
「自社のWeb3プロジェクトで、時価総額1000億円を目指す!」
Web3界隈では、こんな夢のある会話があちこちでなされていると思います。
しかし、トークンの時価総額をどう考えて設定すればいいか、イメージを持てない方も多いのではないでしょうか。
株式会社の考えを踏襲できない部分も多く、かつプロジェクトの盛衰が非常に激しい世界のため、どのプロジェクトのどの時点を参考とすればいいのかも定かではありません。
そんな中でも、各プロジェクトが上場時にどのくらいの時価総額を考えていたか、は参考にできる部分が大いにあります。
本記事では、以下の順で時価総額について解説していきます。
- トークン時価総額の基本
- LGGが独自に抽出したGameFiの主要50タイトルの上場時データを分析・考察
- 上場時の時価総額の考え方や、上場後の時価総額を上げる施策について
本記事の使い方
本記事は、「トークン時価総額について悩んでいる開発責任者や資金調達担当者」を主な対象にトークン時価総額の考え方について解説しています。
時価総額の設定やトークン上場を考えるときにご参考にしていただければと思います。
また、トークンアロケーションの考え方や時価総額を上げる考え方についても触れています、関連記事と併せてご覧ください。
※本記事はNFA(Not Financial Advise)・NLA(Not Legal Advise)です。トークン設計・アロケーションに関しては専門家とよく相談の上、決定してください。
※本記事でのトークンの上場とはガバナンストークンの上場を指します。
目次
各種用語の解説
本題に入る前に、本記事でよく登場する用語についておさえておきます。
ICO
Initial Coin Offeringの略で、トークンを新規発行して広く資金調達を行なうこと。
IEO
Initial Exchange Offeringの略で、仮想通貨発行体が仮想通貨取引所を介してトークンを上場させて資金調達を行なうこと。
ICOは手軽さが利点だったが、審査する役割がおらず詐欺が横行したため、より信頼度の高い方法として登場した。
IDO
Initial DEX Offeringの略で、仮想通貨発行体がDEXを介してトークンを発行して資金調達を行なうこと。
IEOは信頼性が高い代わりに審査が厳しいため、より手軽な方法として2020年以降急増した。
パブリックセール
トークンを一般向けに広く売却活動を行なうこと。
ICO、IEO、IDOはパブリックセールの一種と言うことができる。
プライベートセール
VCや機関投資家向けにトークンを売却して資金調達を行なうこと。
パブリックセールに先んじて行なわれ価格も安いが、一般人が参加するのは難しい。
プライベートセールとパブリックセールの間に、一般人向けにプレセールを行なう場合もある。
トークンセール
パブリックセールやプライベートセールおよびプレセールの総称。
トークンと株式の考え方の違い

株式会社創業時、競合企業の時価総額や市場規模、市場の将来性に基づいて時価総額を目標設定することが多いでしょう。
あるいは、東証プライム上場の条件である「250億円」を目標として設定される場合もあるかもしれません。
では、トークン時価総額を目標設定する場合はどのように考えればいいでしょうか?
Web3世界は、市場規模も将来性も未知数の部分が多く、現時点でこれらを数値化することは難しいのが現状です。
また、証券会社や金融機関のようにアドバイスしてくれる存在もいないため、自力で設定する必要があります。
この時に類似プロジェクトを参考に時価総額を設定する、という方が多いのではないでしょうか。
例えば、Move To Earnプロジェクトを開発しようと思っている場合はSTEPNの時価総額を参考にする、などです。
実はこのやり方には限界があるのですが、その解説に移る前にトークンの世界で出てくる以下2種類の時価総額について解説します。
- 一般的な時価総額
- 完全希薄化後時価総額(FDV)
トークンの世界でよく出てくるFDVとは?

FDVは「(現在の)トークン価格×総供給量」で表され「発行上限枚数のトークンが市場に全て流通したと仮定した場合の時価総額」と説明でき、トークンの世界ではよく出てきます。
株式の世界でも株式の希薄化(増資や新株予約権など)という概念はあります。
ただ、トークンの方が、
- 日々生成され続ける
- 一定期間後にロックアップが外れる
等でトークンの供給量が増える未来が確定的であり、かつその増加量も予想できることから、株式よりも希薄化後時価総額を考える必然性が高いと言えます。
FDVは参考にできるのか?
Web3プロジェクト事業者側から見ると、創業時に「時価総額を●●円を目指す!」と設定した場合の時価総額はこのFDVの方が近いと言えるでしょう。
トークンが全て発行された後の最終的な時価総額と言えるからです。
投資家の立場ではプロジェクトの将来的な成長を測るための指標として使われます。
では、自分たちが開発しようとしているプロジェクトと類似のFDVを見れば目標とすべき時価総額が定まるのでしょうか。
残念ながら、そうとも言い切れません。
なぜなら、トークンは価格変動が大きいため、その分FDVの変動も激しく、どの時点のFDVが適正化を判断することは誰にもできないからです。
STEPNの事例
STEPNのガバナンストークン$GMTを例に考えてみます。
STEPNのFDVは、$GMTが最高値$4.11を記録した2022年4月28日に$24,660,000,000(246.6億ドル、当時の為替レートで約3.2兆円)にまで達しました。
しかし、その後$GMT価格は下落し、記事執筆時点(2023年1月13日)でのFDVは$1,796,000,000(約2,300億円)と最盛期の7%程度にまで激減しています。

こちらも変動が激しいことが分かります。
どちらの時価総額をSTEPNの参考事例として扱うかは、意見の分かれるところであり、客観的に結論付けることは不可能です。
つまり、FDVはトークン価格と同様非常に変動が大きく、市況など多様な要因が関係するため、どのプロジェクトのどの時点のFDVを参考にすべきかは、非常に難しいのです。
ですが、上場時点でのFDVはある程度の傾向があり、各プロジェクトが自身のFDVを当時どのように考えていたかを評価している指標でもあるため、参考にできる部分は大きいです。
以下の章で上場時の各GameFiプロジェクトのFDVの考え方とセール価格の設定を分析していきます。
GameFi銘柄Top50に見るトークン上場時の考え方

ここまで前置きが長くなりましたが、本題である上場時のFDV設定の考え方に入っていきます。
LGGは独自にGameFi主要50銘柄※について、以下の項目を抽出し分析を行ないました。
- ゲームジャンル
- 上場日
- ICO/IEO/IDOの別
- 上場セール価格
- 上場セール枚数
- 調達額
- トークンの最大供給量
- セール枚数が最大供給量に占める割合
- 上場時点のFDV
これらを分析して見えてきたことを以下から考察していきます。