
※本記事は、STEPN特集の第2弾です。第1弾から順にお読みいただくことで、STEPN経済圏への理解が深まるようにできております。本記事を最初にご覧になられた方は、第1弾を先にお読みください。
STEPN特集の第2弾となる本記事は、Binance realmが崩壊したタイミングのレポートを記事化したものです。

Binance realmが崩壊する直前、 bGSTの価格は鰻登りで、STEPNコミュニティ全体が前向きな雰囲気に包まれていました。
しかしLGGでは、STEPN経済圏の各指標を追っていく中で、Binance realmが崩壊する予兆を掴んでおり、いつ崩壊してもおかしくないという警鐘を、レポートを通じて鳴らしていました。
結果として、Binance realmは崩壊を迎えることになったのですが、気になるのは「どのようにすれば経済圏崩壊の予兆を掴むことができるのか」ということではないでしょうか。
本記事を読むことで、LGGがBinance realmの崩壊をどのように察知することができたのかを、ご理解いただけます。
※本記事の末尾にて、PDF版のレポートをダウンロードいただけます。
目次
今回の総論
悪化し続けているSTEPN経済圏
5/25に発行したレポートで、LGGは
・『BNB側はバブルであり、弾けるのが一ヶ月後か明日かは誰にもわからない』
・『あまりに大きなチューリップ相場の様相になると弾けた時に再起不能になる反動を引き起こす』
・『SOL側の崩壊は運営が望んでおらず、BNB側の暴落が落ち着いたタイミングで、BNB側は少し高い価格帯で再度上昇を始める』
という予想をお伝えしました。
その後、BNB側での靴の売りが始まり、SOL・BNB側ともにGSTの価格も下がっていきました。(下図参照)

また、この状況下で、新たに中国ユーザーへの規制がアナウンスされたことも重なり、非常に多くの靴が市場に売られ、靴のフロア価格も下がっていきました。(下図参照)

その後、運営による緊急のAMAが26日と30日と開催されたりしていますが、31日時点、依然として靴の出品数は多く出されている状態であり、経済圏のトレンドは悪化し続けています。
STEPN経済圏の回復に必要なこと
現状の優先課題は、消費と利確のバランスを解決し、STEPNの経済圏を安定した状況にすることです。
現状はSOL側・BNB側ともに、靴の出品が相次いでおり、靴のフロア価格も下がっています。


運営は、「現在の価格低下は、FUD(不安・疑念・不信|Fear/Uncertainty/Doubt)が原因だ」と認識しており、28日に内部のデータを公開しながら「通常通り安定している」とツイートしています。
しかし、このまま新規ユーザーや、既存ユーザーが安くなった靴を買っていかなければ、STEPNの崩壊は免れません。
このタイミングで鍵になるのは、ユーザー心理が利確よりも消費を優先するのか?という点です。どれだけ経済圏の設計が優れていても、多層構造の経済圏になっていない状態で、ユーザー心理が利確に強く向かってしまうと、持ち直すのが困難になります。
LGGでは、そこがこのタイミングでの最重要課題だと考え、今回のレポートはその点を重点的に掘り下げていきたいと思います。
LGGとしての役割と想い
STEPNは、既存ユーザーの方のコミュニティの力や、愛情・ロイヤリティが高い人が多いプロジェクトです。
運営は初期からユーザーとの対話を頻繁に行い、12月頃から毎週AMAを継続して行っています。
しかも、運営の経営陣自らが、毎週直接やり取りしています。
プロジェクト発足から12月20日のパブリックベータ版のリリースまでの間に行われた各種マーケティング施策にも、ユーザーとの距離を大切してきた歴史が伺えます。
STEPNは、多層構造の経済圏へ連結できる最も有力なプロジェクトであり、非クリプトユーザーへの接続を実現したプロジェクトでもあります。LGGとしては、業界全体を前に進める上でも、この状況を解決して次のフェーズに移って欲しいという想いがあります。
一方で、プロジェクトの状況をデータを元に分析し、客観的な情報を伝えるという役割を考えると、全て良い方向に話を持っていくこともできません。
私たちのレポートは、ユーザーの方々がGameFiの各種プロジェクトを、自身の判断軸で意思決定できるようになるために提供しています。
今回のフェーズは、これまでで最も難しいフェーズでのレポートになりましたが、多くの方にとって、判断する材料や理解の助けになることを願っています。
各種KPIの推移(5/24~5/31)
〈SOLチェーン〉


〈BNBチェーン〉


各種KPIの考察
BNBのバブル崩壊について
5/25に発行したレポートでお伝えした通り、BNB経済圏のバブルが弾けたのは、新規流入が鈍り、利確のために靴の投げ売りが始まったことが理由です。
BNB側の騰落差が激しかった分、大きな損失を被った人も多く、SOL側でも靴を売って撤退する、という流れも出てきています。
GSTの新規ホルダー数の増加数を見ると、依然として、新規ユーザーはSOL側に入ってきていると考えられるものの、その増加数は安定していません。(下図参照)

BNB側の靴のフロア価格は、1.5BNB付近(約6万円)まで下がってきていますが(下図参照)、理論上はSOLと同じフロア価格(約3.6万円)まで下がる可能性があります。

ただ人間心理は単純ではなく、何かしらのイベントなどがないまま、FUDが続くと、BNB側のフロア価格やbGSTは、SOL側のそれを下回る可能性もあります。
靴の売りは依然と続いていますが、ユーザーが靴を買うサイクルが動き出せば、BNB側のエンドゲームまでの開拓も進んでいないため、抜本的な消費と利確のバランスが解決すれば、ここから、通常のサイクルに戻る可能性もあります。
SOL経済圏が受けた影響
BNB側でのバブル崩壊を受けて、SOL側も靴の価格、sGSTの価格が下がってきています。

SOL靴の需要の1つに、「BNBユーザーのエナジー増加用ニーズ」というものがあります。エナジーはチェーン間でシェアされているので、エナジー用の靴がSOL側で揃っていれば、BNB側で1足でもあれば多くのbGSTを稼ぐことが可能なためです。
ただ、BNB側で下落が続くと、この靴需要が消失するため、SOL側の靴の買い圧も減少します。
また、BNB側から撤退したユーザーがエナジー用に保有していたSOL靴を手放す際の売り圧もかかったため、SOL側の価格も下がっていきました。
STEPNの土台がSOL側にあるとはいえ、ミントによる靴の生産と、新規ユーザーの靴の購入が行われなければ、経済圏は回っていきません。
ただし、靴の価格が下がる事自体は、所得水準の低い国のユーザにとって、良いことですので、靴が新たに買われる可能性もあります。

STEPN経済圏を立て直す施策の考察
大前提はユーザー心理を利確に向かわせないこと
LGGでは、経済圏を理解する時のシンプルな構図として、下記を考えています。
経済圏=1:新規流入(買い圧)✖️2:利確と消費のバランス(パーセンテージ)✖️3:ミント数(供給数)
運営がAMAで話した『全く同じ仕組みなのに、1週間前と今週では、全く違う結果になっている。これはFUDが原因である』という点は、2番の利確と消費のバランスが一気に逆転してしまったことを意味しています。
非常に上手に消費に向いていた経済圏内の動きが、一気に利確に向いてしまいました。
これまでは獲得したGSTを、Lv上げや靴の保持数を増やすためや特化靴を作るために消費するといった具合に、ユーザーがゲーム攻略を進めたくなる好循環が回っていました。
しかしBNB側のミントバブルの破裂により、ユーザーの多くが損失を抱えたことで、ユーザー心理が上記と全く逆に向かいました。そして多くのユーザーが、ゲーム攻略を止め、利確に向かったことで、一気に逆のサイクルに入りました。
2番が悪化すると、1番と3番に影響が及びます。利確が多ければ多いほど、新規流入の人数がより多く必要になります。
利確に向い、靴の売りが多ければ多いほど、新規の買い手も追いつかなく、靴の価格も下がり、ミント自体がされなくなることで、GSTも下がり続けてしまうからです。
現状の施策はユーザー心理が消費に向いてこそ効果を発揮するもの
多層構造で外貨を作れていない状況下では、ベースの靴の供給数・ユーザー数が多ければ多いほど、これまで以上の新規の流入=買い圧が必要となります。
それでも、ユーザー心理が消費より利確に寄りすぎている状況では、根本的な解決になっていきません。
また現状の新施策である、「ミントスクロール」「パンダスキン」「靴のBurnについての不確かながらの先行情報」などは消費に向いている時に効果を発揮する施策です。
これまでの緊急のAMAでは、強い意志表明を行いユーザーとの対話を重ねていますが、今後は抜本的にユーザー心理を消費に向かわせる強い施策と、ユーザーとの細やかなコミュニケーションが必要であると考えています。
仮に「レンタル制度」を実施しても、2番のユーザー心理が強く悪化している状態では、かなりの数の新規流入が必要であり、効果的なタイミングではありません。そもそも、消費に向かっていないサイクルでは、新規が入りたくなる動機も弱いです。
このまま悪いサイクルが続くと、過去のGameFiモデルのように、NFT価値が無価値に近づいていきます。
ユーザーが、ゲームを楽しく進めたくなる施策の1つとして、「GMTアーニングの実装を強めに行う」というのがあります。
GMTアーニングの実装
GMTの価格自体が下がっている状況ではありますが、GMTアーニングは、Lv30のコンフォート値が高い靴が必要になるので、必然的に、靴を育て、エナジー量を増やすためのGST消費に繋がる施策です。
GMTアーニングが「想定しているより大きく稼げる」状態を作りだす事で、ユーザー心理が消費に向かうのではないか?と考えています。GSTからGMTに売り圧は移行しますが、ユーザー心理が消費に向かった後に、GMT排出量を徐々に絞ることで、売り圧を抑制し、経済圏の健全化を図る形です。
2番の消費と利確の割合が変化しない限り、ユーザー数、靴の総数が多い状況で、1番の新規流入と3番の靴の供給量の施策をいくら打っても、現況を打開する展開にはなりにくいです。
運営が、靴をバーンする事で、経済圏に流通する靴を必然的に減らせば、需要と供給でプラスに働く、と考えることもできなくはありませんが、ポジティブな未来設計が消費に繋がる方が、ユーザー全体の心理が変わりやすいのではと感じます。
また、運営が計画表通りに進めていくという発言したことから、利益目的・投資目的のユーザーが経済圏から退出し、現段階の靴を運営がバーンして、経済圏自体を小さくしてから再スタートするということも考えられます、
しかしこれも、一度縮んだ状況から再度、新規ユーザーからの信用を獲得していくハードルが高くなるため、難易度は高いと考えています。
トケノミクス設計だけでは経済圏を長続きさせることが難しい
STEPNの消費モデルは、ユーティリティーの数(縦)と、エンドゲームまでの長さ(横)の掛け合わせによる面積が大きく、消費に必然性があるのが特徴です。(下図参照)

STEPNは、これらの消費面積や必然性に乏しい、過去のAxie Infinityのようなモデルから、消費モデルを進化させ、GSTとGMTの2つのユーティリティトークンを行き来させながら、インフレを秀逸にコントロールしてきました。
しかし、消費と利確の心理がとても繊細で、振れ幅が両極端であるという点が、トケノミクス自体の設計以上に大きな影響を与えており、秀逸なベース設計があっても、1週間で全く違う様相になっています。
現段階では、ユーザー心理を強く変える大きな施策が必要である状況であることは間違いありません。
おまけ:GameFiのトークンモデルの変遷
LGGでは、これまでのGameFiプロダクトに実際に資本を入れて、自身で大きな金額を運用しながら、
表面的ではない本質的なトケノミクスの理解を進めていく中で、トークンモデルの変遷を4つに分類しています。
・フェーズ1:シングルトークン+NFT
・フェーズ2:デュアルトークン+ミント/ブリード+スカラーシップ/レンタル(アクシーモデル)
・フェーズ3:デュアルユーティリティトークン++ミント/ブリード+スカラーシップ/レンタル+消費ロジックと必然性(STEPNモデル)
・フェーズ4:フェーズ3+ガバナンストークン+多層構造経済圏モデル
GameFiのプロダクトの中には、以下のようなモデルも多くみられます。
・フェーズ1のモデルに、無理やりデュアルトークンをはめ込んだ、本質的にシングルトークンで良いと思われるモデル
・フェーズ1にスカラーシップのみを追加したモデル
・一見、フェーズ3に見えるが、消費のロジックと必然性が全くない中で作られた実質フェーズ2のモデル
WEB2で面白く作られていたゲームタイトルで、あえてトークンとNFTを使用しなくても良かったと思われるGameFiプロジェクトもあり、ゲーム内容にあったトークンモデルの設定と運用は非常に重要だと感じています。
これらの詳細は、別レポートで近日、公開予定です。
数あるGameFiのトケノミクスの分類、整理、年表などに役立てるものになるかと思います。
Binance経済圏の立ち上がりに学ぶ教訓
今回のバブルの発端は、BNB側のアシックスコラボにまで遡ります。アシックスコラボのスニーカーが、非常に安くエアドロップされたにもかかわらず、10BNB(当時の価格で約50万円)で売られたことで、BNB側のミントの動機に火がつきました。
当初は、ホワイトペーパーにGSTをブリッジをするという表記がありましたが、ブリッジがされないことがわかり、bGSTの価格は上がり続け、チューリップ相場の様相を作ってしまいました。
加えて、bGSTの価格が上がり、GMTの価格が下がっていたことで、ミントコストが少ない状態で、非常に高い収益性が出ていたため、ミントがミントを呼ぶ構造になりました。
また靴の価格が高価格帯を推移してしまったため、ほとんどの新規ユーザーは靴を買うことができず、ミント工場の再投資または大口の新規参入でしか回らない状態になりました。
そのため、本来の需要とはかけ離れた靴のミントが行われて、BNB側のバブルが弾けてユーザーのFUDを引き起こし、SOL側を巻き込む形で価格の下落が止まらなくなったというのが、今回の顛末です。
結果論ではありますが、運営がなるべく早くBNB側に積極的に介入し、実需とかけ離れた高収益のBNB側にテコ入れをするべきだったと言えます。
今後複数のrealmの実装が予定されていること、Instagramでナイキとのコラボが暗示されていることなどを踏まえると、同じようなことにならないように、運営は積極的に介入していくべきだと考えます。
「realm」の概要や導入意図のおさらい
5/24に公式Twitterで発表されたrealm構想について、5/26の緊急AMAで概要が明らかになってきました。
5/25に発行したレポートでは「realmは独立したチェーン(経済圏)を意味する」と解説してしまいましたが、正確には「チェーンの中で別個に存在する経済圏」であることがわかりました。(訂正しお詫び申し上げます)
現時点でわかっていることは、以下の通りです。
・ユーティリティトークンは各realmごとに分断され、ブリッジできない
・ユーティリティトークンの名称はGSTではない可能性あり
・GMTは各realmの共通通貨としての役割(=ブリッジされる)
・エナジーはチェーン間およびrealm間でシェアされる
・Dynamic Mintingルールは各realmで共通
また、第3のrealm(※1)についてはすでに決まっており、2~3か月後の実装化が予定されています。
※1:第1realmはSolanaチェーン、第2realmはBSCですが、第3がETHチェーンでのSTEPNであるとは明言されていません。
一方で、詳細がよくわかっていない情報も多く、運営は「4つ目のrealmでは、全く新しいSTEPNを見せたい」という意欲も見せており、「今までのSTEPNとは違うゲームが導入される可能性」(5月25日のMedium記事より)も示唆されています。
STEPN-verse構想
これらの情報をもとに、STEPN-verse構想を図式化すると以下のようになります。

5/28の公式AMAでは、「STEPNをプラットフォーム化してBtoBtoCにもっていく」(※2)という発言がありました。詳細は不明ですが、有名ブランドとのコラボや、既存WEB2企業との提携も可能性として考えられます。
※2:企業(Business)が一般消費者(Consumer)を対象に行うビジネス形態をB to C、企業を対象に行うビジネスをB to Bと呼ぶ。
これにより今まで以上に、非クリプトユーザーへの間口を広げることができます。
BNB側がそうであったように、高価格帯のrealmを次々と展開していくことで、既存realmでエンドゲームに近づいたプレイヤーに次の開拓場所を用意し、プレイヤー1人当たりのエンドゲームまでの道のりを長くする意図も考えられます。
「realm」導入の意図
では、STEPNが「realm」を導入した意図はどこにあるのでしょうか?いくつか複数の意図が絡んでいますが、主に次の4つの意図があると考えられます。
1. ユーザーがエンドゲームまでいくのを長くすること
2. 外貨獲得の多層構造の実現
3. GMTのバーンの促進
4. 独自のDEX機能を用いた金利手数料の獲得(この項目は次章で解説)
STEPNの経済圏をものすごく簡単に図式化すると、下図の通りになっています。ミント工場が回ることで経済圏が動き出すので、靴を買ってくれる新規ユーザーの獲得が必要です。

そして、新規流入が起これば時間差で利確(売り圧)も強まるため、エンドゲームに至るまでのスパンを長くしたり、パンダスキンを始めとしたコレクティブルの要素を入れたりして、売り圧を分散させていく必要があります。
ユーザーが一つのrealmで終了することなく、複数のrealmにまたがってプレイすれば、GMTのバーン量も増えていきますので、供給量が減っていくGMTの価格は(理論上は)上がっていくことになります。
このように、「realm」はSTEPNの経済圏を盤石にさせるための施策として、非常に面白い取り組みではありますが、もちろん課題もいくつかあります。
realmの課題
ユーザーが魅力的に感じる、いくつものrealmを本当に作ることができるか?
realm同士でのユーザー獲得競争により、高くなるボラティリティーをどう制御するか?
今回、BNBでの高収益は、SOLユーザーが移動するのに十分な条件でしたが、同じようなバブルが繰り返されるのであれば、移動を躊躇するユーザーも多くなるはずです。
ユーザーに収益とは別の動機を持たせること、各realmへの介入によって市場をなるべく安定させることなど、非常に高い運営スキルが求められます。
Solana経済圏の今後
運営も今のSOL経済圏を衰退させるようなことはしないと明言しており、新チェーンやrealmが導入されても、Solana経済圏はSTEPNのベースとなる経済圏として存続し続けると考えられます。
将来的には、レンタルで入ってきたユーザーが安い価格帯で靴を購入できる、いわば「STEPN入門realm」としての役割を担っていくのではないかと予想されます。
BNB経済圏に乗り遅れた人でも次のチャンスを掴めるように、いくつものrealmが実装されていく予定ですが、realmが増えるほど、入口としてのSOL経済圏の役割も大きくなるでしょう。
STEPN独自のDEXについて
realmと掛け算で機能するのが、5/26の緊急AMAで言及がされた独自DEX(※)のリリースです。
※分散型取引所。BinanceやCoinBaseなど中央管理者のいる取引所とは違い、管理者がおらず、ユーザー同士が直接取引を行う点が特徴。その分手数料が安いなどのメリットがあります。
realmが分かれるということは、それだけrealmごとのユーティリティートークン同士のスワップ、BNB・SOL・その他のチェーントークンとのスワップ、GMTとのスワップなど、DEX機能への需要が増します。
するとエコシステム内で、トークンのやりとりがぐるぐる回ることになり、そのスワップ手数料が大きな外貨獲得の要因となります。
DEXは、これまでクリプトユーザーにしか使われていないサービスでした。
しかしSTEPNは、すでに非クリプトユーザーに多くリーチしており、「DEXという言葉がよくわからなくても」非クリプトユーザーが使ってしまうDEXが作れるなら、GameFiに限らず、WEB3全体に大きな影響力を持ちます。
これが上手く機能すれば、STEPNのビジョンである「LEARN AFTER EARN」という、分散型ウォレットの使用方法を学ぶ前に稼ぐ体験をユーザーに与えることを推し進める一手となります。
5/28のAMAや公式DiscordQAの解説
5/28は、5/26に実施された緊急AMAから2日しか経っていないことも影響してか、新規情報は少なく、realmや今後のアップデートの改めての告知が中心となりました。
緊急AMAの内容から、追加的に明らかになった事項について、まとめていきたいと思います。
中国でのサービス中止について
5/27未明、運営は公式Twitterで7月15日から中国でのサービスを事実上停止することを発表しました。(香港、マカオ、台湾は対象外)

5/28のAMAではこの件に関する補足がなされ、「これまでも中国本土ではSTEPNをDLできなかったが、香港や台湾でデバイスを買ってDLするユーザーがおり、規制に則していない」として今回の措置に至りました。
アカウントのBanまでは行わず、猶予期間として7月15日からの禁止という対応です。
ただ、今回靴を手放した中国ユーザーは少なくないと思われ、靴販売数と価格にある程度の影響を与えたと考えられます。
中国に限らず、他の国も仮想通貨に関する法整備は不十分な点が多く、こうした措置が他の国に及ぶ可能性も否定できないと言えます。
GEMバーンとパンダスキンについて
GEMバーンによって、パンダスキンを得られるだけでなく、靴のGEMソケットのクオリティが変更されることも明らかになりました。GEMバーンは、トークン価格のバランスを取るための施策であり、これもその1つだと言えそうです。
DAOと信頼
AMAの終盤では、STEPNが目指すWEB3/DAOの在り方についても言及がなされました。
運営の目的は収益ではなく、WEB3的なコミュニティ形成です。そのために今後は評判システム(※)の導入も視野に入れていることが明かされました。
※詳細は明かされていませんが、誰が責任をもって他のユーザーを助けたり、STEPNコミュニティを運営してくれる人かを評価するシステムのようです。
ブロックチェーンは、顔や名前が分からなくても機能する匿名の世界です。
運営はこれを踏まえた上で、STEPNのコミュニティ形成にはつながりが大事だという考えのようです。AMAなどを通したユーザーとの対話は今後も継続して行う意向であり、オフラインイベントを積極的に行っているのもその意思の表れでしょう。
このテーマは、運営が感情的になる場面が多々ありました。
この1週間、相場変動とFUDが激化し、ユーザーにも動揺が広がる中、運営の願いと危機感が感情的な形で露わになったAMAであったと言えそうです。
他、明らかになったこと
・第4、第5realmについては、参加条件を付す可能性あり
・最初のバッジは、コインマーケットキャップ(CMC)のカンファレンスでドロップする予定。
・バッジはトレード可能
・これまで1.3億GMTがバーンされた(一日当たり約500万GMTバーンされている)
・トレイルブレイザーは、GMTアーニング実装前にイベント予定
・FOMOイベント(ランニングイベント)は第3Qに実施予定。トレイルブレイザーのように、先行参加者向けのイベントになる予定
・レベル5のGEMがマーケットに登場し、価格は1,700SOL程度であった
・GEMのトランスファー機能実装については、現在のところ予定していない
今後の運営の課題とユーザーの抱えるリスク
1:マルチチェーン対応
今回の発表で、クロスチェーンの実現ではなく、STEPNを媒介とした独立した経済圏を、各チェーンごとに形成していくことがわかりました。今後は、マルチチェーンの実現のために、それぞれのチェーンでのユーザー数の確保や、健全性の維持、チェーンごとの取引の遅延解消なども課題となります。
ユーザー視点では、新しいチェーンが実装されるごとに、今回BNB側で起こっていることが繰り返される可能性があり、高い収益性の裏に資産が大きく減額する可能性もあることに留意していく必要があります。
2:多層構造的な経済圏の実現
並行して「いかにして外貨獲得を増やして経済圏の構造を多角化できるか?」も引き続き課題として残っています。
5/21のAMAで、CRO(最高収益責任者)のMable Jiang氏が言及したように、ユーザーのウォーキングデータを活用したマネタイズや、Alchemy Payと提携しGMT決済が可能になったことも、多層構造的な経済圏の実現につながります。
そしてユーザーに十分な報酬を与え続けるために、経済圏に入ってくる資本の額もポイントです。
ユーザー視点では、新規流入に支えられている現状の経済圏構造を理解し、既存ユーザーが利確に走りすぎていないか、NFTの流動性が鈍っていないかを、引き続き注意深く見ていく必要があります。
まとめ
今回のレポートでは、今後のSTEPN経済圏にとって必要なことを、利確に向いてるユーザー心理をいかにして消費に向かわせるか?という側面から考察しました。
BNB側でバブルが弾けたことで、ユーザーの多くがsGST・bGSTを利確し、SOL側・BNB側ともに下落の状態が続いています。
ここから特に注目すべき点は次の3点です。
1. ユーザー心理が消費に向かう施策を運営が打てるのか?
2. 安くなった靴がユーザーにきちんと買われていくのか?
3. 抑制している新規ユーザーの流入がどの程度まで解放されるのか?
これにより、今週中に反映されるアップデートの内容や、今後予定されている複数realmによる経済圏の実現、DEX機能による外貨獲得も機能していきます。
現在のSTEPNは大きな分岐点にいます。ここでSTEPNの未来を信じて、GSTの消費を続けるユーザーが多くなっていくこと、運営がユーザーに消費行動を促していくことで、STEPNの経済圏は回復していくことができます。
※続きは、以下の記事に掲載しております。
STEPNの事例から得られるより深い教訓
LGGでは、STEPNを、今後、BCGを開発するうえでベンチマークすべき重要なプロジェクトと捉えており、システム開発・マーケティング・運用などのさまざまな観点から、過去に何を行い、どのような結果になったのかを細かく追っています。
以下のレポートに詳しくまとめておりますので、興味がございましたら、ご覧になってみてください。