
初めてWeb3プロジェクトに携わる企業が自社でトークンを発行するとき、ぶち当たることが多い壁の一つに「トークンアロケーションの設計」があります。
トークンで資金調達を行いたいプロジェクトにとって、またトークンインセンティブを用いて優秀なチームを組成したい創業者にとって、トークンアロケーションの設計は必要不可欠です。
しかし、トークンアロケーションの設計はプロジェクトによって最適解が異なり、「コレ」という絶対的な正解が存在しません。
あるプロジェクトでは「Community Incentive」と名付けた割り当てが、他のプロジェクトでは「Ecosystem Pool」と表現されていることがあり、カテゴライズも統一されていません。
そのため、トークンアロケーションのベンチマークも決めにくく、アロケーションを設計するのが始めての人には調べづらいのが現状です。
そこでLGGでは、100タイトル以上のGameFiプロジェクトのトークンアロケーションをはじめとするトークノミクスの調査を行いました。

本記事ではこれらの調査を通じて分かった事実をもとに、トークンアロケーションを組む際の考え方や注意事項についてまとめていきます。
※本記事はNFA(Not Financial Advise)・NLA(Not Legal Advise)です。トークン発行やインセンティブによる報酬設計に関しては専門家とよく相談の上、決定してください。
目次
【今更聞けない】トークンアロケーションの基礎のキ

引用元:https://docs.arthswap.org/tokenomics/arsw
トークンアロケーションとは、発行されるトークンのうち、特定の投資家、チーム、ゲームのエコシステム、または協力会社のために確保される、トークンの割り当てのことです。
トークンアロケーションは、Web3プロジェクトにおいて「プロジェクトを通して発行されるトークンを誰にどの程度配分して、経済圏を構築していくのか、その事業計画を示したもの」と言い換えることができるほど非常に重要な指標とされています。
そのため、多くのプロジェクトにおいてトークンアロケーションが公開されおり、逆に公開されていないと信用を損なう要因となります。
一般的なステークホルダーや使用用途の分類
トークンを割り当てられる代表的なステークホルダーや使用用途には、以下のようなものがあります。
ステークホルダーや使用用途 | 定義 | 事例 |
---|---|---|
コアチーム | プロジェクトの推進に最も関与し、責任を負う運営者が保有するトークン。 | |
投資家 | プライベートセールやVCラウンドに投資する、投資家が保有するトークン。 | |
会社またはトレジャリー | 会社、DAO、 Web3プロジェクトが営業経費のため保有するトークン。 | ・ゲームエコシステムの開発費用 ・経費を積み立てておくプール |
流動性提供 | DEXやCEXへ上場する際に、流動性を持たせるために運営が提供するトークン。 | ・Liquidity Pool |
コミュニティインセンティブ | コミュニティ貢献者への報酬、またはプロダクトのプロモーションために配布されるトークン。 | ・エアドロップ ・コミュニティ貢献者への報酬 ・Play to Earn への吐き出し ・ステーキング報酬 ・マーケティング費用 |
パブリックセール | DEXやCEXで公に購入されるトークン。個人投資家や消費者が利用できる。 | ・ICO ・IDO ・IGO ・ローンチパッド |
その他 | ・アドバイザー、パートナー、代理店 |
このなかでも、アーリーステージのラウンドで大量に販売されるトークンは、トークンがCEX/DEXに上場されるとプロジェクトに膨大な売り圧力をかけ、トークン価格の大幅な下落につながります。
トークノミクスを設計する上では、トークン価格の下落を招かないよう、トークンの供給が需要を上回るような状況を避けることが肝心です。
この需給のバランスを崩さないように、一般的なストックオプション同様にべスティングの期間を設けて、トークンの配布を段階的に分けて、徐々に配布していくことが求められます。
各種用語の解説
べスティング(権利確定)期間
ベスティングとは、アセット(多くの場合はトークン)がロックされ、一定期間をかけて段階的に解放されるプロセスのことです。
例えば、「1ヶ月ごとに10%ずつ解放していく」というべスティング期間を定めた場合、トークン保有者は全てのトークンを売却するのに10ヶ月かかります。
これによって、トークン保持者による権利確定後の売り圧を分散させ、トークン価格の下落を抑制できます。
クリフ期間
べスティング期間中に同じ量を均等に配布していくのではなく、ある期間を過ぎた瞬間にまとまった量の権利を付与し、残りを段階的に配布していく、というやり方もあります。
例えば、トークン発行日の半年後に一括で30%の権利を付与し、残りの70%を、次の14カ月で毎月5%ずつ付与していく、といったやり方です。
この最初の6か月を「クリフ(=崖)」と呼び、この方式をクリフ・ベスティングと呼びます。

ロックアップ期間
ロックアップ期間とは、トークン発行以降、投資家がトークンを売却できない期間のことです。
一般的には、数カ月から1年の間で設定されます。
ロックアップ期間が終了すると、ベスティング期間が開始されます。
例えば、STEPNのGMTは2022年3月に上場しましたが、TeamやAdvisorのべスティグが開始するのは、2023年の2月からとなっており、9ヶ月間のロックアップが設定されていることがわかります。

TGE(Token Generation Event)
トークン生成イベント(TGE)とは、パブリック・プライベートセール、またはICO(Initial Coin Offering)によってトークンが市場投入されるタイミングや、行為そのものを指します。
誰でも気軽にできる審査のないICOとは異なり、TGEはホワイトペーパーやロードマップ、資金の使途などが審査されてから行われます。
トークンアロケーションにおいては、「ロックが外れる初月に何%を解放するか」を表記するために、「TGE Unlock 15%」といった使われ方をします。
Web3プロジェクトがトークンインセンティブを活用する理由

トークンアロケーションを組むもう一つの理由は、トークン配布によるインセンティブを活用することで、プロジェクトに人とお金を集めることができるからです。
このトークンインセンティブを上手に設計できると、優秀なチームを組成でき、有力な投資家を惹きつけ、初期ユーザーの貢献を促すことができます。
優秀な人材がWeb3に流れてきている背景とは

クリプトの市場規模は2021年末に3.3兆円になり、Web3に特化したファンドも次々に生まれています。
a16zが約5700億円規模の新web3ファンド立ち上げたことも、大きなニュースになりました。
Phantom(ソラナチェーンの暗号資産ウォレット)は900万ドル(10億円)のシリーズAを調達し、その6ヶ月後に約125億円(1億900万ドル)のシリーズBを調達しています。
Axie Infinity(AXS)は今でも1,000億円の時価総額をつけており、STEPN(GMT)の時価総額も650億円にもなります。
この潜在的なアップサイドは、トークンアロケーションによってもたらされるため、トークン発売前のプロジェクトには、人生を大きく変えるチャンスが存在しているといえます。
そのため多くの優秀な人材が、このトークンによるインセンティブを求めて、Web3市場にどんどん参入してきています。
トークンインセンティブとストックオプションの違い
実際にトークンインセンティブとストックオプションには、以下のような違いがあります。
2 thoughts on “【GameFi銘柄TOP100を独自調査】トークンアロケーションとロックアップ設計の調査データ”
Comments are closed.