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「Thetan Arena」Web2ヒットゲームの移植はなぜ失速したのか?

「Thetan Arena」Web2ヒットゲームの移植はなぜ失速したのか?

Thetan Arena(シータンアリーナ)は、Web2ゲームの人気タイトル”Heroes Strike”をベースにした複数人対戦型のWeb3ゲームです。

元々のゲームの人気に加え、スマホでプレイ可能な手軽さもあり、2021年11月のローンチ時には多くのユーザーがプレイしていました。

トークノミクスも、Axie Infinityの失敗を踏まえ、NFTが参加できるバトル回数を制限したり、トークン交換時にルールを設けたりなど、過度なインフレを防ぐことを意識した設計になっています。

ですが、トークンの消費設計が乏しかったため、上記の工夫のみではユーザーの売り圧を減衰させるまでには至らず、トークン価格はゲームローンチ後に急落することになりました。

運営はローンチ後、5回もの大規模Burnを実施しましたが効果は薄く、価格は低迷したままです。

これに伴いトランザクション量も急減し、ローンチ直後の2021年12月をピークに下落し、その後も低迷していることが分かります。(下図参照)

Thetan Arenaのトランザクション量推移(出典:Footprint Analytics

トークンの消費ポイントが少なかった点が、経済圏低迷の直接的な要因ですが、突き詰めると、デュアルトークン制を採用する必要性があったのか、という問題に行きつきます。

また、バトルのマッチングに時間がかかるなど、ユーザビリティの低さもユーザーが離れていった要因です。

Thetan Arenaの失速は、人気ゲームを踏襲し、初期からユーザーを多く獲得できても、トークノミクスを上手く設計しなければ、持続的な成長が難しいことをはっきりと示した事例と言えます。

本レポートを通して、Thetan Arenaのトークノミクス設計の工夫と不足を分析・考察することで、逆説的な形でトークノミクスの必須要素が見えてくるはずです。

開発者視点での学びPOINT

・既存ヒットタイトルのファンを囲い込むことで生じる巨大な売り圧
・デュアルトークンシステムを採用する必然性の有無

ユーザー視点での学びPOINT

既存ヒットタイトルをモデルにしたWeb3ゲームが必ずしもヒットしない理由

プロジェクト概要



ゲームの概要

Thetan Arenaは、スマホでプレイ可能なMOBA(※)ゲームの1種です。

ユーザーはキャラクター(ヒーローNFT)を選択し、そこにスキン(装備)を組み合わせ、ステータスを上げてバトルに臨みます。

無料でもプレイ可能ですが、有料のヒーローNFTを購入するとより多くの仮想通貨THCを稼ぐことができます。

開発会社は、Wolffun Gameというベトナムのゲーム会社です。

同社は、”Heroes Strike”という全世界で1000万人以上がプレイするスマホゲームのヒット作を生み出しており、Thetan Arenaは、このヒット作のWeb3ゲーム版です。

日本での知名度はさほど高くありませんが、ヒット作をモデルにしていると言う点で、ゲーム性やエンタメ性はユーザーから高く評価されています。

※MOBA…マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナの略。オンラインで繋がったプレイヤーとチームを組んで、限られた区域で戦うゲーム。

NFTの種類

↑マーケットプレイスに並ぶ多様なヒーローNFT
(引用:公式マーケットプレイス

ヒーローNFTは3種類に分かれています。

耐久力に特化した”Tank”、攻撃力に優れた”Marksman”、攻撃力とスピードに特化し、一撃必殺を狙う”Assasin”の3種類です。

また、レア度もCommon、Epic、Legendaryの3種類あり、レア度が高いほど、バトルから得られる報酬($THC)も多くなります。

特徴的なのは、ヒーローNFTにバトルに参加できる回数に限度が設けられている点です。

↑マーケットプレイスに並ぶヒーローNFT。
左のヒーローは、現バトル数が0回なのでTHCを稼げるバトルを後239回プレイできます。
一方、右のヒーローは全可能回数(219回)を既にバトルしており、購入しても今からバトルに参加することは出来ません。

この回数は、ヒーローNFTのレア度の他、ヒーローが装着するスキン(装備)によって変わります。

スキンには、Normal、Rare、Myticの3種類のレア度があり、レア度が高いほど、参加可能なバトル数が増えます。

課金をしてより強いヒーローNFTやスキンを買えば、バトル参加回数が増え、その分報酬も多くなります。

ただ、さらにMOBAというゲームの特性から、バトルで勝利するには、ユーザーのゲームスキルも非常に重要になってきます。

バトルの種類

Thetan Arenaでは5種類のバトルが用意されており、いずれも他プレイヤーと対戦するPvP形式です。

▼Battle Royale (Solo / Duo)(プレイヤー数12、制限時間4分)

12人で争うソロモードと2人1組ペア6組(12人)で争うデュオモードがあり、最後の1人(1組)まで残れば勝利です。
ソロモードであれば5位まで、デュオモードであれば3位までに入れば報酬がもらえます。

▼Tower Siege(プレイヤー数8、制限時間5分)

4人チーム同士で対決し、各チームが持つタワーを先に破壊した方が勝ちというモードです。

▼Super Star(プレイヤー数8、制限時間4分)

4人1組のチームで相手チームと争います。一定時間経過後、マップ中央に巨大なスターが出現し、そのスターを手に入れたヒーローの近くに多くの小スターが出てきます。
先にスターを50個拾うか、相手チームより多くのスターを持っていると勝利というゲームです。

▼Deathmatch(プレイヤー数8、制限時間3分)

4人1組のチームとなり、制限時間の3分で相手チームのヒーローをなるべく多く倒していくバトルです。
1体倒した際に1ポイント、また1分おきに1ポイント加算され、多くのポイントを得たチームの勝利です。

▼Custom Battle

プレイヤー数や制限時間をユーザー自身がカスタマイズできるモードです。

トークン概要

▼THCの概要とユーティリティ

トークン名:THC(Thetan Coin)

  • 発行上限 :無制限
  • 時価総額 :-
  • 価格   :$0.004(¥0.57)8/23時点
  • 上場取引所:DEX・・Pancakeswap
          CEX・・・Coinex
  • 種類   :ユーティリティ
  • 獲得方法 :ゲーム内報酬
  • 使用ポイント

    • ヒーローNFTの購入およびレンタル
    • Thetan Boxの購入

▼THGの概要とユーティリティ

トークン名:THG(Thetan Gem)

  • 発行上限 :420,000,000枚
  • 時価総額 :$9,809,758
  • 価格   :$0.08(¥11.8)8/23時点
  • 上場取引所:DEX・・Pancakeswap CEX・・OKEX、Coinex、MEXC
  • 種類   :ガバナンス
  • 獲得方法 :トーナメント報酬、マーケット購入、イベント参加
  • 使用ポイント

    • トークンClaim(請求)手数料
    • Thetan Arenaのガバナンス機能
    • ヒーローNFTのアップグレード
    • Thetan Boxの購入(Legendaryのみ)

THGのトークンアロケーション

THGのトークンアロケーションのグラフ(出典:Theatan Arena公式ホワイトペーパー

ステーキングの割り当てが多く、EcosystemやReserveへの割り当てが少ないアロケーションです。

Ecosystemにはマーケティングも含まれることが一般的です。

ゲームの元になったHeroes Strikeがヒット作であったため、マーケティングに力を入れなくてもユーザーを囲い込むことが可能だったため、割り当てが少なくなっているものと予想されます。

ユーザーと運営の収益ポイント

Thetan Arenaは、バトルで勝利することがメインの稼ぎ方ですが、他の方法で稼ぐことも可能です。
ユーザーの収益ポイントについて整理します。

①バトルに勝利する

Thetan Arenaでは複数のバトルスタイルがありますが、いずれも勝利すれば報酬を得られます。
レアリティの高いヒーローほど多くの報酬が得られます。

②ヒーローNFTの売買で稼ぐ

ヒーローNFTの売買でも収益化が可能です。
レベルアップで強化されたNFTは、より高値での売却が期待できます。

③トロフィーを集める

Thetan Arenaでは、勝つたびにトロフィーをもらえます。もらったトロフィーが一定以上になるとランクアップし、もらえる報酬も増える仕組みです。
ただしバトルに負けた場合、手持ちのトロフィーも減ってしまいます。トロフィーを使って効率良く稼ぐには勝ち続けることが欠かせません。

④レンタル機能で稼ぐ

自分の持っているヒーローNFTを貸し出すことで、使用者の報酬から4.15%の手数料を引いた金額を受け取ることができます。

運営の収益ポイント

また、運営の収益は大きく以下の2点です。

①gTHCからTHCへの交換、およびgTHGからTHGへの交換(Claim)手数料(4%)
②NFTおよびTheatan Box購入時の手数料

Theatan Arenaでは、トークンを直接稼ぐことはできず、バトルなどでgTHCやgTHGというゲーム内トークンをまず獲得し、これをそれぞれTHCやTHGに交換します。

その交換時に運営に対して4%の手数料が入る仕組みになっています。

トークノミクス分析

ゲームの全体像を理解いただいたところで、ここからトークノミクスの分析に入っていきます。

Thetan Arenaトークノミクス図解

Thetan Arenaは、バトルに勝つことで収益化が可能ですが、先述のとおり、直接THCがもらえるのではなく、gTHCが報酬となり、これをTHCに交換(Claim)する必要があります。

ここで得られたTHCは、外部DEXを通して売却されるか、新たなヒーローNFTおよびBOXの購入に充てられます。

一方、ガバナンストークンであるTHGはヒーローNFTのLv上げに使用します。

Lv上げする際も、THGを直接使うのではなく、gTHGというゲーム内通貨に変換してから使用する点が特徴です。

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