
ほとんどのWeb3プロジェクトにおいて、Discordは当たり前に取り入れられているツールです。
いまでは、Discordを運営していないプロジェクトの方が珍しくなっています。
しかし、こんなことを思った(あるいは聞かれた)ことはないでしょうか?
『Discordって本当にやる意味あるの?売上に関係なくない?』
改めて思うと「Discordってなんでやるんだろう?」と不思議に思ったことはないでしょうか?
結論からいうと、Discordは「売上に直結するように作らないと、売上に直結しません」。
当たり前のことを言っているようですが、実は「何のKPIを達成するためのDiscordなのか?」を定義しないまま、なんとなくDiscord運営を行なっているコミュニティも多いのが実情です。
そこで本記事ではDiscord運営におけるKPI設定の考え方を、
- どのようにKPIを設計すればよいか
- どの分析ツールを選ぶのが良いか
- 分析ツールをどのように使うのが得策か
といった実践的な内容を含めて解説していきます。
本記事の使い方
本記事は、「Discordをこれから本格的に運用したいプロジェクト」「Discordの運用面でお困りのプロジェクト」のDiscord担当者やコミュニティマネージャーを対象にしています。
KPI設定の考え方や、おすすめの分析ツールを記載しておりますので、自社のDiscord運用・分析方法にお役立てください。
※「そもそも、Discordがどういうツールか」から理解したい方は、『誰も教えてくれないDiscordコミュニティの設計書』の記事をご参照ください。
目次
Discordを戦略的に設計するために必要なこと

前述の通り、Discord運営を惰性で行なっていても、プロジェクトの売り上げにはつながりません。
自分たちの達成したいKPIに向かって、Discordというツールをどのように使いこなすのか、の戦略を持つことが大切です。
Discord戦略におけるKPI設定方法の一例
例えばあるプロジェクトが、「オープンβに、DAU10,000人を達成する」というKPIを設定したとします。
その前には、「クローズドβで、DAU5000人」「NFTセールを1,000体完売する」「NFTのフロプライスを1.0ETHにする」といったマイルストーンも置かれています。
この目標を達成するためには、
- Discordに参加している人が何人か?
- そのうち何人がアクティブであるべきか?
といった一般的な指標を追うだけでは関連性が曖昧すぎますよね。
より定量的に
- ウォレットにいくら以上の資産が入っているのか?
- どんなNFTプロジェクトを好んで買っているのか?
といったターゲット属性を明確にしたり、そもそも売上やDAU数増加につながる「アクティブ率」を設定できているのか?を熟考したりする必要があります。
日進月歩で進化する分析ツールのトレンドを追う
「Discordに入ってきたユーザーのウォレットにいくら入っているのかなんて、計測できるの?」と思った方もいらっしゃるでしょう。
Web3における分析ツールは、日進月歩でどんどん進化してきており、Discord・Twitter・テレグラムのアカウント情報とウォレット情報を紐づけて、精緻にコミュニティの分析ができるサービスの開発が進んでいます。
これらの具体的なツールの活用方法は記事の後半に譲りますが、Discordを戦略的に使いこなすには、これらの最新ツールで何ができるのかを、コミュニティ担当者が細かく把握する必要があるのです。
仮説を立てて検証する姿勢が求められる
分析ツールの開発が進んでいる一方で、Web3コミュニティの分析ロジックは、まだ確立されたものがありません。
既存のソシャゲのように、「YouTube上でコアユーザー向けのイベントを行なった」あとに、すぐに売り上げに跳ね返ってくるといったことが起こりません。
トークンやNFTの買い圧が、仮想通貨市場のモメンタムに左右されたり、外部経済と接続している分、あらゆる変数が複雑に絡み合っているため、「こうすれば、こうなる」という単純明快なロジックを作りにくい側面があります。
そのため、Web3コミュニティ分析においては、
- このプロジェクトは、ユーザーの課金動機がここにあるから
- その課金動機を促すためには、Discord内でこのようなUXを提供して
- そこでのエンゲージメント(発言数やリアクション数、ロール獲得)が高くなれば
- 課金に繋がるはずである
といった「プロジェクトに適した仮説を立てる力」が求められます。
これを定量的に定義して、実際に施策を回しながら、立てた仮説が正しかったのかの検証を行なっていくことで、「Discordって本当に売上に直結するの?」という質問に答えることができるようになります。
Discordを定量的に分析することで正確になること

Discord分析の重要性は、曖昧な言葉である「コミュニティの熱量」「コミュニティへの貢献者」を定量的に定義できるところにあります。
Discordコミュニティの熱量が高いことは、それだけコアなファンが多いということでもあり、トークンやNFTの握力につながっていき、プロジェクトの安定的に成長させます。
しかし、この「熱量」という言葉はとても抽象的です。
この「熱量」を上げるために、多くのプロジェクトでは、発言数に応じたレベリングを行い、一定のレベルに上がった人にはロールを付与する、といったUXが設定されています。
ただ発言「数」ばかりがユーザーにフォーカスされてしまい、「おはよう」「gm」(Good Morning)というメッセージばかりが繰り返される、という本末転倒な結果になっています。
「コミュニティの熱量」を具体的に定義できる
この問題を解決するために、一部のツールでは「何文字以上のメッセージのみ、レベリングの対象とする」といった、文字数で縛りをつくる事例が見られます。
ただし、これだけでは「熱量が高い」ユーザーの発言かどうかはわかりません。
そこで、一定のタスクをクリアした人にロールを付与し、ロールを付与された人がどれだけの頻度で、どのチャンネルで発信しているのか、を見るといったより1段階、2段階掘り下げた定義が必要です。
また、Discordで発言していない人でも、ゲーム内ではアクティブである、Twitterスペースにはよく参加している、という人もいるでしょう。
そういう時は、コミュニティ分析ツールとゲームAPIを接続したり、POAPと呼ばれる参加証明ができるNFTを活用して、コミュニティイベントへの参加率を測定するといったことを組み合わせると、より精緻に「コミュニティの熱量」を定量化できます。
貢献者評価の重要性
貢献者を正しく評価することも、プロジェクトの成長に繋がります。
貢献者とは、具体的には以下のような人です。
- Discord内で積極的に発言をして盛り上げてくれる人
- 新規メンバーへの質問に頻繁に回答している人
- AMAの翻訳など多言語化に貢献している人
- 積極的にバグ報告を行う人
彼らに対して、
- NFT付与 / 当選確率UP
- Discordロール付与
など、貢献に見合った評価をすることで、エンゲージメントが高まり、さらにコミュニティに貢献してくれるようになるため、必然的にプロジェクトの成長に繋がります。
このために、Discord分析をしっかり行い、貢献者に適正なGiveを行うことが重要です。
Discordで取るべきKPI指標

ここからKPI指標について解説していきます。
LGGでは下記の4つをDiscord運用における主要なKPIと定義しています。
★Discord運営で重視すべきKPI
①新規メンバー数
一定期間におけるDiscordサーバーへの新規参加者数。
プロジェクトの基盤となる新規流入を示します。
②再訪率
「再来訪メンバー数÷新規メンバー数」で算出される指標。
オンボーディングの成否に関する指標です。
③継続率
「継続メンバー数÷Discordメンバー数」で算出される指標。
メンバーが何度も繰り返しDiscordを利用しているか、を示します。
④活動率
「アクティブメンバー数÷Discordメンバー数」で算出される指標。
Discordがどれだけ活発に動いているか、を示します。
これら4つのKPIを同時に意識しつつ、フェーズに合わせて重要度に強弱をつけて運用しています。

実際のDiscord運営では、フェーズが明確に区切れなかったり、フェーズの順番が入れ替わったりすることもありますが、概ね上図のような流れで進みます。
その上で、ここから各フェーズとKPIの詳細を解説します。
DiscordのKPI設定の考え方
フェーズ1:新規メンバー獲得
プロジェクトの初期フェーズに当たり、「いかに多くの人の興味関心を惹くことができるか」が焦点となります。
ここで沢山の人をDiscordに取り込められるほど、プロジェクトが大きくなるため、「新規メンバー数」がKPIとして重要です。
新規メンバー数とは?
一定期間におけるDiscordサーバーへの新規メンバー参加数。
単に増加数をカウントするだけでなく、「運営による流入か、メンバー招待による流入か」なども分析をする必要があります。
新規メンバー数増加を目的とした施策が、Giveawayや、各メディアでのVCの告知宣伝等です。
そのため、このフェーズでは「Giveaway参加人数」「VC参加人数」なども見ていく必要があります。
※Giveaway施策のやり方については、『誰も教えてくれないDiscordコミュニティの設計書』の「Discordを運営する上で押さえておくべき基本設計」をご参照ください。
※また、AMAのやり方については『ここで差がつく!成功するAMAと失敗するAMAの5W1H』の記事に詳しいので、こちらもご参照ください。