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【歴史に学べ!】Web3ゲームの発展と失敗の変遷総まとめ

Web3ゲームのトークノミクスは、永続性のある「黄金のワンパターン」が見つかっておらず、日々様々なプロジェクトが試行錯誤を繰り返しています。

そのため、実際にWeb3プロジェクトを開発する際は、トークノミクス設計事例を一通り調べて参考にするところからスタートします。

しかし、過去の事例を探索し、客観的かつ網羅的に分析することは容易ではありません。

そこで本記事は、Web3ゲーム誕生以来の歴史全体を押さえつつ、各事例の詳細も盛り込む形にまとめました。

この記事で、Web3ゲーム開発時の最低限の知識とノウハウを獲得することができます。

本記事の構成および使い方

本記事は前段は「トークノミクスの変遷」、後段は「トークノミクス以外の戦略」の二段で構成されています。

また、トークノミクス設計時の参考になるよう、ケーススタディとして多くのゲームを事例をご紹介いたします。

そのため、チームや社内でトークノミクス設計を議論する際の、参考資料としてもご活用いただけます。

ただし文量が多いため、一度に全て読んで理解いただく必要はありません。

「今日はこの章」「明日はこの章」と分けて読み進めながら、少しずつでも理解を深めていただければと思います。

はじめに

全体像の説明に移る前に、本記事の用語について整理します。

「ゲームをプレイすることでNFTやFTを得られるゲーム」は、NFTゲーム、GameFi、Play To Earnなど色んな名称がつけられていますが、本記事では、下図のように定義します。

本記事ではWeb3ゲームおよびGameFiを最も広義の意味として定義します。

その中でも、NFTのみを発行するゲームを「NFTゲーム」、プレイをすることで稼げるゲームを「Play To Earn」、という形で整理します。

Web3ゲームの歴史の全体像

Web3ゲームの変遷を俯瞰的に捉えるために、CryptoKitties誕生(2017年)から現在までの歴史を図解したものが下の二図です。

ゲーム事例の数字を振っているものは以下本記事内で紹介するタイトルです。

こちらの二つの図は、初見で完璧に理解できる必要はありません。

本記事を最後まで読み進めていただくと、上図の「流れ」とゲームごとの「繋がり」がはっきり見えてきます。

前半で「トークノミクス」という軸から歴史を紐解いていきます(1枚目の縦長の図)。

その後、後半部分でトークノミクス面以外の戦略(2枚目の図)を解説していきます。

トークノミクスの変遷① ~黎明期・中央集権的な運用~

本章では、NFTゲームやPlay To Earnの登場期(2017年~2020年頃)の歴史を解説していきます。

本章は全体像のうち上図部分を解説していきます

この章では、NFTゲームの登場から、Play to Earnの登場によって起こったことをまとめていきます。

この章で参考になるのは以下の点です。

この章で取り上げるゲーム事例のハイライト

・Sorareのように、独自のトークンを出さずに、NFTの売り上げから買ったETHで、プレイ報酬を払うようにすると、原資がNFTの売り上げなので、経済圏が崩壊しない

JobTribesをはじめとした、DEA社のPlayMining経済圏は、シングルトークン($DEP)で運用されており、経済圏のバランスを見ながら、運営が中央集権的に報酬の吐き出し量を調整している。

・Splinterlandsは、ソフトペッグ制でトークン価格を安定させようとしたが、正確には機能していない。

・My Crypto Heroesがガバナンストークン($MCHC)を発行したが、ガバナンス以外のユーティリティがなかったため、買い圧を維持できなかった。

NFTゲームの登場

世界初のWeb3ゲームは、2017年11月に登場した「CryptoKitties」だと言われています。

ブロックチェーン技術によってNFTが登場したのは2014年頃でしたが、これをゲームに応用させたのがCryptoKittiesでした。

猫NFTを育成したり交配させたりするゲームですが、ユーザーの心を掴んだのは猫NFTが高値で売買されたという点であり、「どうやったら猫NFTを高く売却できるか」にユーザーは熱狂しました。

そしてCryptoKittiesを皮切りに、様々なWeb3ゲームが誕生し始めたのです。
(当時はweb3ゲームという言葉はなく、ブロックチェーンゲームまたはNFTゲームと呼ばれていました。)

この頃にローンチされた代表的なNFTゲームをご紹介します。

ゲーム事例① Sorare

この時期にローンチされた代表的なNFTゲームの1つがSorare(2019年3月ローンチ)です。

Sorareは、実在する選手のカードNFT5枚でチームを編成して戦うカードバトルゲームです。

カードを所有する選手の現実の試合での活躍度合いに応じてポイントがもらえ、そのポイントの多寡を競うというシンプルなルールで、リーグ戦で累積ポイントが上位になり、一定以上のポイントを貯めることで、報酬である$ETHを受け取ることができます。

トークノミクスの全体像としては、運営の収益であるNFT売却益とNFTの2次流通手数料の一部をユーザーに還元するというシンプルな構図になっており、運営が経済圏をコントロールしやすいのが特徴です。

実際、SorareはNFT発行枚数を中央集権的に管理することでNFTの需給バランスをコントロールしており、その甲斐あって3年以上もユーザーを維持できている、(NFTゲームの中では)長寿ゲームになっています。

※Sorareの詳細は『「Sorare」スポーツNFTの成功の軌跡と今後の展望』の記事をご覧ください。

Play To Earnという概念の誕生

NFTゲームが流行するのと同時期に、クリプト市場ではICOが浸透し始めます。

ICOとは、自社トークンを投資家に新規発行して資金を得るというweb3ならではの資金調達法で、株式市場でいうところのIPOに当たります。

裏を返せば、「誰でも簡単にトークンを発行できる」ようになった時期とも言い換えられ、ゲーム開発会社が独自トークンを発行し、ゲーム報酬としてユーザーに配るというスキーム生まれました。

これが、「ゲームをするとお金が稼げる」、Play to Earnのはじまりです。

ここからは、独自トークンの価格をいかにして維持するか = 独自トークンの需給バランスをいかにして整えるかという点が注目されるようになります。

ゲーム事例② JobTribes

JobTribesは、Digital Entertainment Asset Pte.Ltd(以下、DEA社)によって2020年5月にローンチされたカードバトルゲームです。

NFT化されたカードを6枚(1デッキ)揃えたユーザーのみがプレイできるPvEクエスト「NFTクエスト」に勝利するか、PvPバトルで上位入賞することで、報酬($DEP)を獲得できます。(通常のクエストで得られるゲーム内通貨を$DEPと交換することもできますが、量が微々たるもののため割愛します)

JobTribes経済圏を維持 = $DEP価格を維持するために、JobTribesの運営は、毎月の報酬量をコントロールして過剰な吐き出しを防いでいます。

中央集権的な運営はweb3の思想から反するという意見こそあるものの、結果的にJobTribesの経済圏は他のゲームに比べて長続きし、さらに延命している間に他のゲームの成功事例・失敗事例を参考にしたことで、Play to Earnゲームの中でも経済圏が長く続いているゲームとなりました。

また、運営であるDEA社は2022年にJobTribes以外にも4本のカジュアルゲームをリリースしており、2023年には10本ものゲームリリースを控えるなど、数にこだわる方針を採用しています。

これにより、様々なトークノミクスと、Web3ならでのユーザー体験を複数のゲームタイトルで試すことができます。

※PlayMining経済圏の詳細は『「PlayMining」ゲームプラットフォーム運営を長続きさせるための戦略』の記事をご覧ください。

ゲーム事例③ Splinterlands

Splinterlandsは2018年10月にリリースされた、カードバトル方式のWeb3ゲームです。

初期のWeb3ゲームとしては戦略性が高く、やり込み度のあるゲームです。

そんなSplinterlandsのトークノミクス最大の特徴は、ソフトペッグ制です。

ソフトペッグ制とは?

トークンの価格を一定水準で安定させるシステムの一種。

「Splinterlands」では、トークン価格が上がった際はトークン報酬量を増加させ供給量を増やし価格を下げ、逆に価格が下がった際は供給量を減らして価格を上げる仕組みを採用していました。

Splinterlandsでは、ユーティリティトークン$DECの価格が$0.001になることを目指しています。

1DEC=$0.001の時の報酬プール:1日100万DECを基準に、DECの価格が$0.0005に下落した場合、翌日は50万DECのみが報酬プールに追加されます。

逆に$DECの価格が$0.005に上昇した場合は、翌日は500万DECが報酬プールに追加されます。

しかし、実際にはSplinterlandsのソフトペッグ制は上手く機能しておらず、ユーティリティトークン$DECの価格は、$0.001を下回る時期が続いています(下図参照)。

$DECのチャート推移(引用:CoinMarketCapより)

ソフトペッグ制を導入すれば、トークン価格が安定する、という単純なものではなく、実際にはその裏打ちとなるトークン消費が必要となります。

トークン価格安定性を重視する今後のWeb3ゲーム開発において、ソフトペッグ制は重要なシステムとなり得ると言え、その点でSplinterlandsの事例から得られるものは大きいでしょう。

※Splinterlandsの詳細は『「SPLINTERLANDS」ソフトペッグを機能させるための「仕組み」と「課題」』の記事をご覧ください。

ゲーム事例④ My Crypto Heroes

My Crypto Heroesもこの時期の代表的タイトルです。

NFT化された歴史上の偉人3体でチームを組んでバトルを進めていくゲームです。

「ゲームにかけた時間もお金も情熱も、あなたの資産となる世界」というキャッチコピーで、2019年8月には世界No1のユーザー数を誇り、テレビCMも放映されるなどしました。

経済圏はゲーム内通貨と独自トークン($MCHC)で構成されており、ゲームプレイによって獲得したゲーム内通貨を、最終的に$MCHCと交換するという構造になっています。

リリース当初は、キャラクターやアイテムを売買できるという目新しさから注目を集めたものの、$MCHCの用途が運営に関わる投票権以外になく基本的に利確されたため、$MCHCの価格は下がり続けました。

※My Crypt Heroesの詳細は『「My Crypt Heroes」日本最古のBCGの軌跡と今後の戦略』の記事をご覧ください。

トークノミクスの変遷①のまとめ

黎明期となるこの時期には、まずCryptoKIttiesやSorareといったNFTのみのゲームが登場し、続いて独自トークンを組み込んだJobtribes、Splinterlands、MyCryptoHeroesなどのゲームが登場しました。

SorareのようなNFT主体のゲームは、運営がNFTの発行枚数をコントロールすることでその価値が担保されており、実際にその仕組みがうまく機能しています。

一方で、特に独自トークンを組み込んだゲームでは経済圏が複雑になり、NFT価格だけでなく、独自トークンの価格をいかにして維持するかという点が課題になりました。

トークン価格を維持する仕組みはプロジェクトにより様々ですが、この時期では大枠で、以下の3つに分かれます。

  1. 運営が中央集権的にトークンの流通量コントロールする(Jobtribes)
  2. トークン価格の自動調節機能を搭載する(Splinterlands)
  3. 特に対策を講じない(MyCryptoHeroes)

現時点で経済圏が最も長続きしているのは①であり、②はweb3の思想上理想ではあるものの、よりハードルが高いということが判明しました。

しかし、この後のトークン経済圏の発展は、②を中心に進化を遂げていくことになります。

この時期から学べるポイント

・NFTやトークンなど、価格変動するものの要素が増えるほど経済圏が複雑になりコントロールしづらい
・運営が中央集権的にコントロールできる経済圏の方が長続きさせやすい
・独自トークンを発行した場合、需給バランスが崩れるとトークン価格は一気に崩壊する
・独自トークンを用いる主なメリットは資金調達であり、必ずしも独自トークンを発行する必要はない

トークノミクスの変遷② ~中央集権からユーザー主導の経済圏へ~

暗号資産市場全体が上向き傾向になってきた2020年頃からクリプト業界には画期的な出来事が続々と起こり、Web3ゲームは大きな飛躍の時期を迎えます。

本章は全体像のうち上図部分を解説していきます。

この時期はWeb3ゲームにとって非常に重要な時期で、これ以降のほぼ全てのゲームがこの時期の影響を受けていると言っても過言ではありません。

特にスカラーシップの発明は、Web3ゲームの知名度を向上させた画期的なものでした。

一方で、その功罪が明らかになったのもこの時期です。

その詳細とゲーム事例について詳しく解説していきます。

この章で取り上げるゲーム事例のハイライト

・Axie Infinityによるデュアルトークンシステムとスカラーシップの発明は、ユーザー数を一気に拡大させたが、スカラーシップによる$SLPの売り圧に耐えられなかった。
・Axie Inginityのブリードコストを改良したPegaxyが一時的な流行を見せたが、資本家による巨大な売り圧からFUDが起きて経済圏が崩壊した。
・Thetan ArenaはNFTの使用回数やトークン引き出し量に制限を設けるなどの工夫をしましたが、スカラーによる売り圧を相殺できるほどの効果はなかった。

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