本記事は、Web3に関心を持つ事業者を主な対象読者とし、TONについて包括的な解説を提供することを目的としています。前回の記事ではTONブロックチェーンの全体像について解説しましたが、本記事ではここ数ヶ月のTON爆発の起爆剤とも言える「The Open League」に絞って解説します。
TONの躍進はMini Appの存在も大きいと思われがちですが、実は「The Open League」がMini Appの躍進をサポートしていることがわかります。例えば、Catizenは3シーズン連続で「The Open League」の優勝者となり、エアドロップ前に大きくユーザー数を伸ばしました。
結論、Web3事業者としてTelegram Mini Appをリリースするのであれば、「The Open League」への参加は必須です。なぜなら、「The Open League」は単なる見せかけのユーザー数を増加するのではなく、トークン保有者数やマーケットキャップの増加に直結するアクティブなオンチェーンユーザー数の増加に貢献するからです。
その理由と具体的なプログラムの詳細を1つ1つ丁寧に解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
The Open Leagueとは?
まずは概要と背景から説明してきます。
「The Open League(以下、TOL)」は、TONブロックチェーンにおける大規模インセンティブプログラムです。TON上のアプリケーションを利用するユーザーと開発者に対して報酬を用意し、TONのTVLやアクティブユーザーを上昇させる取り組みです。
具体的には2024年の12ヶ月間で「10億ドルのTVL」と「5億のアクティブウォレット」を目指しています。
開始のきっかけは2023年11月16日にドバイで開催されたGateway conferenceで、TON FoundationディレクターのJack Boothが提案した内容になります。以下、プレゼンテーションとなります。
その後すぐの11月20日、TON Foundationは投票にかけ、99%の賛成によって可決されました。
そして、2024年1月30日からパイロットシーズンがスタートしました。現在はシーズン6が開催中ですが、それぞれのシーズンの内容と結果に関して後ほど解説します。
まずはこのTOLがTONにどれほどのインパクトを与えているのかをオンチェーンデータを用いて説明させてください。
まずActive Wallets数を見てみても、明らかに2024年1月から急増していることがわかります。
DeFiのTVLを見てもそれは明白です。3月頃を起点に一気に伸びています。
Toncoinの価格を見ても2024年1月以降に急速に上昇しています。
最後は総アカウント数とトランザクション数です。これまでと比較して一気に伸び始めていることがわかります。
ここ数ヶ月、TONが躍進していることはご存知の方が多いと思います。そして、その背景にはMini Appの躍進があったという認識を持っている方が多いと思います。
もちろんそれは間違いではありませんが、急速にMini Appが発展してきた背景にはTONのインセンティブプログラム「TOL」があったことは間違いありません。TOLは新規ユーザーを誘致し、開発者にグラントを配布し、DeFiのTVLを高めました。
TONのDeFiはそこまで注目されていないかもしれませんが、DeFiはエコシステムの血液的な存在です。
例えば、今回のTON Mini Appのブームの火付け役となったと言われるのはNotcoinのトークンの高騰ですが、そもそもトークンに価値が付かなければWeb3領域でブームになることはありません。そして、その高額なエアドロップを夢見てユーザーが集まるので、Mini Appブームのサイクルの中心には”エアドロップされるトークンに価値がつく(可能性があること)”が存在します。
細かい説明は省きますが、トークンに価値がつくには、そのプロジェクトへの期待値や実用性はもちろん大切ですが、それ以前にそもそも取引できる流動性が担保されている必要性があります。流動性とはモノに価値がつく際に最も大切な概念で、取引が容易にできる状況でなければユーザーはもちろん、トレーダーや投資家もそのトークンを購入することができません。そのため、トークンば自由に流動性高く売買できるようにTONのDeFi市場でDEXやLending Protocolなどが一定の規模感まで育っている必要があるというわけです。
トークンに価値が付かなければMini Appをやるインセンティブが減り、ユーザーも集まりません。なので、ユーザー及び開発者の誘致とDeFiの盛り上げを一気にやる必要があります。
このサイクルがあるからこそ、より優秀な開発者がMini App構築に参入し、そこに釣られたユーザーがやってくるというサイクルが回っています。
ここを担っているのがTOLで、これまでのところ、大成功を収めていると言えます。
これまでの開催回数と結果
続いて、TOLのこれまでの開催結果を見ていきたいと思います。後ほど、ユーザーおよび事業者目線での具体的な参加方法や参加する意義(どれほど結果が出ているのか)について解説しますので、ここでは概観とTONエコシステム内でどれほどの結果が出ているのかをご理解ください。
シーズン毎に若干の条件のマイナーチェンジはあるのですが、基本的な内容は同じです。
TOL概観
The Open Leagueという名称の通り、基本的にはシーズンに分かれてリーグ戦が行われます。このリーグ戦は「AppLague」「DeFi League」「NFT League」と分かれており、それぞれのプロジェクトが競い合います。基本的にはアプリのアクティブユーザー数、DeFiであればTVLを競います。競い合った順位によってプロジェクト側は賞金を獲得します。後述しますが、シーズン5までは主にプロジェクト側が賞金を獲得するという形でしたが、シーズン6からはユーザー向けのエアドロップに多くの資金が当てられています。
このシーズン6からの資金配布対象の変更に関しては一見すると事業者に賞金獲得チャンスが減るという見方もできますが、より多くのユーザーを獲得できるチャンスとも考えられます。そもそも、グラントや賞金に頼る収益化では永続的ではありません。また、いずれにせよ自社アプリにユーザー数を獲得する必要があるので、この機会は自社からはマーケティング予算を払わない中でより多くのユーザーが前のめりに参加してくれる非常に良い機会だと感じます。
TOLの開催結果
パイロットシーズン
- 開催期間:1/29~3/7
- 内容:これから始まるTOLの準備期間。クエストをクリアしていくことでXPが貯まり、特別なSBTを獲得できるチャンスがあった。
- 特典:特別なSBT
ベータシーズン
- 開催期間:3/4~3/31
- 内容:App、DeFi、Liquid Staking、Tokenのリーダーボードのリーグ戦。ユーザーが盛り上げに参加する。
- 特典:$2,800,000 in TON
- 結果:()内はTOL開始時と比較した成長
- デイリーアクティブウォレット(DAW):347%増
- 週間アクティブウォレット数: 252%増
- 月間アクティブウォレット数: 137%増
- DeFi TVL 244%
- 流動性プロバイダー: 550%増加
- 1日の取引量: 624%増
- デイリートレーダー:710%上昇
シーズン1
- 開催期間:4/1~5/1
- 内容:リーグ、独自トークンの発行支援、TON内のクエスト達成、流動性プールの強化の4項目に対して報酬を配布。
- 報酬:$3,275,000 in TON
- 結果:()内はTOL開始時と比較した成長
- 1日あたりのアクティブウォレット数(DAW): 198,270(+425%)
- 週間アクティブウォレット数: 537,160 (+244%)
- 月間アクティブウォレット数: 145万 (+263%)
- DeFi TVL: 1億7,510万ドル (+665%)
- 流動性プロバイダー: 22,088 (+410%)
- 1日の取引量: 2,397万ドル (+834%)
- デイリートレーダー数: 25,502 (+431%)
シーズン2
- 開催期間:5/1~5/15
- 内容:App Battle、Token Major League、Token Minor Leagueの3つのリーグ戦に絞った争い。
- 報酬:$1,000,000 in TON
- 結果:()内はTOL開始時と比較した成長
- 1日あたりのアクティブウォレット数(DAW): 311,900(+725%)
- 週間アクティブウォレット数: 999,600 (+540%)
- 月間アクティブウォレット数: 1,700,000 (+325%)
- DeFi TVL: 2億600万ドル (+800%)
- 流動性プロバイダー: 37,462 (+765%)
- 1日の取引量: 2,920万ドル (+1,038%)
- デイリートレーダー数: 28,698 (+498%)
シーズン3
- 日程:5/15~5/29
- 内容:シーズン2と同様にApp Battle、Token Major League、Token Minor Leagueの3つのリーグ戦に絞った争い。
- 報酬:$1,000,000 in TON
- 結果:()内はTOL開始時と比較した成長
- 1日あたりアクティブウォレット数(DAW):568,000(+1,403%)
- 週間アクティブウォレット数: 220万 ( +1,308% )
- 月間アクティブウォレット数: 350万 ( +775% )
- DeFi TVL: 3億2,020万ドル ( +1,298% )
- ロックされた総額: 6億3,760万ドル ( +402% )
- 1日あたりの平均取引数: 420万件 ( +372% )
シーズン4
- 日程:6/12~6/26
- 内容:Token、App、NFT、DeFiの4つのリーグが開催。
- 報酬:$1,200,000 in TON
- 結果:不明。公表されていなかった。
シーズン5
- 日程:7/10~8/7
- 内容:Token、App、NFT、DeFiの4つのリーグが開催。
- 報酬:$1,150,000 in TON
- 結果:
- アクティブなオンチェーンユーザー数:743,706人から993,876人に48%増加
- LPブーストによるTONの総TVL:平均50%のAPRで75万増加
- 1日あたり70万のアクティブウォレットが誕生
- DEXでの1日あたりの取引量は1億3000万ドルを記録
- 200万以上の新規アクティブウォレットが誕生
シーズン6
- 日程:9/12~10/10
- 内容:リーグ制の形は変わらないが、これまでは主にプロジェクト側に報酬が配分されていたが、大部分がユーザー向けにTONがエアドロップされる形に変更。競争ではなく一緒にTONの目標を達成するために協力し合えるように形式が変更された。
- 報酬:$1,200,000
今後の開催予定
- シーズン7:10/21~11/18
- シーズン8:11/25~12/23
- それ以降:2025年以降も検討中
以上がこれまでの変遷となります。現在リサーチ時点ではシーズン6が開催中となっており、その結果が楽しみです。
事業者はTOLに参加する意義があるのか、どれほどの結果が出るのか
今回は最新のTOLであるシーズン6を事例として、どのように参加すれば良いのか、参加するとどれほどの結果が出るのか、良い結果を出すためには何をすれば良いのかを主に事業者目線で解説します。
尚、TOLシーズン6には「Normie Airdrop」と呼ばれる主にゲームプロジェクトを対象にしたプログラムと、「Degen Airdrop」と呼ばれるDeFiを対象にしたプログラムに分類されていますが、この記事では「Degen Airdrop」にも触れつつも、ゲームが対象である「Normie Airdrop」を中心に細かく解説していきます。
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