【TON基礎理解】TON及びTelegramの概要・技術的特徴・変遷・エコシステムをまるっと解説

【TON基礎理解】TON及びTelegramの概要・技術的特徴・変遷・エコシステムをまるっと解説

近年、ブロックチェーン技術の進化とともに、新たなプラットフォームが次々と登場しています。その中でも、TON(The Open Network)ブロックチェーンは特に注目を集めている存在です。

本記事は、Web3に関心を持つ事業者を主な対象読者とし、TONブロックチェーンについて包括的な解説を提供することを目的としています。

TONの基本的な概要から始まり、その特徴的な技術、誕生の経緯、そしてTelegramとの関係性まで幅広くカバーします。さらに、TONが現在急成長している理由や、Web3エコシステムにおける位置づけについても考察を加えます。

但し、TONに関する情報は膨大ですので、本記事ではその全体像をお伝えし、それぞれのトピックに関しては今後更新していくトピック毎の専門記事や速報記事にてお伝えしてく予定です。TONの名前は聞いたことがあるものの、詳細についてはあまり知らないという読者にとって、まずはその全体像が理解できる有益な情報源となれば幸いです。

TONブロックチェーンの概要

TON(The Open Network)は、高速で拡張性の高いマルチブロックチェーンプラットフォームです。2018年にTelegramの創設者であるPavel DurovとNikolai Durov兄弟によって構想され、当初は「Telegram Open Network」として開発が始まりました。しかし、法的問題により Telegramは開発から撤退し、現在はオープンソースコミュニティの「TON Foundation」によって開発が継続されています。

技術的特異性

TONの最大の特徴は、その独自のシャーディング技術です。これにより、理論上は毎秒数百万のトランザクションを処理することが可能となっています。このシャーディング技術は、ネットワークの負荷を複数の「シャード」と呼ばれる小さなブロックチェーンに分散させることで、スケーラビリティの問題を解決しています。

TONはマスターチェーンと複数のワークチェーンから構成される「ブロックチェーンオブブロックチェーン」アーキテクチャを採用しています。マスターチェーンは全体の調整役として機能し、ワークチェーンは異なる目的や要件に対応できる柔軟性を提供します。この構造により、異なるブロックチェーン間でのシームレスな相互運用性が実現されています。

出典:https://docs.ton.org/develop/blockchain/shards

さらに、TONは独自のスマートコントラクト言語「FunC」を採用しています。これはC++に似た構文を持ち、開発者にとって学習しやすい設計となっています。FunCは高度に最適化されており、効率的なスマートコントラクトの作成が可能です。また、TONの仮想マシン(TVM)は、WebAssemblyとの互換性を持つように設計されており、多様なプログラミング言語からのコンパイルをサポートしています。

TONのもう一つの特徴的な技術は、「Infinite Sharding Paradigm」です。これにより、ネットワークの需要に応じて動的にシャードの数を増減させることができ、理論上は無限のスケーラビリティを実現しています。

出典:https://docs.ton.org/develop/blockchain/sharding-lifecycle

また、TONは独自の軽量なコンセンサスアルゴリズムを採用しており、これによって高速なトランザクション確定と低い手数料を実現しています。このアルゴリズムは、Proof-of-Stake(PoS)をベースとしていますが、従来のPoSよりも効率的に設計されています。

バリデーターになるには、300,000TONのステークが必要となっています。リサーチ時点では「569,165,159TON」がステークされており、世界30カ国以上、356以上のノードが稼働しています。

誕生秘話と変遷

TONの誕生は波乱に満ちたものでした。2018年初頭、Telegramの創設者であるPavel DurovとNikolai Durov兄弟は、Telegramのユーザーベースを活用した新しいブロックチェーンプラットフォームの構想を発表しました。この構想は大きな注目を集め、ICO(Initial Coin Offering)で17億ドルという驚異的な金額を調達することに成功しました。

開発は順調に進み、2019年後半にはテストネットの立ち上げも行われました。

しかし、2019年10月、米国証券取引委員会(SEC)がTONのトークン販売に対して訴訟を起こします。SECは、TONのトークンが証券に該当すると主張し、その販売が証券法に違反しているとしました。この訴訟により、TONの立ち上げは無期限に延期されることになりました。

Telegramは法廷で激しく争いましたが、2020年5月、ついに公式にTONプロジェクトからの撤退を表明しました。ICOの資金を返還し、罰金を支払う必要もありました。

ここで、TelegramがTONから撤退したことでTONブロックチェーンのプロジェクトは終了したと思われましたが、TONのオープンソースコミュニティが立ち上がり、プロジェクトを引き継ぐことになりました。その結果、「Telegram Open Network」から「The Open Network(TON)」へ名称変更し、「Ton Foundation」が開発と運営を主導することになりました。

現在では、多くの開発者や企業がTONエコシステムに参加し、さまざまなアプリケーションやサービスが開発されています。

そして、2022年後半になると、Telegramは再びTONとの提携を強め始めました。TelegramのネイティブアプリとしてTONのウォレットを出すなど、TONの統合を開始し、これによりTONは再び大きな注目を集めることになりました。

主要な特徴

  1. 高速性と拡張性: シャーディング技術により、高いトランザクション処理能力を実現しています。
  2. 低い取引手数料: 効率的なアーキテクチャにより、取引手数料を低く抑えることができます。
  3. 開発者フレンドリー: FunC言語やSDKの整備により、開発者が参入しやすい環境を提供しています。
  4. マルチチェーン構造: マスターチェーンと複数のワークチェーンにより、多様なアプリケーションの開発が可能です。
  5. Proof-of-Stake (PoS): エネルギー効率の高いPoSコンセンサスメカニズムを採用しています。
  6. Telegram統合: Telegramウォレットボットを通じて、数億人のユーザーベースにアクセスできる可能性を持っています。

TONは、その技術的特徴と大規模なユーザーベースへのアクセス可能性から、Web3の世界で大きな注目を集めています。次のセクションでは、TONと深い関わりを持つTelegramについて詳しく見ていきます。

Telegramの概要

Telegramは、2013年にPavel DurovとNikolai Durov兄弟によって創設された、クロスプラットフォームの暗号化メッセージングアプリケーションです。高度なセキュリティと豊富な機能を特徴とし、個人間のコミュニケーションからビジネス利用まで幅広く活用されています。

技術的特異性

Telegramの技術的特徴は、その高度な暗号化技術と分散型インフラストラクチャにあります。

  1. MTProto暗号化プロトコル: Telegramは独自開発のMTProtoプロトコルを使用しています。このプロトコルは256ビットの対称AES暗号化、2048ビットのRSA暗号化、Diffie-Hellman鍵交換を組み合わせており、高度なセキュリティを実現しています。(ここは多少複雑なので覚えなくても大丈夫です)
  2. クラウドベースのアーキテクチャ: Telegramのメッセージは暗号化されたうえでクラウドに保存されます。これにより、複数のデバイス間で迅速かつシームレスな同期が可能となっています。
  3. Secret Chats: エンドツーエンドの暗号化を提供する「Secret Chats」機能があります。これらのメッセージはクラウドに保存されず、自動削除機能も備えています。
  4. 大容量ファイル転送: 最大2GBまでのファイル転送が可能で、これは他のメッセージングアプリと比較して非常に大きな容量です。
  5. ボット API: 開発者がカスタムボットを作成できる強力なAPIを提供しています。これにより、自動化やインタラクティブな機能の追加が可能となっています。

誕生秘話と変遷

Telegramの誕生は、創設者Pavel Durovの個人的な経験に深く根ざしています。

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