
Golden Brosは、3vs3で戦うリアルタイムバトルロイヤルゲームです。
モバイルゲームパブリッシャーとして世界的に有名なnetmarble社が、2年かけて開発したAAAクオリティのタイトルということで、ローンチ前から注目を集めていました。
ゲームとしても「面白い」という評価が多く、トークノミクスとしてもNFTに使用回数制限を設けていたことから、今後のWeb3ゲーム開発の参考になりうるタイトルとして、調査を行いました。
ところが、2022年9月現在、Golden Brosのコミュニティは荒れ、ユーザーが新規参入を警告するまでの事態になっています。
このようになってしまった背景には、運営が事前に公表していたROIと実際のROIが大きく乖離していたことから始まり、ユーザーが納得いく形での運営や開発ができず、ユーザー心理が大きく離れてしまった(あるいは反感を買ってしまった)という事情がありました。
この一件は、ユーザーに受け入れられるWeb3ゲーム開発・運営をするうえで、非常に示唆に富むものであり、また、ユーザーからしても、プレイするゲームを選ぶうえでの学びを与えてくれるものでした。
そこで、本レポートではGolden Brosのトークノミクス・マーケティング・運営に着目し、それぞれがどうなっていて、どうするべきだったのかについて考察していきます。
開発者視点での学びPOINT
・NFTに使用制限回数を設けるとROIに対する評価が厳しくなる
・サイレントでの仕様変更は、深刻なユーザー離れを引き起こす
ユーザー視点での学びPOINT
・ゲームとして楽しくても、Web3ゲームとして成功するわけではない
・(現時点では)Web2ゲームで成功した会社が必ずしもWeb3ゲームで成功するわけではない
目次
プロジェクト概要
ゲーム概要
Golden Brosは、3vs3で戦うリアルタイムバトルロイヤルゲームです。
様々なモードがあるものの、メインとなるのはPvPであり、ユーザーはPvPでの勝利あるいは上位ランカーになることを目的として、自身のキャラクター(Bros)とプレイヤースキルを強化します。
Free to Playのゲームではありますが、報酬としてトークンを得るには、コスチューム(NFT)を装備したうえで、PvPに勝利する必要があります。
ロードマップ
出資者・パートナー
運営会社
netmarble F&C
App Annieが主催する『トップパブリッシャーアワード』の「2021年のトップパブリッシャー52社」部門にて8位にランクインしている、韓国発の大手モバイルゲームパブリッシャー。
「七つの大罪 〜光と闇の交差〜」などのヒットWeb2ゲームを手掛けつつ、「二ノ国 〜Cross World〜」といったWeb3ゲームの開発実績もあります。
トークン及びゲーム内通貨情報
RedGaget(ゲーム内通貨)

- トークン名 :RedGaget
- 種類 :ゲーム内通貨(トークンではありません)
- 獲得方法 :クリプトバトルで勝利 or 敗北
- 使用ポイント:
- コスチュームのリチャージ
- ゲーム内アイテム(ランダムボックス・ゴールド・アクションパーツ)の購入
- Brosコードのバージョンアップ(能力強化)
- 装備選択チェストミッションの更新
- $GBCにスワップ(2日1回、上限300 RedGaget)
$GBC(ユーティリティ)

- 発行上限 :100,000,000
- 時価総額 :-
- 価格 : $0.14(¥19.68)9/4時点
- 上場取引所 :
- DEX・・・CUBE
- 種類 :ユーティリティ
- 獲得方法 :RedGagetと 1 : 1でスワップ
- ホルダー数 :-
- 使用ポイント:
- DEXでトレード
- $ITEMU CUBEにスワップ
- RedGagetにスワップ
- トークンアロケーション
- ゲーム報酬:50%
- エコシステム:20%
- マーケティング:15%
- チーム:10%
- セール:5%

$GBCは現在、$ITAM CUBEとのみスワップできるため、$ITAM CUBEとの交換比率を出しています。
最初は$1で設計されていた$GBCですが、9/4時点で$0.14にまで下がっており、利確に回される量が多くなっていることが示唆されます。
$ITEM CUBE(ガバナンス)

- 発行上限 :10,000,000,000
- 時価総額 :$73,885,858(¥10,359,609,995)
- 価格 :$0.1229(¥17.27)9/4時点
- 上場取引所 :
- DEX・・・Pancake、Gate.io
- CEX・・・Coinone、KuCoin、MEXC、LATOKEN
- 種類 :ガバナンス
- 獲得方法 :$GBCをスワップ
- ホルダー数 :
- ERC-20(Ethalium)・・・349
- BEP-20(BNB)・・・9,846
- 使用ポイント:
- DEX・CEXでトレード
- $GBCにスワップ
- コスチューム(NFT)の購入
- コレクションカード(NFT)の購入
- トークンアロケーション
- エコシステム 50%
- エコシステムグロースファンド 20%
- ユーザーグロースファンド 11%
- プラットフォームグロースファンド 10%
- チーム 3%
- 循環供給6%

$ITAM CUBEの価格は、4月後半を境に、株式市場の冷え込み→Terraショックの影響を順に受け下落。
さらに、7/28のグランドローンチで$GBCとスワップできるようになって以降、さらにインフレしました。
ユーザーと運営の収益ポイント
Play to Earnの流れ(ユーザーの収益ポイント)
Golden Brosでは、ゲーム内通貨であるRedGagetを$GBCにスワップし、さらにCUBE DEXで$GBCを$ITEM CUBEにスワップし、$ITEM CUBEを換金することでPlay to Earnを実現させています。
そのため、本レポートでは、RedGagetの獲得ポイントを、収益ポイントとみなします。

RedGagetはキャンペーン等で手に入ることもありますが、基本的にはPvPに勝利することで手に入ります。
RedGagetの獲得量は勝敗、コスチュームのランク、コレクションカードのランク、リーグボーナスによって変化し、以下の式によって計算されます。
PvPによるRed Gaget獲得量計算式
▼PvPに勝利した場合
Red Gaget獲得量=リーグボーナス×(コスチュームボーナス+コレクションカードボーナス)
▼PvPに敗北した場合
0.1 Red Gaget(固定)
※NFTコスチュームを装備していないとRed Gagetは獲得できません
例えば、リーグレベルがシルバー1、コスチュームグレードがR、コレクションカードグレードがRの場合、1回の戦闘で勝利した場合に得られるRed Gaget獲得量は、以下のようになります。
0.15 ×(3.00 + 2.74)= 0.861 Red Gaget
※リーグボーナス、コスチュームボーナス、コレクションカードボーナスは、以下の通りです。
リーグボーナス
リーグランク | ボーナス |
---|---|
アイロン | 0.05 |
ブロンズ1 | 0.1 |
ブロンズ2 | 0.1 |
シルバー1 | 0.15 |
シルバー2 | 0.15 |
シルバー3 | 0.15 |
ゴールド1 | 0.24 |
ゴールド2 | 0.25 |
ゴールド3 | 0.26 |
ゴールド4 | 0.27 |
ダイアモンド1 | 0.36 |
ダイアモンド2 | 0.37 |
ダイアモンド3 | 0.38 |
ダイアモンド4 | 0.5 |
コスチュームボーナス
コスチュームグレード | ボーナス |
---|---|
N | 0.45 |
R | 3.00 |
SR | 4.33 |
コレクションカードボーナス
コレクションカードグレード | カードタイプ | ボーナス |
---|---|---|
R | Common | 2.74 |
SR | Common | 6.5 |
SSR | Common | 16.9 |
SSR | Limited | 17 |
運営の収益ポイント
運営の収益ポイント
・DEXのスワップ手数料(0.5%)
・NFTの取引手数料(7%)
・ミステリーボックスの売上
・ストアでのジェムの売上
運営の収益ポイントは上記の4つですが、ジェムの購入については、ジェムの価格とゲーム内での利用頻度が高くないことから、それ以外の3つが主な収益源になると考えられます。
トークノミクス分析
Golden Brosに関わるトークン($GBC・$ITAM CUBE)は、インフレが続いています。
この背景にあるのは、トークノミクス設計よりもユーザー心理が離れたことによる影響が大きいと考えていますが(後述)、本章では、そもそもトークノミクスが、安定的に拡大しうる設計になっていたのかという観点で、考察をします。
トークノミクス全体像

Golden Brosのトークノミクスは、PvPを中心に形成されており、以下の要素が、インフレとデフレに関与します。