
「企画を磨き上げるために、400回のピッチと改善を重ねました」
これは、世界初のMove to Earnアプリとして世界中の注目を集めた”STEPN” が実践していたことです。
Web2でもWeb3でも、プロジェクトの進め方に大きな差はありませんが、Web3の方が未開拓領域である分、試行錯誤を繰り返すことになります。
そのため、Web3プロジェクトでは、頭を捻って精度の高い企画を立てるよりも、素早くPDCAを回す方が圧倒的に重要です。
しかし、Web3は未開拓領域であるが故に、プロジェクトを進める中で、進め方がわからなくなったり、判断に迷ったりするケースも多々あります。
そこで本記事は、これからWeb3プロジェクトの計画を立てる方向けに、Web3プロジェクトでぶつかる課題や対処法について解説します。
この記事の目次
なぜスピードが求められるのか
新規事業開発の進め方は、Web2とWeb3で、大きな差はありません。

プロジェクトによって、工程が一部前後することはありますが、基本的にこのような流れで進みます。
Web2でもWeb3でも、新規事業開発にはスピードが求められますが、あえて「Web3事業はスピードが命だ」とお伝えしているのは、Web3事業に以下の特徴があるためです。

必要な知識が膨大
Web3事業は、開発・マーケティング・運営等のあらゆる面において、Web2事業にはなかった専門分野が絡んでおり、全体像の把握に膨大なインプットが求められます。
また、専門分野は業者に依頼することになるため、業界構造や各業者の特徴の把握が必要で、とにかく最初のインプットが膨大です。
状況のアップデートが激しい
Web3の技術やサービスは、頻繁にアップデートされます。
IT業界の進化は、他の業界と比べて7倍早いと言われていますが、Web3はさらにその7倍早いと言われており、「数ヶ月前に調査した内容が今は化石化している」なんてことも珍しくありません。
短期間で情報を収集し、プロジェクトをスタートさせないと、永遠に調査を続けてしまいます。
プロジェクトを進めるためには、期限を切り、必要な情報を素早く収集し、プロジェクトを進めながらアップデートをかけていくのが理想です。
アジャイル式で修正を繰り返す
Web3プロジェクトは常に正解がない道を開拓し続けるため、Web2事業よりも修正が嵩みます。
企画段階と開発段階で全くの別のプロダクトになることも珍しくありません。
この進め方を実現するには、高い推進力と、それに対応できる開発体制が求められます。
以上のように、Web3事業にはスピードと推進力が欠かせません。
この前提のもと、実際にWeb3プロジェクトがどのように進むのかを見てみましょう。
Web3プロジェクトの進め方
新規事業開発の基本的な流れはWeb2とWeb3で大差ないため、本章では基礎的な説明を割愛し、Web3に特化した内容に絞って解説いたします。
① 調査・分析

まずは、ビジネスプランを策定するための調査・分析を行います。
冒頭でお伝えした通り、ビジネスプランを策定できるだけの情報を収集することが大変で、多くの企業が半年以上を調査に費やしています。
代表的なWeb3特有のポイント
・法律・税制への対応
・チェーン選定
・NFTマーケットプレイス選定
・ウォレット選定
・デベロッパー選定
・ノード選定
・マーケットメイカー選定
・トークンによる資金調達
・トークノミクス設計
・マーケテイング
・コミュニティ運営
項目が多いうえに、事業者目線での情報がほとんど出回っておらず、ネットや本で調べても、必要な情報は得られません。
必要な情報を取得するには、以下の2つが必要です。
- 期限を決める
- 手足を使って情報を収集する
期限を決める
期限を設けることは、当たり前のことのように感じるかもしれませんが、まだ本格的にWeb3への参入を考えていない場合、期限を設けずに調査を続けているケースがほとんどです。
期限は、「なぜ、今、Web3事業に参入する必要があるのか」が明確になると、決めやすくなります。
例えば、Web3業界の市況の観点では、「今が、Web3市場にイノベーターとして参入できる最後のチャンスであること」が挙げられます。

2020年に起きたWeb3市場の拡大は、NFT、DeFi、GameFiというたった3つの分野によるものでしたが、2025年頃には、もっと幅広い分野のWeb3事業が社会に接続し、巨大な市場が形成されると言われており、多くの企業がその時までに参入を果たそうとしてるのです。
他にも、例えばソーシャルゲーム業界では、既存のビジネスモデルが破綻しており、新しいビジネスモデル創り上げることが急務になっています。
このような市況感を理解するにも、Web3および所属している業界の基礎理解が必要です。
手足を使って情報を収集する
事業に必要な情報は、ネットだけでは得られないため、専門家や先駆者に話を聞きに行ったり、参考になるプロジェクトのコミュニティに入って動向を探るなど、手足を使った調査が必要です。
国内だけでなく、海外の業者とアポイントを取ったり、海外のイベントに足を運ぶことも必要です。
情報収集に圧倒的な行動量が求められるため、どれだけ早く動けるかの勝負になります。
② ビジョン・目的の明確化

目的やビジョンは、プロジェクトの指針となる最重要要素です。
特に、Web3プロジェクトにおいては「なぜWeb3プロジェクトをやるのかの明確化」が重要です。
Web3は、Web2と比較してまだまだUXが悪かったり、ユーザーの資産が絡むため、Web2でも実現可能な仕様であれば、ユーザーから「使い勝手が悪いマネーゲームだ」と捉えられかねません。
Web3に詳しくないユーザーも理解できる明らかなビジョンを打ち出すことが、多くのユーザーを獲得するうえで欠かせない要素です。
ただし、これを考えるには、前提として様々なプロジェクトの事例をインプットが求められます。
※「なぜわざわざWeb3でやるのか」の必要性ついては『企画が9割|冬の時代でウケるには「なぜWeb3なのか?」の信念が必要だ』で詳しく解説しております。
③ ビジネスプランの策定

Web3事業のビジネスプランは、最初の大枠を、主に以下の4つの要素を組み合わせて考えます。
企画の方向性を決める4つの要素
・自社のリソースと強み
・Web3の特徴
・業者の知見やリソース
・トークン設計(NFT or NFT+FT)
要素1:自社のリソースと強み
Web3の世界はスピード勝負なので、新たな強みを創るよりも、既に持っているリソースや強みを組み合わせる方向で企画を練ります。
例えばWeb3ゲームを作る場合は、得意なジャンルや、既存IPの利用などを考えます。
要素2:Web3の特徴
以下のWeb3の特徴を、自社のリソースや強みと掛け合わせて、どのような「Web3ならではの要素」を創り出せるかを考えます。
- 分散性
- トラストレス・透明性・自動執行
- オープンアクセス・パーミッションレス・プログラマビリティ
これらの技術は日々進化しており、日常的に情報収集する必要があります。
※Web3の特徴については、本サイトの『Web3へようこそ!|世界一分かりやすい事業者向けWeb3入門書』でも解説していますので、ご一読ください。
要素3:業者の知見やリソース
先述の通り、Web3事業は専門性が高く、知見やリソースを自社だけで賄うのは困難です。
基本的に、業者をチームに迎え入れることを前提に、企画を練ります。
そのため、Web3業界にどのような業者があって、各社がどのような特徴を持っているのかを知るために、短期集中で多くの業者とアポイントを取り、各社の詳細を理解する必要があります。
要素4:トークン設計(NFT or FT or NFT+FT)
NFTを使うのか、FTを使うのか、あるいはNFTとFTの両方を使うのかも重要な要素です。
FTを使った方が、事業の幅は広がりますが、コストと難易度も格段に上がります。

トークンを使った事業の考え方は、基本的に以下のようになります。
- スピード重視でWeb3事業に取り組むならNFT
- 規模重視で本腰据えてWeb3事業に取り組むならFTもしくはNFT + FT
加えて、FTを使うモデルは、企業の体力がある程度必要なことも、考慮に入れましょう。
※各種プロジェクトの事例については『プロジェクト別調査レポート』をご覧ください。
法律・税制のリスク管理
Web3事業は、仕様によって資金決済法、賭博罪、期末課税などの対象となります。
これらの法律や税制は、全世界的に整備が追いついておらず、規制が流動的に変化しています。
そのため、策定したプランが法律・税制上問題ないかを、サービスリリース前後含めて、常に弁護士などに確認しながら進める必要があります。
しかし、Web3の法律・税制に対応できる専門家はごく僅かです。対応できる専門家を早めに確保しましょう。