
Web3プロジェクト発足にあたり、「どのようなスキルを持った人を採用すればいいか?」といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?
その答えは「スキルよりもベンチャー/起業家精神を持っていること」です。
なぜなら、Web3の運営は
- リアルタイムで変化する環境で新しいことを学び続けながら、
- 前例や答えがない中でPDCAサイクルを高速で回し、
- 顧客に合わせた柔軟な働き方が必要である
ためです。
採用時はついスキル面を見がちですが、後付けできるスキルよりも、その人のマインド面が重要です。
本記事では、Web3プロジェクト運営に必要な人物像を整理した上で、
- Web3プロジェクト運営に外せない役割
- メンバー採用時のポイント
について解説します。
本記事で分かること
・Web3プロジェクトの運営には、ベンチャー/起業家精神を持った人材が必要
・専門職でない限りスキルは後付けで十分
・メンバーの採用にはコミュニティ経由が向いている
この記事の目次
Web3の運営にベンチャー/起業家精神が必要な理由
Web3プロジェクト運営には、何をできるかというスキル面より、下図のようなベンチャー/起業家精神が求められます。

この理由は、Web3はまだ黎明期にあるため、事業推進にあたり以下のことがよく起こるためです。
- 一瞬で常識が非常識になる
- 少ない情報で決断しなければならない
- 顧客に合わせた柔軟な働き方が必要である
一瞬で常識が非常識になる

Web3では、「今日まで常識であったことが、ある1つのサービスの登場で非常識になる」ようなこともよく起こります。
Web3業界の急成長をチャンスと捉えた新規参入者が続々とサービスをリリースしている時期であり、上位互換サービスが生まれやすいためです。
例えば、NFTマーケットプレイスOpenSeaは2017年12月のリリースから長らく不動の地位にいましたが、2023年2月15日にBlur(2022年10月ローンチ)に1日あたりの取引額を抜かされてしまいました。
他にもX2Y2やMagic Edenといった競合も急成長を見せており、OpenSea一択だったマーケットプレイスへの出品が、短期間の間に自由度高く選べる環境になっています。
このような例から、Web3は他業界より動きが7倍早いとされているIT業界よりも、更に7倍早い速度で変化すると言われています。
このような環境では、どのように事業を進めていくかが決まった後に、再度0から作り直すことがしばしば起こります。
0から作り直さなければいけない状況を「面倒」と見るか「改善できるチャンス」捉えられるかは、Web3運営に向いているかどうかの指標になります。
少ない情報で決断しなければならない

Web3において大事なことは、後で修正する前提でスピード感を持って進めてみることであり、少ない情報収集でも決断を行う力が求められます。
「情報が足りないから決められない」と思う方もいるかもしれませんが、決断を先延ばしにしていると、動きが激しいWeb3では一瞬で他社に追い抜かれてしまうためです。
最近は様々な企業がWeb3関連のプレスリリースを出していますが、どの会社も分からないながらも進んでみた結果が世の中に出ているだけで、選択に確信を持っている訳ではありません。
Web3は正解がない世界だからこそ、自分の選択を正解にできるように動ける人材が重宝されます。
顧客に合わせた柔軟な働き方が必要である

Web3はベンチャーさながらの勤務時間となり、時には休日や夜間に業務が生じることもあります。
Web2.0のように広告を打ってユーザーを集めるモデルではなく、ユーザーとのリアルタイムでの交流を通じてコミュニティを大きくするためです。
例えば、ユーザーとのコミュニケーションで重要な位置にあるAMA(Ask Me Anything)は平日の日中に開催しても人が集らないため、平日夜や休日の開催が必要です。
働く当人にも変革が求められますが、従来の勤労制度に収まらない働き方であるため、企業側にも制度の変革が求められます。
以上のように、Web3の運営にはベンチャー/起業家精神を持った人材が必要です。
この点を把握できたところで、運営にどのような役割が必要なのかを解説します。
Web3プロジェクト運営に必要な役割は?
プロジェクトメンバーは、基本的にWeb2.0と新規事業開発と類似の考え方でよく、以下の役割が必要です。

Web2.0との大きな違いは、コミュニティマネージャー/トークノミクス設計です。
詳細は後ほど触れますが、これらの役割はWeb3の特徴であるユーザーとのコミュニケーションや、トークン経済圏の構築を担います。
なお、プロジェクトのコア部分であるプロジェクトマネージャー/マーケター/コミュニティマネージャー/法務の役割は社内で抱えておく必要がありますが、一部の役割は委託で行うケースもあります。

法務/財務/会計とトークノミクス設計については、内部に基本機能を備えておきつつも、Web3領域を専門にしている企業にアドバイスをもらえる体制を作っておく必要があります。
最初から専任で人が配置されることは稀であり、現在抱えている業務をこなしつつも、日々変化するWeb3情報を追い続けるのは難しいためです。
運営に必要な役割が分かったところで、各役割はどのような素養を持った人が向いているのかについて触れます。
各役割に必要な素養とは?
本章では、Web3運営において特徴のある、以下の役割に求められる素養を解説します。
- プロジェクトマネージャー
- マーケター/広報
- コミュニティマネージャー
- トークノミクス設計
なお、Web2.0と共通する基本的な部分の説明は割愛します。
プロジェクトマネージャー

Web3のプロジェクトマネージャーには、
- 圧倒的なユーザー目線を持っている
- 仮説立案/現場での検証のサイクルを高速で回せる
素養が求められます。
Web3では制作過程もプロジェクトの一部であり、Web2.0プロダクトよりも長い期間ユーザーの興味を引き続ける必要があるためです。
また、確立されたKPIの決め方やプロセスがないため、現場で仮説を当て続けて修正し続けることでしか見えてこないことも多いです。
素養①圧倒的なユーザー目線を持っている

プロジェクトマネージャーを務める上で重要なのが、圧倒的なユーザー目線です。
Web3はユーザーとの共創や共感をテーマとしているため、Web2.0に比べてto Cとの長期間にわたる関係構築が求められることに起因します。
Web2.0では多少の不快感を許容しつつもマス広告を打ち、確率論で利益に結びつける事業構造のため、どれだけ多くの人の目に入ったかが勝負です。
一方で、Web3ではプロトタイプの時点からユーザーが参加する形態であるため、ユーザーが不快に思う制作過程は許容されません。

支持されるプロジェクトを作り上げるためにも、表現や進め方に心地よさを感じさせるような圧倒的なユーザー目線が求められます。
また、プロジェクトマネージャーはAMAに出ることがあるため、ユーザーが参加できる平日夜や休日に対応が必要なケースも出てきます。
海外ユーザーに向けたAMAの開催は日本時間21時以降になることが多い。
こういう働き方をしたい人が社内にいなくて困っている。某企業プロマネの声
素養②仮説立案/現場での検証サイクルを高速で回せる

Web3プロジェクトでは、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を自ら設定し、そのKPIが機能するのかを現場で検証するサイクルを回す必要があります。
これは、
- 専門家でさえ明確な答えを持ってない
- 設定した仮説やKPIが正解かは現場で当てるしかない
- プロジェクトごとに取るべき数値が異なる
ことが理由で、実際に動き始めるとプロジェクトマネージャーが特に苦労する点の1つです。
ある程度取得するデータとKPIの算出方法が決まっており、広告代理店等に相談すれば提案してくれるWeb2.0とは大きく異なります。
KPIを決める上で注意しておきたいのが、ユーザー心理のような数値を取得できないケースがあることです。
例えば、コミュニティの盛り上がりはプロジェクトの成功に必要不可欠ですが、直接数値を取得できないため、何を判断指標とするかの仮説を自ら決める必要があります。
このように、立てた仮説が合っているかは考えても判断できないため、ユーザーに当てて都度軌道修正をしていくことが必要です。
専門家や経験者の声を積極的に聞きながら進める必要があるが、とはいえ彼らが全ての答えを持っているわけではない。
答えは現場にしかないため、自分の立てた仮説に対してPDCAを回す動きが必要。
LGGコンサル現場の声
ここで忘れてはならないのが、常にプロジェクトの本質である「人」を意識しておくことです。
Web3業界は情報が流れるスピードが早いため、表面的な情報の速さに飲まれてしまいがちですが、本質を意識しないとプロジェクトの軸がブレやすいです。
以上より、Web3のプロジェクトマネージャーには、圧倒的なユーザー目線を持ちつつも、仮説立案/現場での検証のサイクルを高速で回せる素養が求められます。