Splinterlandsは、2018年10月にリリースされたカードバトルのWeb3ゲームです。
リリースから約4年が経っても多くのユーザーにプレイし続けられているゲームは限りなく少なく、その点でSplinterlandsから学べることは多いでしょう。
Splinterlandsが多くのユーザーにプレイされている理由として以下の点が挙げられます。
・Axie infinityの快進撃の波に乗ったポジション取り
・ユーザーが離れないゲーム性
・トークン変動に対する安心感
・ゲーム初心者が参入しやすい入口設計
一方で、課題がないわけでもありません。
実際に$SPS(ガバナンストークン)価格はピークから下落の一途を辿っていて、ソフトペッグ制を採用している$DEC(ユーティリティトークン)価格も$0.001を維持しきれていません。
これらの要因として次の課題が考えられます。
・トークン消費のロジック・必然性の弱さ
・ソフトペッグの仕組み
今回のレポートでは、Splinterlandsが多くのゲームユーザーを確保できた理由と、「ソフトペッグ制」を利用したトークノミクスの課題について考察していきます。
開発者視点での学びPOINT
- ・ユーティリティトークンの価格をステーブルにするためのソフトペッグ制度の運用方法
- ・運営期間が長く、多くのユーザーを維持し続けている要因がどこにあるのか
ユーザー視点での学びPOINT
- ・トークン価格の安定(=ユーザーの報酬の安定)につながるため、長くプレイしたいゲームを見つけるためのヒントになる
この記事の目次
プロジェクト概要
ゲーム概要

SplinterlandsはNFTのカードを使ったトレーニングカードゲームです。
サモナーカード(召喚師)とユニットカード(バトルモンスター)の2種類でデッキを組み、対戦相手とバトルします。
ゲームには毎回異なった縛りルールがあり、プレイヤーはそのルールに則ってバトルしなければいけません。
他にも対戦対手の戦歴を分析できる機能があり、バトルにおける分析力・洞察力も必要になります。
強いカードを所持すれば勝てるという単純なゲームではなく、プレイヤーの実力が勝敗を分けるゲーム性が備わっています。
この『やりこみ感』のあるゲーム性がSplinterlandsの特徴です。(ゲーム性について詳しくは後述します)
ロードマップ

2022年 4Q
- SPS バリデータのテスト
- スプリンターフェスイベント
- LANDNFTの実装フェーズ 1
2023年以降
- SPS バリデータの実装
- LANDNFTの実装フェーズ 2 他
出資者・パートナー
- 3コンマ
- AGE Crypto
- AGE暗号資産投資ファンド
- アルファ シグマ キャピタル
- Aly Madhavji
- アニモカ・ブランズ
- ブロックチェーン・ファウンダーズ・ファンド
- デジタルアセット・キャピタルマネージメント 他
運営会社
運営:Splinterlands.inc

CTO:Matthew “Yabapmatt” Rosen(写真右)
トークン及びゲーム内通貨情報
$SPS(ガバナンストークン)

- 発行上限 :3,000,000,000
- 時価総額 :$56,618,093
- 価格 :$0.06926
- 上場取引所 :
- DEX・・・Pancake / Uniswap
- CEX・・・LBank / MEXC / Gate
- 種類 :ガバナンス
- 獲得方法 :
- Play to Earn
- ステーキング報酬
- エアドロップ
- ホルダー数 :
- ERC-20(Ethalium)・・・329
- BEP-20(BNB)・・・45,940
- 使用ポイント:
- $DECに交換
- ステーキング
- トークンアロケーション
- エアドロップ 13.33%
- DAO 10%
- プライベートセール 6.66%
- チーム 9%
- パートナー/アドバイザー 1%
- PlaytoEarn 30%
- ステーキング/LP等 30%

アロケーションの特徴として、エアドロップやステーキングにおける割合が高いことが分かり、少しでも長くゲームをプレイしてもらうためのアロケーションを組んでいることが分かりました。(アロケーションに関する記事はこちら)
また、価格に関しては、今まで消費の設計がほとんどなかったため、売り圧が強くトークン価格は下落の一途を辿っていました。(下画像参照)

さらに、8/23のアップデートでランクバトル報酬が$DECから$SPSに変更されたため、消費設計の少ない$SPSは利確される可能性が高まり、さらなる下落が想定されていました。
しかし、9月24日現在まで、$SPSの大きな下落はありません。
売り圧を抑制する仕組みとして運営が採用したのが、$1相当の$SPSをBurnすることで975DEC受け取れる仕組みです。
簡単に説明すると、1DEC=$0.001025 以上の価格の時に$SPSをBurnすることで利益が得られます。
この仕組みは、ソフトペッグ制で、$0.001を維持しようとしている$DECの価格を安定させるためのシステムとしての役割も担っています。
$DEC(ユーティリティトークン)

- 発行上限 :300,000,000
- 時価総額 :ー
- 価格 :0.00074
- 上場取引所 :
- DEX・・・PancakeSwap
- CEX・・・ー
- 種類 :ユーティリティ
- 獲得方法 :Play to Earn / SPSのBURN
- ホルダー数 :
- ERC-20(Ethalium)・・・998
- BEP-20(BNB)・・・22,958
- 使用ポイント:
- NFT・スキン(※1)・ポーション(※2)の購入
- ギルドの所属費用
$DECは「ソフトペッグ制」という、価格を安定させるシステムを採用していることが特徴です。
ソフトペッグ制により、$0.001付近の価格で安定するように流動性が調節されています。
また、ユーティリティに関しては、大部分をカードNFTの購入に依存しており、消費ポイントが少ないのが特徴です。
ユーティリティが少ないため利確されやすく、22年6月以降のチャートでは、ほぼ全ての期間で$0.001を下回っています。(下図※赤線は$0.001)

注
(※1)スキンは、カードをコレクティブルするためのアイテムで、能力はそのままに見た目を変更できます。
(※2)ポーションは、運営が販売するカードパックを購入した際にレアカードを引きやすくするアイテムです。
(※3)ギルドの所属費用は、ギルドに所属していると発生する費用です。(※ギルドにより条件は異なります)
ユーザーと運営の収益ポイント
ユーザーの収益ポイント
- バトル報酬(ランク報酬・シーズン報酬 等)
- ギルドボーナス
- ステーキング報酬
- NFTの販売
- レンタル報酬
運営の収益ポイント
- カードパックの販売(NFT一次流通)
- マーケット販売手数料(NFT二次流通)
- レンタル手数料
トークノミクス分析
トークノミクス全体像

ソフトペッグ制とは
Splinterlandsのトークノミクスを理解するためには、「ソフトペッグ制」について理解する必要があります。
はじめに、「ソフトペッグ制」について説明します。
繰り返しになりますが、ソフトペッグ制は、$DECの価格を0.001$付近に安定させるシステムです。
Splinterlandsでは次のような仕組みを採用しています。
【Splinterlandsのソフトペッグ制の仕組み】
通常バトルで獲得できるDECの1日の報酬プールは1DEC=$0.001の時、1日100万DECでとなっています。
仮にDECの価格が$0.0005に下落した場合、翌日は自動的に50万DECのみ報酬プールに追加されます。
$DEC供給量を絞ることで売り圧を和らげデフレを起こします。
逆に、DECの価格が$0.005/DECに上昇した場合は、翌日500万DECが報酬プールに追加されます。
この場合、$DECの供給量を増やすことでインフレを起こし、価格を下げようとします。
このように、価格によってトークンの吐出し量を調節することで価格をコントロールするシステムになっています。
しかし、先ほども紹介したように今のSplinterlandsは、価格が安定しているとはいえません。
ここからは、運営がソフトペッグを維持するために実施していることと、それでもなぜ価格が安定しないのか、ということについて考察します。
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