
Faralandは、ユーザーがNFTのキャラクターを用いて戦闘を行うターン制ストラテジーRPGです。
このゲームはユーザーに『稼ぐ』という体験よりも『面白さ』を提供することを大事にしています。
そのために、ユーザーへのトークンの消費を促す設計がとても多く、反対にトークンの供給は非常に少ないシステムとなっています。
また、トークン保持者に他社のプロジェクトのIDO参加権を与える『FaraStarter』というローンチパッドをゲーム外に用意し、経済圏の安定化を図ろうとしています。
しかしながら運営の目的である『面白さ』を提供するという点と、ローンチパッドが実際にエコシステムにとって効果があるかという点では、疑問が残ります。
本調査レポートでは上記の点について、ゲームの内容とゲーム内外でのトークノミクス分析を行い、Faralandの将来性について考察していきます。
開発者視点での学びPOINT
・タクティカルRPG・ストラテジーPRGには、戦略性やゲームとしての面白さが必須
・ガバナンストークンのユーティリティにIDO参加権を付与する取り組みの是非
ユーザー視点での学びPOINT
・ゲームのIDOに早期にリーチできてもそれで収益が出るかは、そのゲームの面白さだけではなく、経済圏全体の取引量やユーザー数によっても左右される
目次
プロジェクト概要
FaralandはNFTキャラ3体を使用したターン制ストラテジーRPGです。
プレイヤーが新規で始めるにはまずマーケットプレイスにてNFTヒーローを購入する必要があります。
このNFTヒーローは20,000体限定となっており、総量が決まっているため価格の下落を防ぐ一因となっています。
また、すべてのヒーローはスマートコントラクトにより生成され、一つとして同じ顔のキャラはいない仕様となっています。
さらに、ヒーローには好きなNFT装備を着せ替えることができるので、自分だけのオリジナルキャラを作ることが可能です。

これは、プレイヤーにキャラに対しての愛着を持たせることを目的としており、いずれ予定している土地システムの実装と併せて、バトル以外の楽しみを提供してプレイヤーを長く引き留めておくための施策です。
NFTヒーローが高くて購入できない人は、デミヒーローを低価格で購入することも可能です。
しかしこのデミヒーローはゲーム内アイテムのソウルストーンを供給し続けないと、消滅してしまう仕様となっています。
バトルについてはワールドマップを利用するPvEと、アリーナを利用するPvPの2種類のプレイが可能です。

PvEでは主にGold(ゲーム内通貨)やソウルストーン(装備の強化やデミヒーローに使用)を入手できます。
PvPでは主にFARA(トークン)を入手することができます。
ロードマップ

2022 Q1
- PvPモード(公式)
- ゲーム内ショップ
- アドベンチャーミッション
- ソウルストーンを使用した部位アップグレード
- ギルド募集
- スキルシステム解放
- 新ステーキングシステム
2022 Q2
- スキルシステムのアップグレード
- NFT以外のシステム
- ギルド活動
- 装備製作
2022 Q3
- ゲーム内ガチャ(NFT以外)
- ペットシステム解放
- パートナーポータルクエスト
2022 Q4
- ペットブリーディング解放
- ギルド間戦争
- ジョブシステム
- 土地システム
運営
Faralandの運営はベトナムに本拠地を置く「Moon Knight Labs」(2020年9月に設立)です。
5年以上ブロックチェーンに取り組んできたシニア開発者、アーティスト、オーガナイザーからなるグループで、CEOのHungとNgyuenは、Web3ゲーム開発の分野で10年間ソフトウェアエンジニアとして働いていた経験があります。
運営は日本のゲームを非常に敬愛しており、中でも『ファイナルファンタジータクティクス』は、自分達が目標とするゲームであると公言しています。
VC、投資家

Faralandは上図のように、さまざまなブロックチェーン企業とパートナー体制を築いており、2021年5月に行われたシードラウンドでは、$240万(約3.5億円)の資金調達を行いました。
トークン情報
$FARA

- 発行上限:100,000,000
- 時価総額:$1,429,842(¥201,732,423)
- 価格:$0.05519(¥7.67)(9/5時点)
- 上場取引所:
- DEX・・・PancakeSwap、Biswap
- CEX・・・Lbank、MEXC、Decoin、XT.COM
- 種類:ユーティリティ/ガバナンス
- 獲得方法:PvPで勝利、デミヒーロー・装備・素材・スキルブック・ソウルストーンの売却
チャート
現在のトークン価格は¥7.67(9/5時点)となっており、MVB(The Most Valuable Builder:Binanceが選ぶセキュリティ面、取引量など将来有望であると判断した銘柄)にTOP10入りし、最高値を記録した2021年7月の値(¥615.65)から80分の1程度の値まで下落しています。

ユーティリティの整理
- ゲーム内消費
- デミヒーローの召喚および延命
- ガチャ
- 装備品の制作およびアップグレード
- マーケットプレイスでのデミヒーロー、装備、各種素材の購入
- ステーキング
- $FARAのステーキングにより、NFTヒーローの経験値およびトークン、アイテムを報酬として受け取る
- FaraStarterが精査したWeb3ゲームのIDOへの参加資格を得る
- ガバナンス
- トークンの保持とステーキング、NFTの保持数により投票ポイントを算出し、10万ポイント以上のユーザーのみ運営に提案することが可能
- 計算式=$FARA保有残高+$FARAステーキング残高+NFTヒーロー数×100
ユーザーと運営の収益ポイント
ユーザーの収益ポイント
ユーザーの稼ぎ方は以下の通りです。
・NFTヒーローの売却(BNB入手)
・デミヒーロー、ソウルストーン、装備、スキルブック、素材の売却(FARA入手)
・PvPランキング報酬(FARA入手)
・トークンステーキング報酬(FARA入手)
・FaraStarterによる他社プロジェクトへのIDO参加(ゲーム外収益)
NFTヒーローの売却

マーケットプレイスでNFTヒーローを売却し、BNBを入手できます。
価格は出品者が設定しますが、購入者のオファーにより双方合意が取れれば価格の変更が可能です。
デミヒーロー、ソウルストーン、装備、スキルブック、素材の売却

マーケットプレイスでデミヒーローおよび各種アイテムを売却し、FARAを入手できます。
NFTヒーローと同様、購入者のオファーにより双方合意のもと、価格の変更が可能です。
PvPランキング報酬
1週間を1シーズンとして開催されるPvPにおけるランキング報酬として入手することができます。
順位 | 獲得FARA | 獲得ソウルストーン | 順位 | 獲得FARA | 獲得ソウルストーン |
---|---|---|---|---|---|
1 | 2250 | 1000 | 14 | 300 | 100 |
2 | 1750 | 600 | 15 | 280 | 90 |
3 | 1400 | 480 | 16 | 260 | 80 |
4 | 1150 | 380 | 17 | 240 | 70 |
5 | 1000 | 300 | 18 | 220 | 60 |
6 | 900 | 250 | 19 | 200 | 50 |
7 | 800 | 220 | 20 | 180 | 40 |
8 | 650 | 190 | 21~30 | 145 | 30 |
9 | 500 | 170 | 31~50 | 115 | 20 |
10 | 450 | 150 | 51~100 | 65 | 0 |
11 | 360 | 130 | 101~200 | 35 | 0 |
12 | 340 | 120 | 201~300 | 25 | 0 |
13 | 320 | 110 |
トークンステーキング報酬
ユーザーはトークンをステーキングすることにより、報酬としてFARAを入手できます。
FaraStarterによる他社プロジェクトへのIDO参加
ゲーム外収益ポイントとして、他プロジェクトIDOへの参加が可能です。
後述する「Faraland独自のエコシステム」で詳しく説明します。
運営の収益ポイント
運営のキャッシュポイントは以下の通りです。
・NFTヒーロー販売(一次流通)
・ガチャ販売(一時流通)
・マーケットプレイス取引手数料(二次流通)
NFTヒーロー取引手数料:0.22
その他のアイテム取引手数料:5%
トークノミクスの分析・考察
トークノミクス全体像

NFTヒーローの所持を前提としたPlay to Earn
ユーザーは初めにNFTヒーロー3体をマーケットプレイスで購入する必要があります。
NFTヒーローは0.1BNB~200BNB程度で取引されており、ステータスの高いキャラクターほど高値で販売されています。NFTの価値を高めるために、取引額の2%がヒーローのフロアプライスに加算されます。
NFTヒーローの代わりにデミヒーローを入手することも可能です。こちらはマーケットプレイスでの取引や召喚でソウルストーンとFARAを消費して獲得できます。
デミヒーローはNFTヒーローと同じ装備とスキルを使用できるため、NFTの代用として使用できます。
無限に生成可能ですがそのままでは7日間で消滅します。生存させるためにはソウルストーンが必要であり、かつ日数が増えるごとにソウルストーンの消費が増えて行くため、いずれは維持できなくなる仕様です。
ゆえに最終的にはどのユーザーもNFTヒーローを所持する設計となっており、ゲームを始めるにあたって初期投資が必要となっています。
ヒーローの強化
ヒーローはレベルアップと装備によりステータスが上昇します。
キャラクターのレベルにより装備できる武器や防具が決まっているため、より多くの武器・防具を装備するためにはキャラクターのレベルアップは不可欠です。
レベルアップ方法は2種類あり、PvEで戦闘を行いEXPを取得する方法と、FARAのステーキングによりEXPを取得する方法です。
獲得EXPはステーキングの方が多く設定されており、加えてホルダーにはトークンと装備報酬が与えられるため、ユーザーはステーキングによりキャラを成長させる手段を取ります。これによりFARAの流動性が確保される仕組みです。
装備とスキルの入手
装備とスキルはガチャで入手することが可能で、そのためにFARAを消費します。
装備についてはガチャの他に自分で制作することができ、PvEで入手する素材とFARAを使用します。
装備はさらにアップグレードが可能となっており、現状の装備とソウルストーンとFARAが必要となります。
PvEやPvPで勝利するためには強化はほぼ必須となっているため、ユーザーのトークン消費を半強制的に促す設計となっています。
トークンバーン
トークンの総消費量を減らし、価格を維持するために毎月12日にトークン・バーンが行われます。
Burn量はガチャやマーケットで得られたFARAトークンのうち、5%が対象となります。
スカラーシップ制度
Faralandはユーザーが無料でプレイし、利益を得られることを目的としてスカラーシップ制度を開始しました。
MetaGaming Guild、Good Games Guild、Avisa Games Guildなど複数のゲームギルドと提携しています。
Faraland独自のエコシステム

Faralandは他のWeb3ゲームと違い独自のエコシステムを作り出しています。それが、『FaraStarter』(ローンチパッドシステム)です。
FARAトークンをステーキングしているホルダーは、運営が支援および提携している他社Web3ゲームプロジェクトの、早期トークンセールラウンドに参加できる資格を得ることができます。
FaraStarterが提供するBCGは、技術面・グラフィック要素・戦略的ビジョン・創立チームの要素について精査し、優良だと判断されたプロジェクトに限ります。
これによりユーザーはゲーム外で資産を増やすチャンスを得ることができるため、長くトークンをステーキングしてもらい、経済圏を維持していくことが狙いです。