスとNFT

DeFi Kingdoms はゲーム内にNFTマーケットプレイスが存在しており、ゲームで使用するヒーローNFTを売買することができます。

ヒーローNFTを持っていると、クエストをはじめとした、トークンを獲得するためのゲーム性のあるコンテンツがプレイできるようになります。

例 :「シーフ」クラスを持つ Gen 0 ヒーロー(公式Mediumより)

ヒーローNFTはクラスやレアリティ、レベル、ステータス、職業スキルなど様々なパラメータを持っています。

このパラメータは、クエストの向き不向きに影響を与えるため、より効率的にプレイするには高いパラメータのヒーローNFTを保有することが必要となります。

ヒーローNFTを獲得する方法は、マーケットプレイスのほか、召喚により獲得することができます。

「召喚」では、保有している2体のヒーローNFTから、新しいヒーローNFTを1体を生み出すことができるため、自分好みのヒーローNFTを作る楽しみもあります。

ロードマップ

DeFi Kingdomsでは、今後のロードマップをマイルストーンとして公開しており、具体的な年月については記載がありません。

  • ペットの実装
  • 建築物の実装
  • 装備品の実装
  • PVE機能の実装
  • ギルドシステムの実装
  • PVP機能の実装

DeFi Kingdoms は2つのチェーン上にDeFi機能とWeb3ゲームの基盤となる機能を提供してきました。

さらに、Serendaleでは先行して次の機能が実装されています。

  • LAND の販売
  • ペットの実装

DFKチェーンのCrystalvaleでも同様の機能が順次追加されていきます。

今後はLANDに施設を設置する建築(Building)やヒーローNFTを強化する装備(Equipment)のほか、よりゲームらしい PvE/PvP 機能が追加されます。

PvPの機能追加ではWeb3ゲーム開発支援組織 Wisdom Labs とパートナー提携による開発支援が明らかになっています。

トークンの概要

DeFi Kingdomsでは、ワールドごとに利用できるトークンがあり「パワートークン」という総称を持ちます。

現在パワートークンは$JEWELと$CRYSTALの2つのトークンがあります。

$JEWEL(ガバナンス)

$JEWEL は第1レルムのHarmonyチェーンで導入された DeFi Kingdoms の代表的なトークンです。

  • 発行上限  :500,000,000
  • 時価総額  :$11,059,979
  • 価格    :$0.1761
  • 上場取引所 :

    • DEX・・・SushiSwap、DeFi Kingdoms
    • CEX・・・MEXC、CoinEx

  • 種類    :ガバナンス
  • 獲得方法  :

    • 取引所で購入
    • デポジット
    • LPステーキング
    • NFTの売却
    • ゲーム内報酬

  • ホルダー数 :56,590
  • 使用ポイント:

    • ファーミング
    • NFTの購入
    • 投票機能

$JEWELの価格推移(CoimMarketCapより)

$CRYSTAL(ガバナンス)

$CRYSTALは第2レルムのDFKチェーンに移行する際に導入されました。

違いは利用できるチェーンくらいで、トークンユーティリティはほぼ同じです。

  • 発行上限  :50億枚
  • 時価総額  :—
  • 価格    :$0.2326
  • 上場取引所 :

    • DEX・・・DeFi Kingdoms

  • 種類    :ユーティリティorガバナンス
  • 獲得方法  :

    • 取引所で購入
    • デポジット
    • LPステーキング
    • NFTの売却
    • ゲーム内報酬

  • 使用ポイント:

    • ファーミング
    • NFTの購入
    • 投票機能

$CRYSTALの価格推移(CoinMarketCapより)

ユーザーと運営の収益ポイント

ユーザーの収益ポイント

①:預金(Deposit)で稼ぐ

Jewelerゾーン(公式Mediumより)

預金(Deposit)は、プレイヤーが収益を獲得できる最もシンプルな方法です。

預金を開始するには、ゲーム内の宝石商(Jeweler)に話しかけ、次の画面の「Deposit」を選ぶ必要があります。

Jewelerのメニュー。預金(Deposit)のほか、請求(Claim)、送金(Withdraw)ができる(公式Mediumより)

保有するパワートークン(JEWEL / CRYSTAL)を預けると、預けた量のパワートークンがウォレットから削除され、そのときのレートに応じた xToken (xJEWEL / xCRYSTAL)を受け取ります。

プレイヤーがxTokenを宝石商に預けている間、ゲームシステムが収集した利益の一部はプレイヤーの預金額に応じて配分されます。

xTokenとパワートークンの交換レートは預金期間に応じて上昇し、より多くのトークンが獲得できるようになります。

xTokenはガバナンス機能を持つため、運営が投票を求めた際には、xTokenの保有量と同数の投票をすることができます。この点もxTokenをより多く、より長期の保有する動機となります。

②:LPステーキングで稼ぐ

Gardensのメニュー(公式Mediumより)

LPステーキングは、いわゆるイールドファーミングのことで、複数の暗号資産のペアを流動性プールに預けることで収益を得る仕組みです。

LPステーキングは「Gardens」という施設で始められます。収益率は2つ暗号資産の組合せによって異なっており、APRが200%を超える組合せも存在します。

暗号資産の入金には手数料はありませんが、引き出しには手数料があります。手数料は預けた期間によってが変わり、すぐに引き出した場合は25%、時間の経過とともに下がり、4エピック以降であれば0.1%まで手数料は落とせます。

なお、エピックはブロックチェーンの期間を表す単位です。1エピックはおよそ1週間に相当し、4エピックなら4週間相当となります。

③:NFTを販売する

Heroesの購入や雇用を行うためのマーケットプレイスインターフェース(公式Mediumより)

プレイヤーは保有しているNFTをマーケットで販売することができます。

NFTの販売額はレベルやレアリティによって価値が変わってきます。NFTのレベルを上げてマーケットで販売することで、この差額を獲得することができます。

例えば8/20のマーケットでは、Lv1の場合はフロア価格42JEWEL(=約931円)のところ、Lv10の場合はフロア価格が350JEWEL (=約7766.5円)でした。

価格が変動しなければゲーム内でLvUpしていくことで、308JEWEL (=約6993.8円)を差益が得ることができます。

④:職業クエストでトークンを獲得する

Professionsゾーン(ゲーム画面より)

職業クエストは、経験値と一定確率でアイテムがもらえるクエストで、ヒーローNFTを1体以上持っているとプレイできます。

「採掘」「園芸」「採餌」「釣り」の4種類があり、ヒーローNFTのステータスによって獲得できるアイテムの確率が変わります。

獲得したアイテムは、ゲーム内アイテムでありながらトークンとしてウォレットに格納されます。

クエストで獲得できるゲームアイテムの一部のコントラクトアドレス(公式Discordより)

獲得したアイテムトークンは、トレーダーに話しかけることでゴールドやパワートークンと交換することができます。

運営の収益ポイント

運営の収益ポイントは、ユーザーのゲーム内におけるDeFi活動、つまりトランザクションの手数料の一部が充てられます。

具体的に手数料が発生するシーンは次の通りです。

  • 預金(Deposit)の手数料
  • LPステーキングの手数料
  • トレーダーによるアイテムトークンの交換手数料
  • マーケットプレイスの売買手数料
  • ヒーローNFTの召喚手数料

手数料のうち25%は開発ファンドに送られ、17%はマーケティングファンドに、また別の17%はファウンダーズファンドに送られます。

なお、残る手数料の40%はユーザー報酬のために分配され、1%はバーンされます。

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