DigiDaigakuは、Free to Ownをコンセプトとする3D MMOプロジェクトです。
Free to Ownとは、ゲーム参加に必要なNFTを無料で配布するフリーミントに加え、NFTホルダーに定期的にNFTがエアドロップされるモデルで、ユーザーが初期投資なくweb3ゲームを楽しむことを目的としています。(詳細は後述)
2022年8月10日に無料配布されたGenesis NFTの2次流通平均価格は2023年1月12日時点で11ETHに達し、Bored Ape Yacht ClubやAzukiといったブルーチップNFTに名を連ねるのではないかと言われるほど、世界中で大きな注目を集めています。

ゲームそのものはまだ出来上がっておらず、現在できることはNFTを収集、mint、burnするのみですが、以下の要素から、非常に盛り上がっております。
- Web2ゲーム業界で有名なGabriel氏が手がけている
- 2億ドルもの大型資金調達を完了させている
また、単なるWeb3ゲーム・NFTプロジェクトに留まらず、業界が抱える様々な課題を解決する技術を開発し続けており、web3ゲーム・NFT業界の現在・未来を知る上で注目すべきプロジェクトと言えます。
そこで本記事では
- DigiDaigakuとはどのようなプロジェクトなのか
- どのような技術革新が行われているのか
- なぜ無料配布のNFTに高額な2次流通価格がついているのか
- 今後、フロア価格はどうなっていくのか
を中心に解説および考察します。
ユーザー視点でのPOINT
・現在のNFT価格の高騰は、プロジェクトへの期待値によるところが大きいと思われるが、運営陣のビジネス力が高いため、期待が持てるプロジェクトである。
・ただし、NFT保有者の多くが2次流通で購入しているため、Free to Ownが意図する「原資回収を気にせずゲームをプレイする」という状況にはならない。
開発者視点でのPOINT
・Free to Ownモデルは、既存のweb3ゲームの経済圏安定問題に対する一つの解決策になりうるが、実現には高いビジネス構築能力やマーケティング能力が求められる。
・Free to Ownというコンセプトだけで、NFTが売られなくなるということはない。
・Adventure ERC721やクリエイターズトークンなどの技術革新が進んでおり、オープンソースで誰でも利用できる。
目次
Free to Ownとは

プロジェクトの解説に入る前に、DigiDaigakuの根幹ともいえるFree to Ownというコンセプトについて解説します。
Free to Ownとは、ユーザーが無料でNFTを所有するというコンセプトです。
多くのWeb3ゲームでは、ユーザーがNFTを購入してゲームに参加するのに対し、Free to Ownでは無料でNFTが配布されます。(ただし、数に限りがあります)
無料でNFTを配布する「フリーミント」を採用したプロジェクトはこれまでもありましたが、DigiDaigakuではNFTホルダーに対して定期的にNFTを追加配布するという仕組みをとっており、このNFT追加配布も含めて「Free to Own」と呼んでいます。
Free to Ownの利点
ゲームプレイのための初期投資が必要ない
従来のWeb3ゲームは、プレイ前にNFTを購入する必要があったため、ゲーム参加のハードルが高いとともに、初期投資した額をいち早く回収したいという意識が強く働いてしまい、結果として経済圏が崩壊しやすいという問題を抱えていました。
これに対してFree to Ownは、ユーザーは資産を減らすことがないため、売り圧がかかりにくい = 市場価格が崩れにくいことが期待されます。
NFTを保有しておいた方が得だと感じる
初期投資がかからないとはいえ、それなりの市場価格がつけば売却の心理が働きます。
しかし、NFTを保有し続けることでNFTが追加配布されるのであれば、「今売るより持っておいた方が得」という心理が働き、簡単に売却されなくなります。
Free to Ownの留意点
無料配布されるのは一部のユーザーのみ
NFTが完全にフリーミントだと価値がつかないため、発行数は制限されます。
そのため、無料でNFTを受け取れるのは一部のユーザーのみであり、他のユーザーは2次流通で購入することになります。
NFTで資金調達ができない
Free to Ownモデルでは、他のプロジェクトが行なっているようなNFTの販売での資金調達ができません。
そのため、既に別のビジネスで利益を上げているか、資金調達を成功させるかなどでプロジェクトに潤沢な資金を用意することが前提となります。
DigiDaigaku以前にNFTをフリーミントしたプロジェクトに『Loot Project』がありましたが、プロジェクトを支援するだけの資金を賄えず、衰退しました。
Free to Ownモデルの実現には、事業を支えるだけの資本政策がセットになります。
プロジェクト概要
ビジョン・ミッション
DigiDaigakuはLimit Break社が手がけた初のプロジェクトであり、創業者のGabriel Leydon氏は「DigiDaigakuを通して、全世界10億人のWeb2ゲーマーをWeb3にオンボードさせる」ことをミッションに掲げています。
Gabriel氏はもともとMachine Zone社の創業者としてFree to Play業界で「ゲーム・オブ・ウォー」「モバイルストライク(Mobile Strike)」「ファイナルファンタジーXV:新たなる王国」などの大ヒットタイトルを輩出したことで有名な方です。
Machine Zone社をAppLovin社に売却したのち、Web3事業専門のLimit Break社を設立し、第一プロジェクトとして『DigiDaigaku』を立ち上げました。
運営メンバー
8割が元Machine Zone社のメンバーであり、ゲーム業界に精通したメンバーで構成されています。
Gabriel Leydon(CEO, co-founder)
Free to Playゲーム業界における有名人。
Addmired社(現Machine Zone社)を2008年にHalbert氏と共同創業し、ゲームオブウォーで30億ドル、モバイルストライクで14億ドル、ファイナルファンタジーXVで10億ドル以上の売り上げを記録しています。
さらに、スーパーモデルを登用したスーパーボウル広告が話題を呼び、”ゲーム界の鉄の玉座に座る男 “と呼ばれるほどゲーム制作およびマーケティングの領域において高い知名度を誇っています。
Halbert Nakagawa(CTO, co-founder)
Gabriel氏と共同創業でMachine Zone社を設立した起業家で、主にエンジニアリングの分野でゲーム開発をリードしています。
ロードマップ
ロードマップは公開されておりません。
また、ホワイトペーパーなどの詳細情報も公開されておりません。
これは、創業者のGabriel氏がMachine Zone社時代にFree to Playゲームを開発していた際、公開情報を元に多数の模倣プロジェクトが開発されたことに起因しています。
特に、今回のFree to Ownモデルは今後のweb3ゲームのスタンダードになりうる革命的なモデルであると謳っていることもあり、情報はできる限り秘匿する方針を取っています。
VC・投資家
運営会社のLimit Break社は総額2億ドルの資金調達を完了しています。
これは、2022年のGameFi分野で5番目に多い額の調達でした。
主なVC・投資家
・FTX
・Coinbase Ventures
・Anthos Capital
・SV Angel
・Buckley Ventures
・Standard Crypto
・Paradigm Ventures
ロードマップが明らかになっていないため、今後の展開が不透明ではあるものの、クリプト業界が冬の時代を迎え、VC各社の査定が厳しくなっている状況で2億ドルもの調達を成功させていることから、プロジェクトや運営に対する期待値の高さが伺えます。
Limit Break社による技術革新

全世界10億人のWeb2ゲーマーをWeb3にオンボードさせるにあたり、web3ならではの体験をユーザーに提供することは重要なポイントになりますが、現在は技術的な課題により実現できていないことが山ほどあります。
例えば、web3は分散型がテーマなのにNFT取引のロイヤリティ設定は取引所が中央集権的に管理していたり、ゲームのアクションに応じてNFTを変化させられなかったり、ゲーム内経済圏が安定しなかったりと、web3だからこそ可能な魅力的な体験を安全に提供することができていません。
このような課題に対しGabriel氏は「大胆な技術革新が必要」と述べており、オープンソースで新たな技術を開発しています。
以下は、2023年1月12日時点で公開されている情報です。
①AdventureE RC721トークンによるNFT機能の拡張

Limit Break社では、ゲームロジックの真実のソースはブロックチェーン上にあるべきという思想を持っており、ゲーム内でのアクション結果を、ゲームアセットであるNFTに直接反映させる仕組みとしてAdventure ERC721トークンというスマートコントラクトを開発しました。
イーサリアムチェーン上のNFTの標準規格はERC721ですが、ERC721のスマートコントラクトにはNFTを転送(トランスファー)する機能しかなく、アートの用途には対応できても、ゲームに対応するには不十分です。
例えば、ゲーム内でゲームアセット(ゲームアイテム)を消費(burn)して新しいゲームアセットを手に入れるというイベントを実装したくても、ERC721規格では対応ができません。
この問題に対し、ERC721の拡張規格であるAdventure ERC721トークンでは、ゲームでの用途を中心とした以下の機能を実装しており、幅広いゲームメカニクスを実現できるようになっています。
- トランスファー(ERC721の機能を継承)
- ロック
- バーン
- ステーク(+ アンステーク)
Adventure ERC721トークンは、キャラクターやアイテムに変化が生じる「ストーリ性のあるゲーム」に対して特に相性が良く、今後のWeb3ゲームのスタンダードになる可能性もあります。
※DigiDaigakuでは、Genesis以外の全てのNFTにAdventure ERC721が実装されています。(NFTの種類については後述)
オプトイン方式によりユーザーに選択の余地を残す

Adventure ERC721による機能拡張は、新規だけでなく既存のNFTにも適応可能です。
しかし、一方的なルール変更はweb3の倫理に反します。
そのためAdventure ERC721による機能拡張はオプトイン方式を採用しており、クリエイター側が実装した仕様に対し、ユーザー側が許可した場合のみ、その機能を発揮することができるようになっています。
②Adventure ERC721トークンにより他社ゲームとのコラボレーションを実現
Adventure ERC721規格のNFTであれば、NFTホルダーが他社のゲームをプレイできるといったコラボレーションも可能です。
Adventure ERC721に対応するゲームは、「アドベンチャー」と呼ばれるゲーム関連機能が記述されたスマートコントラクトで作成します。
「アドベンチャー」は以下の要素で構成されます。
- メインクエスト(ゲームの主軸となるストーリー)
- クエスト(サブストーリー・ミニストーリー)
- ゲームルール

この「アドベンチャー」をコラボレーション相手のゲームで構築することで、アドベンチャーを介してNFT情報を読み取り、ゲームプレイが可能になります。
実際、この取り組みはCastawaysとEtherOrcsとで実現しており、各ゲームに対応したDigiDaigakuの「Adventure key NFT」ホルダーは、CastawaysやEtherOrcsで遊ぶことができました。
認証システムによるセキュリティ
しかし、この仕組みだと、勝手にコラボレーションゲームを作ることも可能になため、アクセスしたらNFTを盗まれるなどのフィッシング詐欺プロジェクトが作られる危険性もあります。
これに対しLimit Break社は、ゲームそのものである「アドベンチャー」をホワイトリスト化する仕組みを整えており、Limit Break社がホワイトリスト化したゲーム以外がNFTにアクセスできないようにしています。
③クリエイターズトークンによるロイヤリティの民主化と多様化
Adventure ERC721と同様に、ERC721の拡張規格として「クリエイターズトークン」を1/11に発表しています。
クリエイターズトークンは、既存のERC721規格のNFTに対して新機能を追加できるスマートコントラクトで、クリエイターの保護と、将来のWeb3ゲームの進化に備えてNFT機能をアップグレードできるようにする目的で開発されました。
拡張機能は随時公開されていく予定ですが、現在公開されている機能について以下に記します。
1. ミニマム・フロア・オペレーター

クリエイターが、NFT単体あるいはコレクション全体の最低売却価格をスマートコントラクトレベルで定義することができるようになります。
このシステムは、NFT利用における様々なシチュエーションに役立つ可能性があり、例えばゲームに適用した場合、以下のようなメリットが想定されると運営は述べています。
- 一部のゲームアイテムに高額な価格設定をすることで、希少価値を高める。
- 暗号資産の市況やマクロ経済要因による価格変動の影響を抑える。
- 投機によるアイテム価値への影響を抑える。
また、アートの世界は作品の価格がアーティストの価値に直結するため、作品(NFT)の価値が一定以上に保つことで、アーティストとしての権威が損なわれることを防ぎます。
2. ロイヤリティシェアリング

クリエイター・アフィリエイター・コレクターへのロイヤリティの割り当てを、スマートコントラクトレベルで定義することができます。
ロイヤリティシェアリングは、これら3者に対してそれぞれ重要な意義があります。
クリエイターに対する意義
Web3は分散型を信条とするものの、NFT取引のロイヤリティは取引所が中央集権的に管理してきました。
その結果、2022年後半に取引所が流動性向上を目的としてゼロロイヤリティやオプション取引に移行し始め、クリエイターやNFT業界が大きなダメージを受けました。
この問題に対してロイヤリティシェアリングでは、スマートコントラクトレベルでロイヤリティを設定することで、クリエイターや開発者が取引所の設定に影響されずにロイヤリティを設定できるようになっています。
アフィリエイターに対する意義
アフィリエイターに対してロイヤリティが設定できるようにすることで、マーケティングにおいてアフィリエイターの協力を得られやすくなります。
コレクターに対する意義
コレクターに対してロイヤリティを設定するということは、コレクターがNFTを購入する動機になります。
さらに、ロイヤリティの割合を、NFTの保有期間によって変動させるなどの設定を行うことで、保有し続ける動機を生み、コミュニティ形成における有効な手段となりえます。
技術革新のポイントはスマートコントラクトレベルでの設定による真の分散化
Limit Break社が手がける上記のような技術革新のポイントは、全てスマートコントラクトレベルで実現することで、web3業界を真の分散型に移行させようとしている点です。
例えば、ロイヤリティシェアリングの機能そのものは既に仕組みとして取り入れている取引所も存在しますが、あくまで取引所が中央集権的に決めている仕組みなので、クリエイターや開発者は常に仕組みが変更されるリスクに晒されながら活動することを強いられます。
web3は分散型を信条としてますが、技術レベルの問題でまだ中央集権的になっているポイントが数多くあります。
Limit Break社はこのような問題に対し、大胆な技術革新を持って解決に取り組んでおり、情報はオープンソースで展開しています。
Gabriel氏がFree to Playのゲームを手がけていた時代も、あらゆる局面が規制との戦いで、それらの問題を技術革新を持って乗り越えてきたという経緯があり、「Free to Ownでも同じことをやるだけ」とコメントしています。
2022年1月12日時点でのゲーム概要
DigiDaigakuのゲーム概要は、将来的に3D MMOになること以外の情報は伏せられており、2023年1月12日時点では公式サイトの「クエスト」でNFTをmint / burnするのみとなっています。
その他、コラボレーションしたゲームを、Adventure NFTを入手することで遊べるようになっています。
ゲーム概要
① クエスト(NFTのmint/burn)
② コラボレーションゲーム
① クエスト(NFTのmint/burn)
クエストには、「ヒーロークエスト」と「ポーションクエスト」の2つがあります。
ヒーロークエスト

ヒーロークエストでは、GenesisとSpiritsを24時間ステークすることで、Heroesをmintします(Spiritsはステーク後にburnされます)。
ミントされるHeroesにはRoyal、Warrior、Rogueの3つの血統があります。
Royal > Warrior > Rogueの順に強く設定されており、どの血統のHeroes NFTがmintされるかは、ステークするGenesisとSpiritsの組み合わせにより決定します。
Heroesの血統パターン
① Spirits NFTのみステーキング → Rogue
② Genesisと、GenesisにマッチしていないSpiritsをステーキング → Warrior
③ Genesisと、GenesisにマッチしたSpiritsをステーキング → Royal
Spiritsは、GenesisホルダーとHeroesホルダーに周期的にエアドロップされますが、どちらも持っていない場合は二次流通での購入となります。
ポーションクエスト

ポーションクエストでは、Dark SpiritsとDark Hero SpiritsをburnしてVillains Potion、もしくはSuper Villains Potionをmintします。
ポーションのmintパターン
① Dark Spiritsのみburn → Villain Portion
② Dark Heroes Spiritsのみburn → Villain Portion
③ Dark SpiritsとDark Heroes Spiritsをburn → Super Villain Portion
mintしたポーションは、Villain(unrebeal)を強化するのに使用します。
Villainの強化パターン
① Villain(unreveal)のみburn → Villain
② Villain(unreveal)にVillai Portionを使用 → Villain(①より強い)
③ Villain(unreveal)にSuper Villai Portionを使用→ Super Villain
VillainやSuper Villainには、強さを決める4つの特性(Class、Enhance、Weapon、Calligraphy)があり、これらはポーションの中身によって決まります。
Villainの特性
① Class(全5種)
② Enhancement(全40種)
③ Weapon(全70種)
④ Calligraphy(全8種)
※強さへの影響度はClass > Enhancement、Weapon > Calligraphy
ポーションの中身は素材となるDark SpiritsとDark Hero Spiritsが持つ特性の組み合わせによって決まります。
(つまり、Dark SpiritsとDark Hero Spiritsの特性と組み合わせがVillainまたはSuper Villainの特性を決定します)
Villain(ポーション)の特性 | 決定要因 |
---|---|
CLASS | ・Dark Spirits NFTのEXPRESSION ・Dark Hero Spirits NFTのランク |
ENHANCEMENTS | ・Dark Spirits NFTのEXPRESSION ・Dark Hero Spirits NFTのEXPRESSION |
WEAPON | ・Dark Spirits NFTのPROP ・Dark Hero Spirits NFTのRIGHT PROP |
CALLIGRAPHY | ・Dark Spirits NFTのBACKGROUND |
Dark SpiritsとDark Hero Spiritsの組み合わせと生成されるポーションの組み合わせについては、公式サイトに掲載されているポーションレシピで確認できます。
NFTのユーティリティ
2023年1月12日時点では、ゲームとしてのNFTのユーティリティは明らかになっていません。
ただ、Gabriel氏のTwitterでは、強力なNFTほど多くの報酬が得られるというツイートがされています。
② コラボゲームをプレイする
DigiDaigakuは他のWeb3ゲームと積極的にコラボレーションを行っており、Genesisホルダーにはコラボしたゲームで遊べるAdventure Key NFTが無料で配布されています。(OpenSeaなどの2次流通で購入することも可能)
2023年1月時点で実際に遊べるコラボレーションゲームはCastawaysとEtherOrcsですが、Gabriel氏はTwitterで、積極的にコラボレーションを行っていく旨をツイートしています。
Genesis NFTを保有していると、今後他のプロジェクトとコラボレーションした際に、同様にAdventure Key NFTが配布される可能性が高く、様々なゲームを遊ぶことができるようになります。
NFT情報
Genesis
Dark Spirits
Heroes
Dark Spirits
Dark Hero Spirits
Villaines Portion
Super Villaines Portion
Villaines
Super Villaines
Adventure Key
NFT価格を上げる仕組み
Gabriele氏は、NFTの価値は以下の3項目で決まると考えており、これらに基づいた運営を行っています。
NFTの価値を決める要素
① 高い需要
② 高い注目度
③ 優れたユーティリティ
① 高い需要
NFT発行枚数の制限
DigiDaigakuのNFT発行数は中央集権的に管理されており、各NFTも数千点と数が絞られています。
また、インフルエンサーを起用したGiveaway施策は一切行っておらず、最初に行われたGenesis NFTのエアドロップは、一部のユーザーに限定配布されました。
Gabriel氏が、自身のTwitterで「理想的なNFTは1万点の供給に対して50万人の需要があること」と述べていることからも、需給のバランスに対して敏感になっていることが伺えます。
Free to Ownによる売り圧防止
Free to Ownコンセプトの元々の目的でもありますが、ユーザーの初期投資を不要にすることにより、原資回収という概念をなくす=売り圧を高めないようにしています。
② 高い注目度
フリーミントによるマスアダプション
NFTはマスアダプションさせることが大きな課題となっています。
NFTの保管によく使われるMetamaskユーザーはグローバルで3000万人程度と言われていることからも、市場として開拓の余地が大きいことが分かります。
DigiDaigakuは、マスアダプションしづらい原因の一つである「NFTへの高額な投資」を無料配布によりクリアすることで、DigiDigakuをきっかけに多くの人がNFTに触れるようになることを考えています。
一般人を対象としたマス広告による認知拡大
DigiDaigakuをマス広告に流すことで、一般層の認知獲得を狙ってます。
2023年2月12日に開催されるスーパーボウルカップでのCM枠を650万ドルで買取っており、そこでWeb3に馴染みのない一般人がDigiDaigakuを知り、興味を持つ施策を展開する予定です。
具体的には、希少性の高いドラゴンNFTを一部の視聴者にフリーミントする施策を予定していると、GamesBeatのインタビューおよびGabriel氏のTwitterで公表しています。
スーパーボウルカップでのCMについては、Gabriel氏がMachine Zone社時代に「Game of War」と「Mobile Strike」で2度経験しており、その広告は多くの人の記憶に残るほどの成功を収めています。
その成功ノウハウを元にDigiDaigakuの広告も展開されますので、一般のCMと比べて成功する確率は高いでしょう。
他のプロジェクトとのコラボレーション
CastawayやEtherOrcsとのコラボレーション企画は、コラボレーション先のコミュニティにDigiDaigakuへの認知と興味づけをする絶好の機会です。
Gabriel氏は自身のTwitterで、(ゲームが面白ければ)積極的にコラボしていきたい旨を発信しています。
また、EtherOrcsとのコラボでは、ユーザーのエンゲージメントが高まったというデータも出ており、コラボする相手側からしてもメリットの大きいプロジェクトに成長しています。
③ 優れたユーティリティ
手放さない方が得と思わせる「NFTジェネレーター」
DigiDaigakuには、まだゲームそのものが実装されていないのでユーティリティは限られてはいるものの、特徴的かつ主要なユーティリティとして「NFTジェネレーター」であることが挙げられます。
NFTジェネレーターとは、「保有していることで新しいNFTを入手できるNFT」という意味であり、実際にこれまでGenesis NFTホルダーやHeros NFTホルダーには様々なNFTが無料でエアドロップされてきました。
今後もその方針は変わらず、各種NFTを保有していることで、将来的に生み出される新たなNFTを無料で受け取る権利が得られます。
つまり、「今売るよりも持っておいた方が得」だとユーザーが感じやすい設計になっており、NFTが売りに出されない=希少性が上がるという構造が出来上がっています。
運営の収益
運営の収益ポイント
・2次流通のロイヤリティ(10%)
・NFTの販売(2次流通)
通常、NFTゲームの売上はNFTのオフィシャル販売と2次流通のロイヤリティが主流ですが、DigiDaigakuは無料でNFTを配布しているため、今のところは2次流通のロイヤリティがメインの収益になっています。
ただし、一部のNFTは運営が保有しており、2次流通に流すことも想定しています。
このこと関してGabriel氏は
「NFTの何割かは自社で保有し、2次流通価格が上がった時に販売することで収益を上げることができる」
とコメントしています。
ホルダー情報
DigiDaigakuの根幹となるGenesis NFTのホルダー状況について記載いたします。
①クジラとブルーチップホルダーの参入率

ウォレット数(%) | NFT数(%) | |
---|---|---|
クジラ | 7(0.8%) | 136(7%) |
ブルーチップホルダー | 221(26%) | 473(23%) |
クジラの率と、NFTの保有率はそれぞれ0.8%と7%で、それほど大きな割合ではありません。
また、クジラの中でも保有数が上位の2つのウォレットで、クジラ全体の72%のNFTを保有しています。
一方、ブルーチップホルダーのウォレット数は26%、NFT数は23%とそれなりの数値を示しており、ブルーチップホルダーも興味を示しているプロジェクトであることが伺えます。
②ホルダーのNFT保有期間

NFTの保有期間は、30日以上保有しているウォレットが84%で、そのうち3ヶ月以上保有しているウォレットが63%でした。
Genesis NFTの無料配布が始まってから執筆時点で5ヶ月になりますので、ほとんどの人が持ち続けたことになります。
また、保有期間のトレンドも、長期化する傾向を示しています。

一方で、最初に売りに出されるまでの保有期間が24時間以内であったNFTが49%と高い傾向が見られます。

これは、無料でもらったNFTでも値がついたら売りたいというユーザーが一定数いたことによる影響です
ホルダー数の推移を見ると、mint初日からホルダー数が急落していることが分かります。

この動きは、mintしてすぐに売りに出したユーザーの動きを表しています。
③売りに出されたNFTの数

実際に、無料配布されたNFTのうち、どれくらいの数が保有し続けられているのかを見てみると、75%は売りに出されています。
つまるところ、Free to OwnでNFTを保持し続けているユーザーは全体の25%であり、現在のホルダーの75%は2次流通価格で初期投資をしていることになります。
今後のNFT価格の展望

コラボレーション企画や技術開発など、価値向上につながる動きには期待できる
本格的にゲームがリリースされていない現段階では
- 無料配布で入手した人は売らなくても損しない
- NFTを保有していると新しいNFTが追加配布される
- コラボレーションしたゲームに参加できる可能性がある
といった、「将来に対する期待値」や「保有しておいた方が得」という心理で価格上がっている部分が強いように見受けられます。
そのため、DigiDaigaku自体のゲーム設計や、他のプロジェクトとのコラボレーションなど、ユーザーにとって魅力的なプロジェクトを展開できるかどうかが、NFTの価値づけのポイントになります。
DigDaigaku自体のゲーム設計については情報が全く公開されていませんが、Adventure ERC721やクリエイターズトークンなどでユーザーが新しいweb3体験をできるような仕組みを構築しようとしていることが見て取れます。
また、他のプロジェクトとのコラボレーションについても、twitter上で今後の情報が上がってきており、DigiDaigakuを中心としたゲーム展開が広がっている様子が伺えます。
また、ユーザーからも好意的なコメントが多く、はっきりとは言えないまでも、ユーザーに期待を持たせるには十分な展開ができています。
ホルダーは長期で保有する傾向がある
また、現段階でのGenesis NFTホルダーの性質としては、長期保有する傾向が見られ、クジラの参入率もそれほどありません。(ただし、トップホルダー(hype.eth:0x57524efc73e194e4f19dc1606fb7a3e1dbf719b3)が74のGenesis NFTを保有しているため、そのウォレットの動きには注意する必要あり)
1人の投資判断で、大きく市場が動く可能性は少ないでしょう。
Free to Ownでも利確の心理は強い
とはいえ「Free to OwnだからNFTを手放さないとは限らない」という点には留意する必要があります。
Free to Ownの主な目的は、ユーザーの初期投資をなくして、NFTを売らずに遊び続けてもらうということでしたが、Genesisのmint初日に大量の売りが入った結果から、「無料でもらったNFTでも価値がついたら売りたい」というユーザー心理が見て取れます。
また、Genesisが無料配布されてから5ヶ月が経過した現在、一度も売りに出されていないNFTが全体の25%しかないという点も、「売れるタイミングで売りたい」というユーザー心理を表しています。
同時に、75%のNFTは2次流通価格での「初期投資」で購入されているので、投資分を回収したいという心理は他のWeb3ゲームと同様でしょう。(運営が保有している分のNFTを考慮すると、もっと多くの割合のホルダーが初期投資をしている可能性があります)
単純に「Free to Ownだから初期投資を気にしない」とはならないようです。
次に価格が動くタイミング

次に控えている、NFTの売れ行きに最も影響しそうなイベントは、2023年2月12日に控えているスーパーボウルカップでのCMとVillain NFTのリリースです。
スーパーボウルカップCMでDigiDaigakuの認知が増えればフロア価格が向上する可能性もありますが、一方で、このイベントによる値上がりを目掛けてNFTを購入している層も一定数いるでしょう。
スーパーボウルカップCM以降に一定数の売り買いが入る可能性があります。
また、Villain NFTも近日フリーミントされますが、このタイミングは多くの「今までDigiDigakuを知っていたけど価格が高すぎて参入できなかった人」がDigiDaigakuに参入する場ととなります。
Villain NFTのgiveaway投稿を見ても、その反応の大きさから、多くの人が注目していることが分かります。
Gabriel氏の方程式に従うならば、NFT供給量に対して非常に大きな注目が集まっている、価格は上がる可能性がありますが、どのようなプロジェクト展開になるのかもチェックしつつ、注意深く追っていく必要があります。
価格安定に向けた今後の課題
今のところ、プロジェクトは順調に進んでおり、課題が表面化しているわけではありません。
ただし、初期投資をして参入しているユーザーが少なからず存在することや、有名になればなるだけ投機勢も参入しうるため、彼らが「NFTを持ち続けた方が得」と思える状況を作り続けることができるかが、今後のプロジェクト拡大の重要なポイントとなるでしょう。
まとめ
DigiDaigakuは、ゲームがまだ出来上がっておらず、現時点ではコレクティブルNFTに近い形になっていますが、運営陣の実績や、ホルダーへのNFT追加エアドロップなど「持ち続けていた方が得」という構造から、ホルダーの多くが長期保有する傾向が見られます。
また、大型投資家の参入も目立たず、1人の投資判断で大きく値崩れする危険性も比較的少ないように思えます。
加えて、プロジェクトの全容は明かされていないものの、web3ゲームに特化した技術開発を精力的に進めており、将来の展開に期待感も持てます。
一方で、Free to Ownの「無料で配布したNFTを保持し続けてもらう」という方針は実際のところうまくいっておらず、ほとんどのNFTが一度は売りに出されている状態です。
多くのユーザーが2次流通価格での初期投資を行って参入しており、「Free to Ownだからうまくいく」というわけでは決してないようです。
トークンを発行していないため、他のWeb3ゲームほど早く値崩れすることはないと思われますが、他社とのコラボレーションなどを含めた魅力的なビジネス構築が重要になりそうなので、今後も注目して追っていくべきプロジェクトです。