
Stella Fantasyは、‘well-made P2E game’(よくできたP2Eゲーム)を目指して開発が進められているMMORPG型GameFiです。
「よくできたP2Eゲーム」とは、簡単に言えば「高品質のゲームを開発し、ブロックチェーン技術との融合によって『遊ぶ』と『稼ぐ』を両立させたゲーム」です。
ただ、昨今のGameFi業界では、「高品質」を謳ったWeb3ゲームが数多く存在し、競争が激しくなっています。
こうした状況では、もはや品質の高さだけでは差別化は難しく、ユーザー獲得のための別の戦略が必要になってきます。
Stella Fantasyは、コンセプトが斬新というわけでもなければ、高収益を謳える、というわけでもありません。
クオリティの高さには定評がありますが、競合ひしめくMMORPG分野でのインパクトには弱い面があるでしょう。
その中で、Stella Fantasyは、コアユーザー向けのマーケティングを重視してきました。
囲い込んだファンの数では競合MMORPGに劣るものの、クオリティの高さと世界観をバックにコアなファンを引き込めていると言えます。

一方、9月29日にクローズドβ版がローンチ予定された後は、ファンを維持できるかが注目点ですが、その対策はまだまだ不十分な点が多いです。
Stella Fantasyの事例から、MMORPGのマーケティングとコミュニティ運営について考察していきます。
開発者視点での学びPOINT
・ガバナンストークン+ゲーム内通貨という組み合わせのトクノミクス
・トークン供給を絞り、ゲームクオリティを重視した設計の意図
・Stella Fantasyに見るマーケティングとコミュニティ運営の課題
ユーザー視点での学びPOINT
・競合多いMMORPGでどこを差別化ポイントとして見るか
・トークン供給ポイントが少なく、高収益を上げにくいモデル
目次
プロジェクト概要
ゲーム概要
Stella Fantasyは2021年12月から開発がスタートしたアクションRPGのBCGです。
アニメのようなキャラクターの4人(プレイヤー自身+他3人のキャラクター)でチームを編成し、様々な冒険やクエストをこなしながらレベルアップしていくゲームです。
当初はPC版のみですが、ゆくゆくはスマホ版のローンチも予定されています。
ゲームを開始時に、3人のキャラクターNFTが自動で貰えるため、初期投資なしでプレイを開始することができます。(※初期配布キャラクターNFTは売買することはできません。)
ストーリーモードやアビスリフトと呼ばれる探索モード、ランド機能も備わっており、本格的なMMORPG体験が可能なゲーム設計です。
ロードマップ

当初は7月にローンチ予定でしたが、進捗に遅れが見られ、9月29日にクローズドβ版のローンチが予定されています。
年末から2023年にかけては、SFTYトークンのパブリックセールや、ゲーム機能の拡充などが予定されています。
運営会社・VC・投資家について
開発会社は、King’s Raidなどのトップクラスのゲームを開発実績があるRing Gamesです。
また、チームには、名だたる企業での活動実績のあるメンバーが揃っており、クオリティーには十分に期待が持てる陣容になっています。

2022年6月には、Animoca BrandsとPlanetarium主導によって、500万ドルの資金調達を行っています。

また、それより以前の2022年4月にはGuildFiとのパートナーシップ提携、5月にはAVOCADO DAOとの提携など、着実にパートナー企業を増やしています。
トークンおよびゲーム内通貨情報
ガバナンストークン

- 名称:STFY(STELLA FANTASY Token)
- 未上場
- 発行上限:10億枚
- 機能:ガバナンス
- 獲得方法
- PvPでのランキング報酬
- 対戦型アビスリフトでの報酬
- マーケットでの取引
- 使用用途
- キャラクターNFTの入手
- キャラクターNFTの覚醒
- 装備NFTクラフト費用
- ステーキング機能
- 希少NFTのドロップ
- トークン報酬
ゲーム内通貨
また、ゲーム内ではマナリングというゲーム内通貨も登場します。
こちらの方が用途としては多くなっており、ユーティリティトークンのような役割を果たしています。

- 名称:Manaring(マナリング)
- 機能:ゲーム内通貨
- 獲得方法
- クエストのクリア
- アビスリフトのクリア
- ランドからの獲得
- 使用用途
- キャラクターNFTのレベルアップ
- 装備NFTクラフト費用
- 装備NFTのアップグレード
- コンテンツ入場料
- キャラクターNFTの覚醒
トークンアロケーション

ステーキング報酬(21%)と運営への報酬(25%)が多く、マーケティング(3%)やエコシステム(3%)のアロケーションが少ない設計です。
一般的に、マーケティング・エコシステムには、30%程度の配分が与えられることが多いですが、Stella Fantasyは著しくその割合が低く、その分ステーキング報酬を重視した設計になっています。
マーケティングへのアロケーションの少なさがユーザー獲得戦略にも大きく影響していると考えられますが、この点については「マーケティング戦略」の章で考察いたします。
ユーザーと運営の収益ポイント
ユーザーの収益ポイント(遊び方)
Stella Fantasyでのユーザーの稼ぎ方は、以下の5つです。
1. ストーリーモード
2. AbyssRifts(アビスリフト/探索モード)
3. チーム・タグ・アサルト(ランキング戦)
4. ランド機能
5. クラフト機能
1. ストーリーモード
Stella Fantasyの世界観を知る基礎となるモード。
指定されたミッションをこなし、アイテムなどを入手します。
2. AbyssRifts(アビスリフト)
マルチプレイヤーコンテンツの探索モードです。
PvPやPvE要素も実装される予定です。
ストーリーモードよりこちらの方がメインコンテンツとなり、より重要なアイテムやトークンを獲得できます。
3. チーム・タグ・アサルト
ボスと戦ってスコアを獲得し、そのスコアを他プレイヤーと競うモードです。
各シーズン終了ごとに、マナリングコインとSFTYトークンが報酬として貰えます。
4. ランド機能
プレイヤーはランドを所有することで、そこでアイテムを生成できます。
そのアイテムを武器NFTのクラフトに使うことで、より大きな報酬につながります。
5. クラフト機能
ランド内で、武器NFTを生成することが可能です。
この武器をマーケットプレイスで売却することで、報酬を得ることができます。
ゲームの流れは以下の図で表すことができます。

まず、プレイヤーは自らのランドで様々な資源を獲得し、武器NFTのクラフトやメインストーリーの進行に必要なアイテムを得ます。
武器NFTを装備したキャラクターでアビスリフトやストーリーモードをクリアすることで、より高位のキャラクターNFTやクラフト素材、SFTYトークンを報酬として獲得します。
この報酬はさらなるNFT製作時に使われ、より良い報酬の獲得に繋がります。
このように全てのコンテンツがお互いに関連しながら、ゲーム経済圏を作り上げています。
トークノミクス分析
トークノミクス全体像

SFTYがゲーム内で登場する場面は限られており、キャラクターミントおよび覚醒、一部バトルの報酬、装備NFTのクラフト、ステーキングのみです。
武器NFTのクラフトやランドではSFTYは登場せず、ゲーム内通貨マナリングを使用します。
キャラクターの覚醒についてですが、同一キャラクターNFT、SFTY、マナリングおよび素材をバーンさせることで、キャラクターのステータスを大幅にアップさせる機能で、NFTバーンとしての役割も果たしています。
トークンのインフレ・デフレポイント

上図のSFTYトークンのインフレ・デフレポイントをまとめると以下のようになります。
【インフレ要素】
・PvPランキング報酬
・対戦型アビスリフトでの報酬
・マーケット取引での獲得
【デフレ要素】
・キャラクターNFTのミント費用
・キャラクターNFTの覚醒費用
・装備NFTのクラフト