今までのWeb2はTwitterやFacebookなどで広告配信やサービスの告知をし、一方通行にユーザーに訴求することがメインでした。
しかし、ユーザーとともにゲームを育てていく側面が強いWeb3では、ゲーム運営とユーザーとが双方向にコミュニケーションを取り、信頼関係の厚いコミュニティ形成が欠かせません。
コミュニティ運営をする中で、Discordは運営とユーザーの間のコミュニケーションを円滑にして溝をなくし、信頼関係を構築するのに非常に重要な役割を果たします。
プロダクトの経済圏の基盤をより強固にするために、Web3企業はDiscordの運用を強化していく必要があります。
しかし、Discordの運用経験のある企業はほどんどなく、導入の敷居が高く、運用に関して課題があるのが現状です。
本記事では、
- Discordの概要
- Web3ゲーム開発を進めるにあたってのDiscordの重要性
- 現在のDiscordの課題点
- 実際にDiscordを運用するための準備
- LGGのDiscordの運用事例
などWeb3におけるコミュニティ運営に欠かせないポイントなどを網羅的に解説していきます。
今後NFTプロジェクトを取り組もうとしている企業様や、Web3の技術を取り込んで事業をされようとしている企業様にも参考になる内容になっています。
Discordとは?

Discordとは2015年にDiscord Inc.からリリースされたアメリカ発のチャットツールです。
もともとは「ゲーマー向けボイスチャット」として使用されており、日本国内でも「ゲーマー向けチャットSNS」という認識が強いのが現状です。
しかし、現在はゲーマーのみならず、YouTuberのコラボレーションやファンコミュニティ運営など、さまざまな場面で使われる急成長中のコミュニケーションアプリでもあります。
Discordで何ができるの?
Discordは下記の機能があり、カスタマイズしながらDiscord内のユーザーとコミュニケーションを取ることができます。
★Discordでできること
・文字でのチャットのやり取り
・音声通話
・高品質なビデオ通話
・テーマごとの部屋(チャンネル)を作成
・役割に応じてロール(役職)の権限を付与
・拡張ツールとして「Bot」の導入
通話はタイムラグがほとんどなく、高音質かつノイズ抑制機能も搭載しているため、大人数に向けたゲーム配信やクローズドコミュニティの遠隔会議にも適しています。
サーバー内には複数のチャンネルを作ることができ、メッセージやファイルを共有することができます。
サーバーでは「ロール(役職)」を作成してメンバーに割り当てることができ、ロールごとにロールの色や「サーバーの管理」、「メッセージの管理」といった権限を設定することができます。
拡張ツールとして「Bot」を導入することで、指定した音楽を流したり、アンケート機能を追加したりすることができ、カスタマイズ性の高さもDiscordの特徴です。
※Discord内で利用できるBotは別記事「コミュニティの熱量を高めるオススメDiscord Bot 9選!」を参照してください。
なぜDiscord戦略が重要なのか?
Discordは、従来のSNS運用や広告でありがちな企業からの”一方通行”の発信ではなく「企業とユーザー」「ユーザー同士」の全方向型のOPENコミュニティが一箇所に構築できます。
そのため、Discord内で運営とユーザーが接触できる機会を設け、顧客ロイヤリティを高めることで、「ユーザーがファンになり、ファンが運営を手伝う」という自走型のコミュニティを作る事ができます。
結果として、長期に渡ってプロジェクトを支援してくれるユーザーが増え、既存ユーザーが新規ユーザーを呼ぶという好循環を生み出します。
Discord内でプロジェクトへの貢献度の高いユーザーは正式モデレーターとして採用をし、NFT面の優遇等で還元し評価することもできます。
Web3ゲームの仕組み自体が新しく複雑だからこそ、これまで以上にユーザーとの距離を近く保ったコミュニティ形成が、経済圏の基盤をより強固にする鍵となります。
Discord運用の6つのメリット

ゲーム会社がDiscordを運営するメリットは大きく6つあります。
★Discordを運営するメリット
1. 低コストで環境構築ができる
2. 投資対象として評価されやすくなる
3. グローバル対応可能
4. 相互コミュニケーション環境を構築できる
5. フレキシブルにサービス運用できる
6. 集客コストを削減できる
1. 低コストで環境構築ができる
Discordを活用するメリットの一つに「従来のように大規模な自前サイトを構築せずとも、コミュニティ構築が低コストで実現できること」があります。
国を跨いで大きなコミュニティーを作るとなると、公式サイトでコミュニティーフォーラムを作るなどの大規模なものが必要になります。
Discordであれば無料でサーバーを立てることができ、安価なBot機能も充実しているので、手はかかるものの、今まで何十万円もかけていた運用コストを抑えることができます。
SlackやChatworkなどは、コミュニティの人数などによって有料化する必要がありますが、Discordは一つのサーバーに最大50万人まで招待する事ができます。
そのためビジネスコミュニケーションツールとしても有用です。(ただし、Slackのようなに多種多様なアプリケーションとのAPI連携は実現できません)
2. 投資対象として評価されやすくなる
Discord参加人数やサーバーの賑わいが、ダイレクトに一般ユーザーや海外VCに対する対外的なアピールとなります。
また、VCなどの投資家が投資判断を行う際の判断基準として「コミュニティの賑わい」を最も評価しているという調査結果もあります。

引用元:https://chainplay.gg/state-of-gamefi-2022/
特にWeb3界隈ではコミュニティの規模 ≒ Discordの参加人数という見られ方をするため、多くのトークンホルダー・NFTホルダーを確保したいプロジェクトであれば、Discordに人を集めるのは必須となります。
3. グローバル対応が可能
複数の言語チャンネルを並走できるため、グローバル対応時も全体管理がしやすいという特徴があります。
運営方法やチャンネル構築の工夫は必要ですが、1つのサーバーの中で複数の言語で運用することができます。
今までのサイトであれば言語切り替えが必要で、コミュニケーションも別の世界、別のサイトで行っていましたが、Discordは一つのサーバー内でいろんな言語の人がコミュニケーションを取れる点が利点です。
4. 相互コミュニケーション環境を構築できる
Discordを盛り上げてくれる根強いファンとなるユーザーを増やすためには、ユーザーとの距離を近め、プロジェクトのミッションやビジョンに共感するコアなファンを作っていく必要があります。
そのために、運営はミッションやビジョンをゲームコミュニティ内外に向けて何度も発信し、顧客ロイヤリティを高めることが重要な要素となります。
Discordでは運営がAMAを定期的に開催し、ユーザーと距離感近くコミュニケーションを取る機会を作ることができます。
Discordを上手に機能させることで、ユーザーとの接触、ロイヤリティを高め、強固な経済基盤を形成することがで可能になります。
5. フレキシブルにサービス運用できる
DiscordではBotを使ってアンケートを取ったり、オンラインイベントを開催することも気軽に実現できます。
そのほか、問い合わせ窓口を開設できたり、ゲームプレイのFAQを用意できたりと、運用次第でDiscord内でカスタマーサクセスをフレキシブルに実現できます。
これまではユーザーが運営への問い合わせを行う際には、別途公式HPから問い合わせる必要があり、即時に問題解決することができませんでした。
しかしDiscordを活用すれば、運営とユーザーのやり取りをできる限りDiscord内で完結させられ、お互いの距離感を縮め、これまで以上に密なコミュニケーションを取ることが可能になります。
6. 集客コストの削減が期待できる
Discordはユーザー間で招待しやすい仕組みとなっているため、Giveawayや外部SNSとの組み合わせで低コスト集客が可能です。
Discordで招待コードを発行し、何人以上Discordに招待するとホワイトリストやNFTをGiveawayするといった施策を打つことで、勝手にユーザーがユーザーを呼んでくれる仕組みを作ることができます。
そのため、運営のマーケティング戦略や工夫次第では、膨大な広告費を投入する従来の集客に対して大幅なコストカットも期待できます。
Discordを運営するメリットは多く、Web3におけるコミュニティ運営には欠かせないものですが、運用にはハードルがあります。まず既存のDiscordが抱える課題を押さえておきましょう。
既存のDiscordが抱える課題

ここからは、既存のDiscordが抱える課題を指摘し、Discordを運営する際に把握しておくべき点をお伝えします。
★既存のDiscordが抱える課題
1. Discordアプリ導入のハードルが高い(運営・ユーザー共通の課題)
2. 適切な人材確保が難しい
3. ロイヤリティ形成にも時間を要する
4. 短期的なマネタイズポイントを形成しづらい
1. Discordアプリ導入のハードルが高い
<ユーザーの課題>
Discordは「ゲーマー用」「クリプトユーザー用」という先入観があり、一般ユーザーにとって参入ハードルが高いSNSです。
- インストールの敷居が高い
- いざDiscordに入ると「サーバー」や「チャンネル」など聞き慣れない単語が入ってきて使い方が理解できない
- 使い方の把握ができても、どうコミュニティに接すれば良いか分からない
- 何を発信したらいいか分からない
など、ユーザーにとってDiscordを活用するハードルが高いため、教育・サポートが必要です。
<運営側の課題>
管理者側も日本のDiscord運用の知見が少なく、日本語サイトの知見もほぼないため、基本は英語で情報を収集する必要があります。
しかし、英語でも満足のいく運用の知見が公開されていないのが現状です。
0→1を構築するために準備を要し、今から模索しながら作っていく必要があります。
2. 適切な人材確保が難しい
Discord運用で確保すべき人材 としては、
- コミュニティマネージャー
- サポーター(モデレーター)
- マーケター
- アナリスト
- クリエイター
- エンジニア
などが挙げられます。
Discordという使い慣れないプラットフォームで、基本的な仕組みの把握に加え、コミュニティ形成やBot導入など、専門知識のある人の採用もしくは育成が必要です。
特に、Discordの全体設計・企画・人員/スケジュール管理等を総括できるコミュニティマネージャーは確実に確保すべき人材です。
しかし、コミュニティマネジャーというキャリアも全く新しく、経験者を採用するのが難しいのが現状です。
まずは専属のコミュニティマネージャーを一人たてて、全体の仕事を網羅しながら人員増強をしていき、担当範囲を細分化していけるのが理想的です。
なおDiscord立ち上げ初期は、経営層もDiscordで直接ユーザーとコミュニケーションをとっていくことも、ユーザーのロイヤリティ向上のために大切です。
3. ロイヤリティ形成に時間を要する
最適なコミュニティとコミュニケーション設計に”絶対的な正解”がなく、プロダクト毎にチューニングが必要です。
Discordの基本的な仕組みの把握が難しく、アプリケーション自体の学習期間を要するため、ロイヤリティ形成にも時間を要します。
運営がモデレーターと密にコミュニケーションを取り、Discordを盛り上げるための発信を行い、コミュニティーを持続させる努力をしないと廃れてしまいます。
ロイヤリティ形成、それを継続させ自制させるまでは生半可な努力では成り立ちません。
4. 短期的なマネタイズポイントを形成しづらい
利用による導入コストはない一方で、Discord単体での短期的なマネタイズポイントを形成しづらいため、企業として力を入れにくいという課題があります。
Discord内で情報を取るために、ユーザーに課金させる機能もありますが、
- ユーザーがDiscordで課金したいという意識を持つか
- 課金するユーザーがどのくらいいるか?
という点は疑問であり、企業としてもDiscordチームを立ち上げて、何十人体制で運営をすることが難しいと考えられます。
Discordを運営する上で押さえておくべき基本設計
今まで解説してきた通り、Web3ゲームプロジェクトを成功させる上でDiscordは重要な位置を占めます。ここからは、Discordを運営する上で押さえておくべき基本設計について、各工程のポイントを紹介します。
★Discordを運営する上で押さえておくべき基本設計
1. Discordの基本構築
2. 初回Giveaway企画
3. “貢献者創り”の設計
4. “定期訪問”の設計
5. “ファン形成”企画
6. “ファンに運営”を任せ始める